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私の前世探究記【第十一話】

前回のあらすじ:
様々な人の助けを得て、Q太郎の前世探究は加速して行く。
Q太郎が訪れるべき地名も判明した。
いよいよ、チェコ行きに向けて動き出すQ太郎であった。


【2023年10月】
なんということだ。

Yさんが転勤になってしまった!
Yさんは県外に新しく出来た店舗に異動してしまったため、これまでのように気軽に会うことができなくなってしまった。

なんということだ。

ちなみに、Yさんとは過去世で何度も生まれ合わせる程に縁が深く、中には夫婦だった事もある。
しかしアレシュの時代の二人は結ばれることがなかった。
若い頃に一時的に良い関係であった後、アレシュは戦争のためにボヘミアを転戦することになり、パン屋の娘のYさんとは結ばれない運命を辿ったのだ。

今世でYさんと再会したのは、Q太郎に「ヤロメルシに行け」というのを伝える為だったというのか。
その任務を終えたから、Q太郎の前から去ってしまったのか……。


Q太郎はショックを受ける。
Yさんと会えなくなるのも寂しい。

そして、まだ右腕は痛むのだ。

このマッサージを誰に頼めば良いのだ。誰に……。


【2023年10月某日】
Q太郎は、久しぶりに整体師のお姉さんのもとへとやって来た。
漬物石のスクワットでギックリ腰になった話をしたり、量子力学を漁師の力学と間違えたりした、あの整体師さんである。

ずっとYさんのお店にばかり行っていたので、Q太郎がこの整体院に来るのは数ヶ月ぶりであった。

「お久しぶりですこと。生きてらしたんですね。」

数ヶ月ぶりの来訪を、お姉さんは凍った笑顔で迎えてくれた。

「どうせ他のお店の女の子のところに入り浸ってて、その子に振られたんだか逃げられたりしたから私のところへ来たんでしょう」

「ふっふっふ。全く仰る通りでごぜえます。ごめんなさい。」

潔く謝るQ太郎。

「で?前世探究のほうは進んだんですか?今まで来なかったぶんの話を聞かせてくれるなら許します」

お姉さんも、やはりQ太郎の前世話を楽しみにしていたようだ。
ちなみに、このお姉さんとは前世での関わりはほとんどないのだが、笑いのツボや好きなYouTube動画などの趣味が合い、前世話にも興味を持ってくれているため、数ヶ月のわだかまりも瞬時に解けるのだった。


Q太郎はこれまでの前世探究の経緯をお姉さんに話し、そしてこう言った。

「来年あたり、今度こそチェコに行こうかなって思うんです。前回は、とりあえずプラハに行けば良いだろうってしか考えてなかったんですけど、それがダメになって、その後にいろいろあって、そのお陰で行き先がまとまったという流れになったんですよ。」

それを受けて、お姉さんは言う。

「あら、良かったじゃないですか。お母様の手術のせいで旅行がダメになったかと思いきや、そのお陰でちゃんとした計画ができるようになったって事ですね!」

おお、確かに、言われてみるとそうだ。

しかも、母の手術は2回あり、そのどちらも、Q太郎が計画していたものを延期させるタイミングで起きていた。
母の手術があったればこそ、Q太郎の前世探究が大きく前進したということだ。

お姉さん、なかなか鋭いことを言う。


【2023年11月〜12月】
Q太郎は前世探究をしながら、また不調期を迎えていた。
仕事の方針を巡って父親と対立したり、後輩の職人と馬が合わずに悩んだりしていた。
右腕が不自由で仕事がうまくこなせないので、後輩にナメられている、とQ太郎は感じてしまっていたのである。
実際、後輩職人はQ太郎の指示に従わず、Q太郎に反発することも多かった。

【2024年1月】
正月が明けても、Q太郎の心は晴れなかった。
こんなとき、アレシュならばどうやって困難を打開したのだろう。

Q太郎は、人生の困難に立たされた時のアレシュの気持ちを知りたくなり、再びヒプノセラピーの門を叩くことにした。

今度のセラピストさんはMさんという方だった。

【2024年1月某日】
Mさんのセラピーを受ける。

そして、驚きのビジョンをQ太郎は見るのだった。


1420年の12月頃、アレシュは「ペトル・フラデツ」という若い貴族と共に出撃した。アレシュが隊長となり、近くの要塞を攻撃する作戦を立てていた。
しかし、ペトルはアレシュの言うことを聞かずに単独行動を起こし、250名の兵を連れて突進する。
敵軍に動きを看破されたペトルは待ち伏せに会い、そして戦死してしまうのだった。

アレシュは軍を引いて本拠地へ退却したのだが、本拠地では敗戦の責任を問われる裁判にかけられ、アレシュは自分の罪を認めて一線を退いたというものだった。

これは、Q太郎が今置かれている状況に酷似しているものであり、Q太郎にはアレシュの気持ちが痛いほど分かった。

というか、ヒプノセラピーの中で、アレシュがQ太郎に「俺の人生、こんなことがあったんだよー。酷くね?ペトルが勝手に突進してさー、俺、止めたのに!死にに行くようなもんだからやめろーって、言ったのに!」と、その時の不満をアピールしてくるかのようだった。

さらに、アレシュが一線を退いた後に起こった武勇伝もあり、そのときなんかは、アレシュがキラキラした顔で「いやー、あの働きは、我ながら見事だったね!敵味方の血をほとんど流さずに、城を奪還したんだもん!」というふうに、すごく嬉しそうに自慢してくる。

90分のセラピーだったが、長編の映画を何本か見せられたような感じだった。

Q太郎は今までになくヘトヘトになってしまったが、アレシュと悩みや喜びを共有できたのがとても嬉しくて、仕事をまた頑張ろう、と思うのだった。

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