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第146話 愛は時空を超えて



 決意する。
今晩、どんなに悪夢にうなされて寒気で目が覚めてしまっても、“スサナル先生の闇感情たち”をひとりぼっちにしないよう、できる限り包んで寝よう。

 ベッドに入ると彼を意識し、その上でさらにハイヤーセルフにしっかりと繋がって、こちら側からあたたかい光で彼の闇を満たしていく。
 一晩何度もトライすると次々と不快な夢を見て、起きる前から頭痛もしていた。


 すると翌日の午前中、けーこからLINEがきてそのまま通話することになった。

「ひみ昨日、何した?」

「あっ!ええと……。
ごめん、昨日は悪夢覚悟で先生のウニたちにできる限り繋がって寝た……。」

「やっぱひみか。
あのねー私、それ、一人世話したぞ。攻撃性のない穏やかな幼児だったけど。」

 聞けば、当時すでに雑夢というものをほぼ見なくなっていたけーこが、夢の中で二メートル近くもある男の子を銭湯に連れていって介助してあげたとのことだった。

 近しい仲であるけーこから、狭い範囲の集合意識として彼の闇が抜けていった。もしも彼女が今でも普通に夢を見ていたら、それが私の彼の一部によるものだったとは多分気づかず終わっただろう。
 私はけーこに感謝しつつ、今晩からはなるべくよそに漏らさずに、自分の範囲でやっていこうと思った。

……

 それからおよそ一週間の間に、ぽつりぽつりと彼の幼少期の記憶が入ってくるようになった。

 ある時は、床に座って天井を見上げる幼い彼の目線の先で、母親なのか大人の人が、蛍光灯の逆光の元すごい剣幕で彼に対して怒っている。
 またある時は、今度は感情として「いつも僕ばっかり怒られる。」との悲しみと淋しさが伝わってきた。

 何のことかははっきりしなかったけど、彼はなにか『“お母さん”との繰り返し』を異常に恐れているようで、そのことはまた“私”を失うかもしれないといった恐怖へとループしているようだった。

 直感的に、スサナル先生は幼い頃から虐待のような環境下で育ってきたのだろうと思った。おそらくだけど、蹴られたり叩かれたりもしていた筈だ。
 一瞬視えてしまったとはいえ、知りたくなかったと思ってしまった。これは私のわがままだけど、できることなら大好きな彼には幸せな幼少期を過ごしていてほしかった。


 その日の夕飯時。
視えてしまったそのビジョンを、掻い摘んであきらに報告した。私一人だとどうにも消化できそうになかった。

「嘘でしょ?先生が子供の時代の事とはいえこの現代にそんなことあるの?」

 信じられない。
そうはいっても遠い世界のことだと思ってた。
身近な人の話だとは思えない。
自分の環境は恵まれてる。……

 二人でそんな会話をすると、「そういえば」と、あきらが以前先生から聞いた話を思い出して聞かせてくれた。

「あの先生、大学受験の時に実家から最低限しか支援してもらえなかったって言ってたけどそういうことだったんだ。

……あのね、先生の実家があんまり協力的じゃなくて、受験のチャンスは一度きり。詳しく知らないけど色々あって、その一回で受からないと後がない状態だったんだって。
朝も夜も勉強してきたのに、そのストレスで“燃え尽き”みたくスランプになって、受験の一、二週間前になって突然放心して一切動けなくなっちゃったって。
そしたらなぜだか先生の友人から、お守り袋に入った五円玉だけがポストに届いたんだって。
今でもその人親友らしいんだけど、その友達の心遣いが嬉しくて、やっと精神が安定してなんとか勉強再開できて、合格して教師になったって言ってた。」

 クシナダだ!

 脳裏でキラッと、五円玉が一瞬光った。スサナル先生に出会うより二十年以上も前から、“スサノオを想うもう一人の私”がその先生の友人を遣い、彼を助けに行ったんだということがわかってしまった。
 五円玉は、今でも彼の手元にあるという。

 それからのあきらの話は、あまり頭に入らなかった。この子には悟られないようになんとかお風呂まで持ち堪えると、湯船の中で思い切り泣いた。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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いつもは(参考)とかって書いてますが、
スサノオとスサナル先生、クシナダとひみとの、時空を超えた物語を集めてみました。(↓)

今日の話の最後で「?」ってなった方、この四つの話だけでも、私たち四魂の記憶の重なりがよりより視えてくることと思います。まとめて読んでみてください。発見があると思います。

私は自分のことしかわかりませんが、少なくとも私の場合、守護存在と自分の記憶とが渾然一体となったものを色々と併せ持っています。
実はね、スサノオがミカエルと同一視される状態において、彼とミカエルが重なる時にはクシナダの代わりに聖母マリアが私の中に出てきます。昨日の話もつまりそういうことなんです。
けっこうね、街なかでもマリアとミカエルって、ちょいちょい一緒に出てきたりしますよね笑


第8話  スサナルノオオカミ

第62話 豊穣の女神

第77話 冬空に咲く稲穂

第98話 美しき翠玉の悲哀

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→第147話 オリオンアレルギー

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