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【アンケート結果・学生へのメッセージ】2023/3/1(水)勉強会

2023年3月1日(水)に開催された第4回勉強会についてご報告します!


■勉強会について

<概要>
イベント名:第4回 医療者と患者さんのコミュニケーションに関する勉強会 
実施日時:2023年3月1日(水)19:00-21:00 
講師: 東 光久 先生(奈良県総合医療センター 総合診療科)
グループワークの症例提供:長谷川 友美さん(白河厚生総合病院)
参加者:学生(15名) 
運営:学生スタッフ(4名)
共同開催:Medipathy


<プログラム>
19:00〜 導入・東先生によるレクチャー
19:55〜 グループワーク
20:40~ 東先生・長谷川さんによるフィードバック・レクチャー
21:00  終了 
21:10~ 懇親会(自由参加)

<勉強会の内容>
冒頭、運営よりご挨拶、勉強会のルールに関する説明、勉強会の趣旨についてお伝えしました。(発起人である遠藤(金沢大学)が勉強会の開催に至るまでの根本になった思いについては、こちらをご参照ください。)

続いて、講師の東光久先生より、『患者力』について、レクチャーをしていただきました。レクチャー冒頭では、医師が病を患って患者となったときに、合理的な意思決定ができなくなってしまった例を紹介してくださいました。その例をもとに、「患者さんが合理的な意思決定を行える条件とは?」「このような意思決定を促す医療者の態度とは?」について解説してくださいました。

レクチャー後には、参加学生を4グループに分け、グループワークを行いました。グループワークでは、がん患者さんの仮想症例を扱いました。疾患発覚時、治療開始時、終末期の3つの期に分けて、それぞれの期について、患者さんや家族が抱えていると考えられる課題をブレインストーミング形式で挙げました。次に、これらの課題を東先生のレクチャーで扱った『ECAMモデル』に従って分類して問題点を整理し、医療者として実際にどのような声かけ・対応をするべきかについて意見を集めました。

症例における発言の一つをとっても、リテラシー面に注目する学生がいたり、意見や希望の伝えやすさに注目する学生がいたりと、着眼点はさまざまで、発見の多いグループワークとなりました。また、今回新たな試みとして、Google Jamboardを用いた意見出しを行いました。発言を文字化することによって、学生同士が、出された意見に対してリアクションがしやすくなり、活発な議論を行うことができました。

グループワーク後には、東先生にロールプレイのフィードバックおよび追加のレクチャーをしていただきました。前半のレクチャーのキーワードであった『共感』『対話』について、具体的な声かけ方法のレベルまで掘り下げてお話をいただき、非常にためになりました。加えて、『分人』*という概念を取り上げてくださいました。『分人』とは、患者さんという1人の人であっても、医師から見た側面と、看護師から見た側面が異なるのは自然なことであり、このような多面性は偽りではなく、その多面性の全てを含めて、1人の患者であるという考え方のことです。

*『分人』は小説家・平野啓一郎さんによって提唱された概念です。
参考サイト:https://dividualism.k-hirano.com/

また、今回の仮想症例をご提供くださった、看護師の長谷川 友美さん(白河厚生総合病院)にもお話をいただきました。運営学生としても、本勉強会のグループワークが、患者さんの『分人』に注目する良い契機になりました。

今回の勉強会でも、全国からお集まりいただいた学生と、活発な意見交換が行われました。本勉強会に参加した学生の中に、当団体の運営に興味を持ってくれた方もいたことは、非常に嬉しいニュースとなりました。コミュニケーションギャップに関心がある学生のコミュニティ形成という、当団体の目標の一つに向けて大きく前進することができました。

今後も、様々な方々の協力のもと、勉強会・交流会を開催し、幅広く活動を続けていきたいと考えております。
東光久先生、Medipathyの西岡さん、ご協力くださりありがとうございました。


■学生のアンケート結果

参加した15名の学生のうち、9名からご回答をいただきました。

<学年>

1年生から6年生まで、様々な学年の方にご参加いただきました。

<東先生のレクチャーの感想(抜粋)>

  • なかなか普段学ぶことがない内容を学び、自分でどういう対応をすればいいのかを考える貴重な機会になりました。自分が医師になった時に、自分が患者さんの立場として、来てよかった、と思われる医師になれるよう努力します。

  • 闘病の旅の主導権を握っているのは自分だということを理解していただいて、患者さんが納得の行く方向に向かうための能力を得ていただくという考え方は、がんに限らずあらゆる病気の治療において大切なことだと感じました。

  • あらためてコミュニケーションについて深堀して考えると難しいことを思い知らされました。

  • 患者さんと接する際、私は「昨日の患者さん」と「今日の患者さん」、そして「明日の患者さん」が同じ人であると疑いすらしませんでしたが、立場が変わったり環境が変わったり、その日の朝に起きた何気ない出来事ですら患者さんの患者力は変化するのかもしれません。心に留めておきたく思います。

<ロールプレイの感想>

ほとんどの参加者が「良かった」「まあまあ良かった」と回答しました!

<ロールプレイの感想(抜粋)>

  • 他の参加者の方の自分とは違う考えを理解したり、自分の考えを話したりと、上手く対話することができたように思います。

  • 少人数で柔らかい雰囲気の中進められるとても楽しい時間でした。もう少しだけ時間が長ければ、より深い対話もできたように思います。

  • 面白い試みでしたが、課題の内容が重たかったです。


■東先生・長谷川さんへの質問と回答

Q.(グループワークの症例に関して)取り乱して泣き崩れたり、「どうして私の子が病気になったの?」と答えのない問いを投げかけられたときはどう対応されますか?また、すぐにどう対応すべきか分からず、思考が停止しそうになったときにはどうされていますか?

A. ご回答(東先生より)
どちらも意味を共有することが大切だと思います。
傾聴するときのコツは、相手の語りにそのままついていくことです。

(Q. 答えのない問いを投げかけられたときはどう対応されますか?)

A. 困りますよね。ただ、解決策を求めているのではなく、ただ聴いて欲しい思っていることの方が多いと思います。今回のケースのように、『どうして私の子供がこんな病気になったの?』とい問いには、この理不尽さ、悔しさ、虚しさが根底にあるはずです。その辛い感情を受け止めてほしい、分かち合ってほしいと思っているのではないでしょうか。

医療者はついつい解決策を提示しなければならないと思いがちです。
ただ、相手の語りについていくこと(頭の片隅で判断したりアセスメントしようとするのではなく)、その際、非言語的コミュニケーションで共感的態度を示す(うなづく、相手の目を見る、など)ことなどが大切だと思います。

(Q. すぐにどう対応すべきか分からず、思考が停止しそうになったときにはどうされていますか?)

A. 思考停止はOKです。それぐらいこちらも戸惑っているということですよね。その戸惑いという感情を大切にしてください。そして相手がどういう思考過程でそう考えたのか、行動したのかを探索するのが良いのではないでしょうか。聴き方として、『どうしてそう思われたのですか』『どうしてそのような行動をしたのですか』など。whyを問いながら、時として『私は〇〇のように理解しましたが、その理解であってますか』というようにして、意味を共有する感じですね。

2つの質問とも、相手の壁打ち相手になっているというイメージでいます。
そうしているうちに何らかの考えや感情が浮かんできたりして、それを相手に伝える。
それが、対話そのものだと思います。
つまり、答えは常に相手の中にあると信じることでしょうね。


A.ご回答(長谷川さんより)
取り乱したり泣き崩れたりするような反応をされた場合には、まずは、そのまま感情を表出してもらいます。具体的には、感情表出を促すコミュニケーションスキル:NURSE(※1)を活用して対応します。そうすることで、感情を意図的に聴き、寄り添うことができるからです。
そして、「どうして私の子が病気になったの?」を意味の共有をしていきます。返答しにくい発言でも、話題を変えずに、意図的に聴くことが大切です。

コミュニケーションの主導権は受け手にあります。
受け手は、事前の信念(※2)に基づいて情報を判断するので、こちらが何を言うか?はあまり関係ないことも多いです。特に、感情への対応については抑制してしまう方向ではなく、表出してもらった方がよいです。

どう対応していいかわからない時・思考が停止しそうな時は、往々にして、相手のニーズがわからないことが原因であることが多い気がします。
相手のニーズを明確にするために、相手の発した言葉の意味を共有すると、相手の見ている景色が見えてきて、対応できるようになっていきます。

※1「患者の感情表出を促す NURSEを用いたコミュニケーションスキル」
監修:一般社団法人 日本がん看護学会
編集:国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院看護部
※2「事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学」
作者:ターリ シャーロット 翻訳:上原 直子
出版社:白揚社 発売日:2019-08-11


今後も定期的に勉強会を続けて参りますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。