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「スケールフリーネットワーク」の著者が今、再び語る! DX2.0における”ものづくり”日本の勝算

新型コロナに関わる給付金のオンライン申請でトラブルが多発し、日本のデジタル化の遅れが露呈されたのは記憶に新しいところ。デジタル技術を駆使して新たな価値を生み出しているのはアメリカの「GAFA」を筆頭とした強者たちであり、残念ながらそこに日本企業の名はありません。

そんな中「まだ手遅れではない!」と大声で叫んでいる人がいます。それが「スケールフリーネットワーク」の著者である島田太郎さん・尾原和啓さん。DXの二回戦=「DX2.0」が既に始まっている今だからこそ聞きたい「勝利への確信」を、今回はお二人にたっぷり話していただきました!

【ゲストスピーカー】
島田 太郎 氏

株式会社 東芝/執行役上席常務/最高デジタル責任者
東芝デジタルソリューションズ株式会社/取締役社長
(一社)ifLink オープンコミュニティ代表理事
1990 年 新明和工業(株)入社。Boeing とMcDonnell Douglas に出向後、1999 年Siemens の一部である SDRC に入社し、SiemensKK、ドイツのSiemens 本社等経験後、2015 年 専務執行役員に就任。2018 年10 月 コーポレートデジタル事業責任者として(株)東芝に入社。2019年4月 執行役常務 最高デジタル責任者、2020年4月 執行役上席常務に就任。現在、東芝デジタルソリューションズ(株)取締役社長、東芝データ(株)代表取締役CEO、(一社)ifLink オープンコミュニティ代表理事を兼任。自動車、精密機器設計、重工業、ソフトウェアのFAのエキスパートとして、大手グローバルメーカーのデジタル化コンサルも行う。現在はロボット革命と産業用 IoT イニシアチブ、IoT アクセラレーションラボのアドバイザーとしても活動。

尾原 和啓 氏
IT批評家
京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を専門とし、経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。現在13職目、シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Japanに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。
近著「プロセスエコノミー」は予約時でAmazon書籍総合ランキング1位販売前1万部増版。「アフターデジタル」は元 経産大臣 世耕氏より推挙 11万部「モチベーション革命」は 2018年Amazon KindleUnlimited年間 1位。韓国・台湾・中国などで翻訳多。

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尾原さん:
まず僕は、今の世の中で言われている「DX」にはいろいろなズレがあると考えています。もともと僕はインターネット事業の立ち上げ時における非連続な変化という意味でのDXに携わっていましたが、GoogleもFacebookも、行っていることは所詮インターネットの中で完結したトランスフォーメーションに過ぎません。

では、これから起こるDXの二回戦=「DX2.0」とは何かというと「リアルをネットの力で書き換えて、全く違う世界に連れて行くこと」だと思うんです。

島田さん:
僕らはそれをCPS(サイバー・フィジカル・システム)とも言います。哲学的な話になりますが、人間の精神と体は分けてはいけないんですよ。健全なる精神は健全なる体に宿るといいますが、デジタルにおいても、デジタルだけの世界に没入すると人間の体から離れてしまうんですよね。これは良くない。

例えばキリスト教の「七つの大罪」には「冷たい罪」と「温かい罪」について述べられています。温かい罪とは、憤怒など体につながっている罪で、冷たい罪は名声、貪欲、妬みといった精神だけのもの。これはまるで、ネットの世界の問題をそのまま並べたように感じますね。

尾原さん:
DX1.0の主であるFacebookが、未成年は「冷たい罪」への欲に身を任せやすいことをわかっていながらやっていたのではないかという……。

島田さん:
ヘイトのほうが、人の滞在時間は長くなりますからね。だから人間は、体から離れるようなことをしてはいけないんです。

それから最近僕は、インセンティブモデルのキャッシュバックがイヤなんですよ。
インセンティブが消えるとエンゲージメントが下がるから、際限がないんですよね。僕がやりたいのはそうではなくて、善意がつながっていくような世界をつくることなんです。

尾原さん:
そう、今日僕が言いたかったことの一つが「市場(シジョウ)と市場(イチバ)は違う」という話です。シジョウとは「100円払えばこれを買える」といった価格設定があるおかげでどこでもやり取りができる仕組み。一方イチバとは、例えば島田さんには「いつもお世話になっているからタダで持って帰って!」と言い、別の人には「あなたは5万円ね」というような、人のつながりに左右されるものです。シジョウは価格にコントロールされるので、中央で簡単にインセンティブを設けられたりすると歪められてしまいます。一方、イチバは個別のつながりの中で生きているので、変化に強い。つまり、イチバ的なネットワークの方がスケールフリーに近いのではないかと思います

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尾原さん:
Googleマップのレビューデータなんかでは、今は一人ひとりの嗜好性に合わせたリコメンデーションが表示されますよね。その店に何回行ったか、何カ月ぶりに行ったのかというデータが蓄積されていますし、それによって地元の人と他所から来た人のどちらに人気があるのかといったこともわかる。人間の「リアル」に紐づいたデータだから、信用できる評価と言える。そういう信頼性も含めたつながりが可視化されています。

島田さん:
それはGoogleの良い面ですよね。一方で、スケールフリーのネットワークを自動的にエクステンドさせる仕組みはGAFAが確立してきましたが、僕はデータが圧倒的に足りていないと思います。なおかつ、データの信用度もまだまだ。そこに、日本の企業にとってのチャンスが残されているんです。ハードウェアがスケールフリーにつながる方法をいろんな方法で編み出していくと、今までのGoogleとは違う、体にグラウンディングされたスケールフリーのネットワークが表れてくる。これは、今までのネットだけの世界のプラットフォームよりもはるかに「人と地球に優しい」ですよ。

尾原さん:
なぜGAFAが世界で圧倒的な成功を納めているかというと、スケールフリーな「場」を提供し、その「場」において最も選ばれる存在になっているからですよね。しかしこれからは、例えば島田さんが手がけられているスマートレシートのように「人がどこで何を買った」といったリアルな行動の現身であるスケールフリーが、どんどんサイバーフィジカル空間に展開していく。すると、リアルな買い物におけるGoogleのようなモノがたくさん出てくるのではないでしょうか。

島田さん:
買い物に限らず人が日頃から触れているあらゆるものがスケールフリー上でつながるようになると、人の生活や生き方が変わってくるでしょう。ハードウェアからデータを取得してつなげることを……例えば2~3年前にIoTが流行っていろいろな会社がやろうとしましたが、結局、出来ていないですよね(笑)

しかし一方、そういうことを日本の人たちは諦めずにやってきた。つながっている人との関係を生かして、スケールフリーネットワークとハードウェアを一体で作るようなものを考えれば、すごい未来が待っているのではないかと思います。

尾原さん:
僕はイスラエルの技術ベンチャーのファンドでアドバイザーをしているのですが、今、日本と提携したいというイスラエルの企業がめちゃくちゃ多いんですよ。今までの「ネットがネット化していた」ところから「リアルがネット化する」時代へ移行するにあたって、基盤が整っている国は日本とドイツくらいです。日本のコンビニ、公共交通、工場のオペレーションなんかも、こんなにきれいに整備されている国はなかなかない。リアル接点が強い日本は、強いんです

島田さん:
そうですね。でも単につなぐことを目的化するのではなく、なぜスケールフリーネットワークでこんなにFacebookが成功したのかを理解することは重要です。その上で、ネットワークを作った中で、どういうかたちでマネタイズしていくのかというイメージをつくることが、僕は大切だと思うんです。

尾原さん:
Facebookにしても、やみくもに人がつながればいいのではなくて、あくまで一人ひとりが「この人とつながりたい」という意向を持ってつながっていくことが大事。すると必然的に、たくさんの人からつながりたいと思われる人が「ハブ」になります。そうすることで、短いステップで遠くとつながれる、スケールフリーな構造が自然とできあがるのです。

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島田さん:
僕は、本当に個人の情報がたくさん集まり始めたら、広告業界は縮小すると思っています。今の広告業界は、本当にその人が求めているかどうかは関係なく広告をバンバン打っている。それだとみんな見なくなるじゃないですか。広告を打つ側だけが儲かるなんて、おかしいですよね。

そうではなくて、例えば「この製品を買ってくれたら、学校に寄付をします」とか「公園に木を植えます」という方法があるそうで、それで10倍ぐらい物が売れた実績があるんですよ。そういう還元のしかたはいいですよね。

尾原さん:
「善意の場」への貢献ですね。一人ひとりがレシートなんかをペーパレス化することに貢献して、それによって街に木が植えられ、自然が増えて、環境がよくなって、その街に住みたい人も増える、というような。

島田さん:
さらに言うと、どこか遠くの知らない土地に木を植えられるよりは、自分の子どものためになっていることを実感できるほうが、より好まれるそうです。本来我々が持っている人間としての温かみにデジタルを掛け算するほうが、サステナブルだということです。

尾原さん:
アメリカの哲学者マイケル・サンデルさんも仰っていますが、能力主義のインセンティブの中で成長しても、能力があると認められるかどうかは運次第です。現代における激しい変化を受け入れるには支え合いが必要だし、インセンティブ主義には陥らないほうがいい。

「中心」のあるインセンティブによって歪められたものは、歪みを狙う人によって汚され、分断が進んでいく。それに対してアメリカのWeb3.0には「中心」がなく、それぞれがトラストとして意味があるつながりになっているから、変化に対して柔軟であり持続的です。

島田さん:
ダイバーシティの基本的な考え方ですよね。ダイバーシティであるほうがレジリエンスが高く、極端な答えを出さなくなる。

尾原さん:
それをリアルな生活の中にしみこませられるのが、サイバーフィジカルとしてのスケールフリーですよね。

日本が積み上げてきた資産とスケールフリーネットワークを組み合わせれば、GAFAに変わって新たな世界の覇権を握るのも決して夢物語ではない! そんな勝利への確信が、皆さんにも伝わったのではないかと思います。

私たちもこの状況を見据え、自分ごとと捉え、DX2.0の勝利の景色を見に行きましょう!


ライター 北村朱里 @kitamuraakari
meetALIVE プロデューサー 森脇匡紀 @moriwaking
meetALIVE コミュニティマネージャー 小倉一葉 @osake1st

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