第52話 13歳の暴走
診察とリハビリの会計を済ませ、建物を出て駐車場に向かう。あーあ、やっぱり今日も、ツインレイらしき男の人はいなかった。
いっそスサナル先生がツインレイならどれほど嬉しいだろうと思ってみても、彼はこの時間はまだ部活の指導をしているはずで、間違ってもリハビリルームに現れたりすることはあり得ない。そんな奇跡が望めないことは、自分でも嫌でもわかっていた。
車内に戻ると、機内モードを解除したあきらがいきなり大きな声で「はぁ？」と言い放って、私の頭の中から一瞬でスサナル先生を追い出した。
「え？嘘でしょ。
どうしよ何か、今度は二人で会いたいってLINEがめちゃくちゃたくさん入ってる……。」
「こないだの、たこパの子たち？」
「そう。そのうちのRってわかるでしょ？」
8組の教室でいつも連んでいるのは、あきらを含めた男女七人。視力があんまり良くない彼らは席替えにほとんど関係のない黒板前の常連組で、ついでになぜだか気も合った。
いつも賑やかにやっていて、先週末にはその中の一人の家でたこ焼きパーティーをしたばかり。Rもその仲良しのうちの一人だった。
ふーん、あきらもそういう歳だよねぇと、悠長なことを考えながら運転していたのは最初のうちだけ。よく自分の母親に、LINEの内容を逐一実況できるなぁと思っていたら、だんだん相手が狂気じみてきて、一人で抱えるにはしんどかったというのがその時のこの子の本音だった。
最初こそ、異性の友達から「素敵」だと言われてちょっと舞いあがったあきらだけど、すぐに内容がエスカレートして、「自分だけのもの」だの「他の人に通じない名前で呼んでいい？」だの言われはじめ、最終的に、「一緒に寝たい、抱き合いたい」と言われたことで、車内の嫌悪感は最高潮に達した。
相手の反応を思うこともなく、きちんと告白した訳でもなく、一方的に感情を押し付け勝手に盛り上がったその子に対し、あきらははじめ恐怖を抱き、そしてそののちに怒りを爆発させた。
中1のうちから寝たいと発言してしまえるなんて、情報ばかり過多な中で育って、相手の子も幼いなぁと思ったのも一瞬。即座にブロックしたあきらにも、やっぱり今時の子なんだなと再認識させられた。
そして翌朝。
「気まずいー」「重たいー」「行きたくないー」を連呼していたあきらは、朝の職員会議を終えたスサナル先生を捕まえてからじゃないと教室に入れないからということで、私もエレベーターに一緒に乗らずに職員室のある一階までしか見送らなかった。
結局、帰宅したあきらによると、その日Rは学校に来なかったらしい。
そしてこの日からRは、一年生の終わりの日まで、教室に顔を出すことはなくなってしまった。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説（笑）、ぜひお楽しみください。
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あきらの性別を非公表にしている弊害で、読みづらくて本当すいません💦💦私の力量不足もあって、筆に力が欲しいこの頃。
なるべくどっちの性別にも取れるように意識して書いてはいるけど（本当か？）、読者さんはどっちを連想しながら読んでくださってるんだろう…
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