万博って何をみたらいいの?
vol.1で「地方活性化」について分解した東谷のバトンを受け取り、今回は、アラオが「万博」を分解・理解してみます。
万博を分解する
2025年の大阪・関西万博も開催まで500日を切り、その関連ニュースを耳にする機会も増えてきました。
中にはネガティブなニュースも多く、費用や工期などさまざまな課題もありますが、前売り券の販売開始や会場・企画の進捗情報などを見ると、いよいよ始まるんだという感覚が湧いてきます。
私は、身近で開催されるこの機会に会場に行ってみたいとは思っているのですが、万博=「世界のお祭り」というイメージがあるくらいで詳しく調べたことはありませんでした。
今回は、万博をより充実してみられるよう、「そもそも万博とはなにか」「万博で何をみればより楽しめるのか」を自分なりに調べてみようと思います。
万博の起源と成果
はじめに、万博の起源について。
万博=万国博覧会は、「博覧会」の一種で、「博覧会」の歴史は紀元前までさかのぼります。
エジプトやペルシャで国王即位祝典行事として芸術品や衣類が民衆に披露されたことや、古代ローマでは、辺境征服の後に戦利品や奴隷が民衆に誇示されたことなどが記録に残っています。
こういった展示が国民の関心を高め、次第に世界規模で開かれる「万国博覧会」 に発展しました。
世界で最初の万国博覧会
そうして世界で最初の「万国博覧会」は、1851年のロンドンで開催されます。
産業革命後に開催されたことから、このロンドン万博では特に工業力を世界に誇示するためのさまざまな物品が出品されました。
会場は「クリスタルパレス(水晶宮)」と呼ばれる建物で、このクリスタルパレス自体がロンドン万博の目玉展示。鉄骨の柱にガラス張りの壁面など、当時最先端の技術と芸術性で高く注目されました。
このクリスタルパレスがシンボルとなり、農機具などの機械類や、洋食器、薬品など、当時の最先端技術で作られたさまざまなものが展示されました。
これが万博の起源となります。
ガラス張りの建物ににぎわう街の景色が写り込み、中にはたくさんの新しいモノに出会えること。当時会場に訪れた人の気持ちを想像するとワクワクします。
ロンドン万博成功の秘密
ロンドン万博の成果は、1日の平均入場者数 約4万3,000人、会期中の延べ入場者数は604万人(当時のイギリスの人口の約3分の1!)。収益は約18万ポンドにのぼり、大盛況に終わりました。
その成功の要因は、クリスタルパレスや展示物による集客はもちろんですが、時代背景も大きく関わっていることが分かりました。
蒸気機関車と鉄道網の発達により会場へのアクセスがしやすくなった
印刷技術の進歩による出版が活性化した
鉄道網の発達により鉄道駅も増え、広告を配備する場が確保できた
清教徒革命、名誉革命などにより言論の自由が進み、新聞が普及した
その新聞が読める場であるコーヒーハウスが各地にできた
また収益面でも、プロモーションや企画の方法として様々な工夫がなされていました。
当時のイギリスは階級制であったことから、入場料も階級別にした
そのことで農民にも最先端の農機具などを見られる機会ができた
団体旅行の企画と観光列車を手配し、地方からの入場者を増やした
万博のガイドブックを企画や値段の違う3種類を販売した
入場料は、曜日ごとに値段を変えて平日は安く設定することで、農民など幅広い層の人が来場しやすいようになりました。
現代でも活かせるアイデアが詰まっていて、とても興味深いです。
周知させることや来場までのハードルを下げること、現地で収益できる工夫など、今でこそ当たり前になっている方法もあるかと思いますが、第1回目の開催からこんなアイデアを実行していたなんて驚きました。
また、ガイドブックの販売価格については下記の記録が残っています。
※ポピュラーガイド:2ペンス
カタログ: 1シリング(=12ペンス)
松竹梅的に3種制作したことで、1種類のみの場合「いる or いらない」しかなかった選択肢が増え、購買意欲が引き出されたのかもしれません。
また、私もどこかへ出かけた際には「何か記念に残るものが欲しい」と思うので、この結果にはとても共感できました。
このようにロンドン万博は、時代の動きや、産業・工業技術発展の追い風があったことや、さまざまな施策の工夫などが重なり、歴史的に大成功となりました。
万博の目的
ここまで「そもそも万博とは」を知るため、起源と成果についてロンドン万博から掘り下げてきました。
次に、万博の目的について調べてみます。
ロンドン万博では、「技術や産業の成果を各国に発信すること」が起源でもあり目的でもありましたが、目的は時代とともに変化していることが分かりました。
万博の目的の変遷
ロンドン万博に続き、これまでに開催された万博の数は50回以上。
万博の目的の変化は大きく3つに別けられます。
WEBや書籍を参考にしながらまとめたものをご紹介します。
工業化時代であったため、技術や産業の発展をアピールすることが主な目的だった第一世代。
戦後、国際協力の必要性や豊かな暮らしを発信した第二世代。
第三者世代では、2005年の愛知万博のように環境問題への対応など、課題解決型になっていきました。
社会や経済の時代背景とともに万博の目的や意義も変わっています。
さらに2025年の大阪・関西万博では、これら3つが融合し、それぞれの目的を引き継いだパビリオンや企画が行われるそうです。
万博で何をみる?
では、大阪・関西万博で何をみたらいいのか。
その場で展示や企画展を見学するのはもちろんですが、それだけはなく、今回万博を分解して調べてみることで興味を持った私なりの注目ポイントをまとめました。
今回の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。
巨大木造建造物の「リングスカイウォーク」や「空飛ぶクルマ」による新しい移動体験、いのちをテーマにした8つの「シグネチャーパビリオン」など、そのテーマにそった展示や企画が進んでいることと思います。
テーマに沿って各国や各パビリオンが発信している問いや答えは?
今回ならではの取り組みはや挑戦は?
木造で作った意図は?
海の真ん中でも大丈夫?
空飛ぶクルマの最新技術はどこ?安全?
近い未来で何か暮らしが変わる?
万博ロゴの「デザインシステム」は会場内外でどんな風に展開されている?
海外からの来場者はどんな所に興味を持つの?
などなど、個人的な興味関心も多いですが、このように整理したことで、情報を自分なりに噛み砕きながら会場を見学できる気がしました。
また実際に会場に行った際だけでなく開催前の今からでも、この注目ポイントを元により興味を持って関連情報をインプットできそうです。
人それぞれ興味の内容は違うと思いますが、参考になれば嬉しいです。
また今回分解する中で、先日前売り販売が始まった入場チケットも、「電子チケット」となっており、DX(デジタルトランスフォーメーション)=デジタル技術の活用として大阪・関西万博での取り組みのひとつであることを知りました。
まずは、素直に万博が国内開催されることを好機としてとらえ、
さまざまな角度から情報を取り入れることも大切だと改めて感じました。
まとめ
自分のお気に入りのものを誰かに見せたくなる。
思いついたおもしろそうなことを実現してみたい。
そんな経験が、誰にもあるかと思います。
楽観的な表現かもしれませんが、そんなワクワクを共有する世界規模のコミュニケーションの場が、万博なのかなと感じました。
今回は特に、1851年のロンドン万博を深掘りしましたが、それだけでもたくさんの学びがありました。
歴代の万博の中には集客もイマイチで赤字に終わった事例もあり、良いものをうみだす技術を磨くだけでなく、それらをアウトプットできる場や方法まで一貫して追求することの大切さや人を動かす難しさも、実例を知ることでよりリアルに考えることができました。
また株式会社ミーティングでは、大阪府が実施している「空飛ぶクルマ社会受容性向上事業」の広報や企画に携わっています。
先日空飛ぶクルマをPRする屋外イベントがあり、実機体の展示やVRゴーグルでの飛行擬似体験を行いました。
私もそこで大阪府民や観光客の方々と接する機会があったのですが、「ホンモノ見たかってん!」「いつから乗れるん?」など期待の声もあり、実際に見たり体験できる場の必要性を体感しました。
なんとなくしか知らなかったことに興味を持ち、ちゃんと知ること。
そして、それに対する自分の考えや発見を見つめ直し、学びや発見、新しい感情との出会いを楽しむこと。
この大切さを再認識することができました。