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ミュンヘンという町の魅力

2013年から約3年間暮らした町

ミュンヘン。

あの町の不思議なところは、

そこに住んでいる時は

自分が「ミュンヘナー(ミュンヘン人)」

である事にプライドを持って生きてなければ、

そんな自覚が芽生えたことです。


町は綺麗だし、治安もいい。

物価は安くなくて、

教養のある人、知識人が

礼節をわきまえて暮らしている。

だから自分もそれに倣って

背筋を伸ばして暮らさなければ、と思う。

それが人に自信と誇りをもたらすのだと思う。

と、これがポジティブな一面。

「この町はそこで暮らしていく人を選ぶ」

そんな印象が

僕にはあった。

外国人がこの町でコネなしに住居を見つけることは

ほぼほぼ不可能に近い。

豊かな資金と、資格を持っている人は別かもしれないけれど。

でもその時点で、この街が住む人を選ぶ

という意味がわかってもらえると思う。

だからこの町で長く住んでいる外国人は

そこを生き抜いているのだという

確固とした自負を持っている。

この町で約3年間仕事ができたことは

とても有意義な経験だったと思う。

まず食文化が豊かであり、グルメな味のわかる顧客がたくさんいた。

当然、飲食業界にも活気があった。

どんな小さなイタリアン食堂に入っても

裏切られることはなかった。

この町でうかつに店を出せば

あっという間に淘汰されてしまうだろう。

そういう厳しさがあった。

そこで自分の腕を振るえたことは

僕の料理人人生の中でも

得難い貴重な経験だった。

各界のセレブな顧客や、

料理会の重鎮と言われる人との出会い、

地中海からの豊かで新鮮な魚介類にも目を見張るものがある。

手に入る食材と

それを食して喜んでもらえる

飲食業界にとっては、

これ以上ないと言える上質な環境がある。

しかしある時に気がつく。

僕という料理人が目指すところはどこなんだろう、と。

一人前150€のコース料理を

一体どれほどの人が食べることができるんだろう?

1貫10€する握り寿司を

一体どれくらいの人が純粋に美味しいと喜んで食べてもらえるんだろう?


とは言え、僕はその後

ベルリン生活を経て

また再びセレブが集う

キプロスの5つ星ホテル内レストラン勤務を目指すわけだけれど


ミュンヘンは

偉大な田舎町である。

ヨーロッパの上質な人々が

上質な暮らしを送るために

他の世界からは少し距離を置いて

美しいアルプスの裾野に築いた町

それがミュンヘンだ。





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