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第6話 葛藤
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春から夏になろうとしていた。
切り絵の個展も無事に終えて、それでも制作の手が止まることはなかった。
というのも、この頃にはありがたいことにクライアント様が依頼してくれるようになったのだ。
…依頼人は人間ではない。神々である(!)。
まれにインドなど外国からのお客さまもいらっしゃったが、ほとんどは古事記に出てくる日本神話の方々だった。
作品作りには最低でも2週間〜1ヶ月は要する。
それでも形となって物質次元に現れたいというからには、きっと何かあるはず。
なのでたくさんは作れないが、私にキャッチできた分は作らせていただこう。そう思った。
いくつか作っていくうちに次第に掴めてきた。
わかりやすく、私への慈愛のメッセージの証として現れる方もいたが、彼らの中には神々でありながら、心のうちに無念を抱えている方もいる。
例えば、古事記にも日本書紀にもナントカ風土記にもそんなことは記述がないが、この女神様は実はこの時この男神様を助けたいと思っていた。しかも恋心も持っていた。
とか、
この方は自分の能力を必要とされてそのお役目で道化をしたが、本当はやりたくなかった。自分の心のままにその才能を使いたかった。
とか。
彼らが本心で望んでいたこと、それが感じ取れてしまった。そしてだからこそ、そんな思いを汲んで形にするお手伝いができることは、私にとっても嬉しいことだった。
自分でも、嘘なんじゃないか、気のせいなんじゃないかという懐疑心がなくはなかった。しかも、最初から誰かに売るつもりすらないもの。
これが妄想でないのなら、お金にもならないのに一体何のために自分はカッターナイフを握り続けているのか。
時に葛藤しながらも、一枚また一枚と、制作を進めていった。
それにしても。
いくら手間のかかる細かい作業とはいえ、さすがにひと月もの時間を必要とするのには訳があった。けーこである。
彼女はこの時期、個人的にストレスの絶えない状況にいた。
そのストレスの解消に、私との時間はうってつけだったようだ。
あきらを学校に送ったあと朝9時前には電話が鳴って、時にはランチを一緒にする。お迎えに行って帰ってくると、また電話がかかってきたりする。
それなりに楽しいので私も喜んで誘いに乗るのだが、自分ひとりの時間が割かれるようになり、同時に傷つくことも増えてきた。
根っからの奔放さで天界からの束縛が嫌いなけーこは、私の生活に食い込んでは、次第にその稀なる才能によって繋がった天使たちに文句を言うようになっていった。
ミカエルは、あいつはしつこい、バカ。ラファエル、あいつは腹黒い、怖ええ。ユリ(ウリエル)はただただ怖いから近寄りたくない。ガブリエル、あいつは知らん!
なにか擁護するようなことでも言おうものなら即座に反論が返ってくる。
だからなにも言わないでけーこの言うことを笑って聞いてはいたが、心はずっと泣いていた。やっと再会できた子供の頃からの大切な宝物を、毎回毎回けなされる。
「ミカなんか小さくなっちゃえって思うよね。そしたら一瞬で吹き飛ばすね。」
せっかくのランチの途中でそう言われて、心がしぼんでしまうこともあった。
思い出しては悲しくなる。
けーこが私のためにレジンで作ってくれた、ミカエルをイメージしたイヤホンジャックについていた羽が、むしれるように落っこちた。
written by ひみ
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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。
けーこの米騒動読んでくれた?
私、たまに感情でモノ壊す破壊神なのよね…
(今は違うと信じたい)
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