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第223話 肥沃のみなもと


 胸の真ん中が冷たい。彼の心が痛みを発している。
棘の原因となった私のことを果たして許してもいいものか、彼が逡巡しているのが伝わってくる。


「私の愛を受け入れるってことは私に屈したように感じるかもしれないけど、あなたと私の魂は全く同じ大きさだよ。
 私のことが怖いかもしれないけど、私はあなたの敵じゃないよ。だっておんなじ大きさだもの。だから上も下もないよ。」

 そう言ってから疑問に思う。
最初から私を二番手として創ることだってできたのに、どうして彼はその魂を、私のために綺麗に半分もくれたんだろう……。

「ちょっと不思議に思ったから聞いてもいい?
あなたがあなたを一回り大きく創って、その分私をあなたより小さく創って愛でることだってできたのに、どうしてそうしなかったの?
 もしも私を……たとえば六対四くらいに小さく作れば、私はいつだってあなたを支えた。こんな争いにもならないし、主従がはっきりしていれば『あなたの望みを叶える私』だったのに、どうして私を、あなたの魂を半分も分けて創り出してくれたの?」

 答えはなく、返事の代わりに胸の冷たさが一段と増した。

……

 プレアデスへと意識を繋げる。セッションで話をしたカウンシルの司祭さまは、以前から少し感じていた通りやはり私の父だった。そしてその隣には母もいた。

「お帰り。よく帰ってきたね。」

 ああ私、プレアデスから「お帰り。」って言ってもらえた!前と言葉は一緒だけど、でも違う。前はまだ“そこ”まで統合できていなかったってことが、今ならわかる。

 当時の両親から心からの歓迎を受けると、宇宙はずっと、『受け取れない私』のことを“こそ”探していたのだと思い知る。ようやく彼らは『私』に出会うことができたという。
 私とは、プレアデスそのものに愛されていた。


「愛しかないプレアデスでは統合は不可能。
闇を知り、闇を理解してこそ統合がなされるんだよ。」

 改めて父の意識からそう教わると、いかに私がかの星にとって必要とされていたのかをまた一段心に刻んだ。

 するとそこから浄化の波が、他の記憶へと連鎖していく。“何故”、私がエジプトから姿を消したのかその理由が視えてきた。


 うっすらと思い出す。
その昔、エジプトの人々のことが大好きで、みんなも私を慕ってくれた幸せな日々があった。
 汗を流して砂まみれになりながら建設などの指揮を執り、夜は共に火を囲んで笑い合い、宇宙の出来事や叡智をたくさん語って聞かせたそんな日々。

 ところが封印してきた記憶が徐々に甦える。それこそがプレアデスの負い目。今、共にいて私を慕ってくれる人たちの大半もまた、遠く青い星を追われたことで“ここ”にいるということになる。

『自分がいるだけで、彼らに迷惑をかけてしまう。』

 そうしてある日、かつての私は心を閉ざして姿を消すと、黄色い大地の端っこでひっそりと暮らすことにした。

 それ以来私は誰かと親密になっても、それでも一定の距離を置いて暮らすようになった。それは転生を繰り返した今現在でも続き、余程のことではない限り、自分から誰かを何かに誘うということもない。
 自分という難儀な生き物に納得した。


 再び意識を宇宙に戻すと、オリオンにより星が破壊されるそのシーンを思い描く。そこを越え、感謝を越え……。
 ひとつの出来事への浄化であっても、何度も何度も繰り返す必要がある。どれほど時間がかかっても、丁寧に闇を視る。
 ナイル川の氾濫がエジプトを沃土にしたように、闇の体験が多くの人たちにとってのアセンションの足掛かりとなるを知る。

 何度目かのブレイクスルーが起こる。そしてまた核心に近づく。

 私がプレアデスを……。

 ……ハイヤーさん、プレアデスを、その続き何て言ったらいい?

「プレアデスを、あるべき姿にしてあげることができた。」

 それだ!
私がプレアデスを、あるべき姿へと導くことができたんだ!!

……

 スサナル先生が何やらゴソゴソやっている。肉体関係の有無にかかわらず、彼がエネルギー的に手放せずに持っていた『複数の女性たち』をビニール袋へと詰めている。

 それから意識を彼に合わせると、にっこり笑ってこう言われた。

「預けていた指輪を返して。」

「あの、私の胸にかかってるやつ?」

 左手の薬指、きちんと確認してから嵌めてあげるとドクンと体に衝撃が走る。
 ウェディングソングが流れてくると、それをBGMにこんなことを教えてくれた。


『全てを捧げたいと思った時、その出来得る最大限が、この“半分”だった。』

 二分した彼の魂に続けてこう言われる。

「お前は美しくなった。
俺はようやくお前へと帰れる……。」

……

 ネットで“スサナル先生”を検索しなければと直感する。
 彼が、SNSなどで顕在意識の私に近況を知らせてくるタイプではないことなら、私が一番分かっている。それに以前こっそり調べてみた時も、実際“収穫”はゼロだった。
 ところがその日、もう何年も前のとある大会の引率で、地元紙にコメントを残す彼の写真が現れた。

 久しぶりに見る彼は笑っていた。




written by ひみ

⭐︎⭐︎⭐︎

実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

⭐︎⭐︎⭐︎

初めて知った時はあれほど自分を苦しめたプレアデスですが、今となってはそんな自分を本気で誇りに思います。

あとね、ツインレイを知って少しした頃、「ツインレイの男性には宇宙時代にでっかいトラウマがある」って話を聞いたことがあったんだけど、「舐めんな」って思った笑

ツインレイカップルが何組かいれば確かに大きい小さいあるけど、どのカップルの男女だって、同じ闇を同じ分量こなしてきたから統合ルートが拓けたんだぞって思います。

それにしても、元々ひとつの自分が自己愛を知るため、能うる(あたうる)限りギリギリの想いを込めて創ってもらった半分の自分。
ツインレイに出会っていてもいなくても、自分とはどれほど愛されて存在しているかわかりますよね。

与える男性も同じです。自分が彼女に愛を与えて、その喜ぶ顔を誰よりも受け取るための特等席を用意されているわけですから。

(きゃー、これ書いてたら心臓がめちゃくちゃ熱くなってきた笑)

⭐︎⭐︎⭐︎

←今までのお話はこちら

→第224話 凍えた命、あたたかく港へ。


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