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【実施報告とアンケート結果】2023/9/11(月)勉強会

2023年9月11日(月)に開催された第5回勉強会についてご報告します! 


■勉強会について 

<開催の趣旨>

医療者と患者さんのコミュニケーションに関する勉強会も第5回目となりました。
この勉強会は、患者さんの思いや背景を知ってもらうこと、及び社会の中で患者さんはどのような立場にあり、患者さんの思いが社会にどう反映されているのかを学ぶことを目的に開催しています。

今回は、長年国の制度設計に関わっている患者さん、腫瘍内科医として患者さんとのコミュニケーションを追求している医師の2名をゲストに迎え、医療者・医療系学生としてできることを一緒に考えました。

<概要> 

イベント名:第5回 医療者と患者さんのコミュニケーションに関する勉強会 
実施日時:2023年9月11日(月)19:30-21:30 
会場:オンライン開催 (Zoom)
講師:
・天野 慎介 様(一般社団法人 全国がん患者団体連合会 理事長)
・勝俣 範之 様(日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授)
参加者:医療系学生(14名) 

<プログラム> 

19:30〜 導入
19:40〜 天野様によるレクチャー
20:35〜 天野様・勝俣様によるパネルディスカッション(学生参加型)
21:15〜 質疑応答
21:30  終了 
21:35~ 懇親会(自由参加) 

<勉強会の内容> 

冒頭、運営より勉強会の趣旨についてお伝えしました。(当団体発足への思いについては、以下をご参照ください。) 

続いて、講師の天野様によるレクチャーが行われました。ご自身の悪性リンパ腫との闘病経験などを交えつつ、がん患者が抱く悩みや、患者と医師のコミュニケーションにおける課題、そして、こうした課題を契機として自ら20年にわたり携わってこられた日本のがん対策推進についてお話しいただきました。

レクチャー後には、天野様と腫瘍内科医・勝俣様によるパネルディスカッション「患者・医療者関係のリアルと未来」が行われました。パネルディスカッションは、「患者さんとのコミュニケーション能力を育むために医療者ができることは?」「医療者が、バーンアウトを防ぎつつ患者さんとのコミュニケーションを十分にとるには?」といったテーマについて、参加学生からの意見もチャットで随時受け付ける形式で行われました。先生方のお話はもちろん、学生からも大変多くのコメントや質問が集まり、時間いっぱいまで活発な議論が続きました。

CoMedは今後も、様々な方々のご協力のもと、幅広く活動を続けてまいります。
天野様、勝俣様、この度はご協力いただきありがとうございました。

■学生のアンケート結果

参加した14名の学生のうち、11名からご回答をいただきました。

<参加学生の学年>

1年生〜6年生まで、様々な学年の方にご参加いただきました!

N = 11

<天野様のレクチャーの感想(抜粋)>

  • 患者さんとコミュニケーションをとるにあたって実体験をもとにどのような点で不信感を抱かれてしまうのかということを話していただいたので、説得力があり、自分がコミュニケーションをとる場合には気を付けないといけないと感じました。また、医者と患者さんには視点の違いもあり、患者さんにも医者の視点が見えるような説明を心がけたいと思いました。

  • がん患者さんとコミュニケーションをとることは、想像以上に難しいことがわかりました。医療者の対応によって、シリアスな状況にもなってしまうことが理解できました。

  • いち患者さまの立場としてご経験されたコミュニケーションを聞けてよかったです。また、それを踏まえて現在、医師たちが患者様とのコミュニケーションをより良くするためにどのようなことが行われているのかを知れてよかったです。勉強になりました。

  • コミュニケーションには答えはなく、共感、傾聴などのスキルに加えその時々で日々考えていく必要があることが分かりました。

<パネルディスカッションの感想>

ほとんどの参加者が「良かった」「まあまあ良かった」と回答しました!

N=11

<パネルディスカッションの感想(自由記述、抜粋)>

  • 前半のお話の内容や、質問を踏まえながら医師としての立場と患者さんとしての立場のいずれの視点の意見も聞くことができ、さらに、毎回両方の視点の意見を聞くのではなく、質問内容によってお聞きする相手を選ばれていたので、話がとても分かりやすく進んでいるように感じました。

  • 医師と患者両方の視点からのお話を聞くことができた。また天野さんが、学生より豊富ながん診療の現場の経験談や知り合いの医師の話もして下さり様々な視点からの話が聞けた。学生がこれからコミュニケーション能力を高める上でどうすればいいのかの話も豊富にあり、大変参考になった。

  • チャットからも様々な意見を取り上げて頂き、活発に感じた。

■アンケートでいただいた質問とその回答

Q1.私は以前、聴覚障害を持つ方がノーストレスで注文できるよう、店員さん全員が手話での会話をできるお店があることを知ったのですが、病院で聴覚障害等を持つ患者さんが来た場合、どのように正確な説明をして、適切なコミュニケーションをとっているのでしょうか。
また、聴覚障害だけでなく会話が難しいような患者さん(性格がとても頑固な方など)との適切で正確なコミュニケーションをとるために気を付ける点はあるのでしょうか。

天野さん
私は聴覚障害をもたないので、私個人の経験としてご質問にお答えすることはできないのですが、厚生労働省の研究班が試作した「医療従事者のためのサポートガイド『ろう・難聴者 ( 聴覚障害者 ) の⽅が病院に来院されたら』」が参考となるかもしれません。

勝俣先生
聴覚障害の患者さんに対しては、病院ですと、紙に書いたり、ホワイトボードを使って書いてもらうなどの対応をしています。
コミュニケーションが難しい患者さん?に対しては、病院ですと、医師よりも、看護師のほうが、コミュニケーションスキルは高いので、看護師さんが積極的に関わることになるかと思います。

Q2.私もそうなのですが、緊張する場で思うように話せないことが多い人は、コミュケーションの観点でどうしたら良いと思いますか。

天野さん
ご自身のコミュニケーションに困難を感じている医師の方々は、僕が知る限りでも結構いらっしゃいます。しかし、ご自身のコミュニケーションに困難を感じているということは、ご自身でコントロール可能な側面もあるのではないかと思います。つまり、ご自身のコミュニケーションに関する「傾向」「癖」を自覚し、把握しているのであれば、それに基づきプロとして適切なコミュニケーションに変えていくことは可能ではないかと思いますし、そうされている(心がけている)医師の方々も存じ上げています。逆に「ご自身のコミュニケーションに困難を感じていない」医師の方々の中に、「やばい」方々がいらっしゃるような気がします。

勝俣先生
医療現場での、コミュニケーションは、ある程度のスキルが必要になると思います。スキル(技術)は習得可能ですので、模擬患者さんなどを使った実践練習などの講習会に出るのもよいと思います。

Q3.自分の感情をあまり表に出さない患者さんにはどのように接すれば良いのでしょうか。

天野さん
教科書的には「患者が感情を表出できるような環境を整える」ということが回答になるかと思いますが、実際は難しいですよね。患者の立場からすると、そもそも患者は感情を表出「しなければならない」のだろうかとも思いますが、医師が患者さんとの信頼関係(ラポール)が適切に形成されるように振る舞っていれば、患者が感情を表出「したい」と思う、あるいは感情を表出したときに適切な対応ができるのではないかと思います。

勝俣先生
男性のほうが、その傾向があるかもしれませんね。オープンクエスチョンなど使ったり、日常的な会話をしたりして、緊張を和らげるようにするなどの工夫が大切かと思います。

Q4.今回のレクチャーと話がズレてしまって申し訳ないのですが、医療サービスの利用促進のためにも、医師と患者間のコミュニケーションは重要だと思いますか?今回はがん患者様(入院されている方)をメインにお話ししてくださいましたが、例えば、がん検診や人間ドッグなどの医療サービスの利用促進にも応用できると思いますか?

天野さん
医師はプロとして適切な技量をもって医療を提供することが求められていると思うのですが、その技量の中には適切なコミュニケーションが含まれると思いますし、おっしゃるような「がん検診や人間ドッグなどの医療サービス」を受けている「健常な」方々であっても、精神的に緊張しているような方々はいらっしゃると思いますので、やはり適切なコミュニケーションが求められるのではないかと思います。

勝俣先生
がん検診や人間ドッグなどのサービスに導入できるか?ということですが、これらは、医療というよりも、自費(自由診療)の部類になります。
検診やドッグなどは、医療施設の直接収入になることが多い(もうかる)ので、実際の医療現場でも、医療スタッフがかなり優しく丁寧に接することが多いようです。保険適用になっている標準治療のほうに、コミュニケーションを良くしてほしいものと思っています。

Q5. 講義のはじめの方に、がんの宣告を受ける前、看護師と医師が引きつった笑顔をしていたとおっしゃってましたが、今振り返って、医療者がどういう表情で迎えてくれていたら良かったと思いますか?

天野さん
「引きつった笑顔」も決して悪いというわけではなくて、こちらが緊張してしまったということを申し上げるためにお話したエピソードでした。患者の立場としてどのような表情をしてくれたら良いかは、個々の患者さんで異なるかと思いますが、僕個人としてはコミュニケーションスキルトレーニング(CST)等で推奨されているような態度(例えば、話すときには身体を患者のほうに向け、患者の目や顔を見て話すなど)をしていただけると支えとなるように思います。

■最後に

今後も定期的に勉強会・交流会を続けて参ります。
次回は年末〜3月頃にイベントを開催することを予定しておりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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