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【アンケート結果】2021/9/25(土)勉強会

9/25(土)に開催いたしました、第1回勉強会の様子や事後アンケートの結果についてのご報告です!

■勉強会について

<イベント概要>
イベント名:第1回 医師と患者さんのコミュニケーションに関する勉強会
実施日時:2021年9月25日(土)19:00-21:00
講師:大野 智 先生(島根大学医学部附属病院 臨床研修センター 教授)
参加者:医学生(20名)、患者さん・ご遺族・ご家族(12名)
運営:医学生スタッフ(5名)

<当日プログラム>
19:00〜 導入・大野先生によるご講演
20:00〜 グループワーク(参加者によるディスカッションと感想共有)
21:00頃 終了、その後自由参加の懇親会

<参加学生について>
第1回の勉強会にもかかわらず、約20名の医学生に参加していただくことができました。参加学生の所属する大学は多様で、学年、国立私立、地域等の偏りもなく、全国から多くの医学生が勉強会の内容に興味を持ってくださったことを嬉しく思います。
参加に先立ちまして、勉強会のテーマである「患者から『健康食品を使ってみたい』と聞かれたらどう答えますか?」という質問を申し込み時に伺いました。この質問に対しては「なぜ健康食品に興味をお持ちなのですか?」と相手の状況を伺い、心境を理解しようと努める回答が多数を占めており、既に医療者-患者コミュニケーションの必要性について一定程度理解し、関心を寄せている参加学生が多かったと考えられます。

<参加された患者さん・ご遺族・ご家族について>
今回の勉強会には、開催の趣旨にご賛同いただいた12名の患者さん・ご遺族・ご家族にご参加いただき、参加学生に学びの場を提供していただきました。本勉強会の立ち上げにあたってお力添えをいただいた「卵巣がん体験者の会スマイリー」代表の片木美穂さんを始め、多様な疾患のご経験に基づいたエピソードを提供していただき、この場をお借りして御礼を申し上げます。

<イベントの進行と雰囲気について>
1.導入
イベント開始直後には、本勉強会の発起人である運営の遠藤より、ご挨拶と勉強会の趣旨やルールに関する説明をお伝えしました。勉強会の開催の根本になった思いや
詳しい開催への思いに関しましては、こちらのnoteページをご参照ください。

2.大野先生によるご講演
運営からの導入の後には、講師の大野先生による「補完代替療法 患者から『健康食品を使ってみたい』と聞かれたらどう答える?」という約40分ご講演をいただきました。
補完代替療法とは?という基礎的な内容に始まり、医師と患者さんとの間のコミュニケーションにおいて陥ってしまいがちな心理的バイアスと、大野先生自身の応答例などを含め、実践的な内容について教えていただきました。補完代替療法について学ぶのが初めての学生もおり、参加学生は終始頷きながら真剣に聞いている様子がZoom越しにも感じられました。

3.グループディスカッションと感想共有
後半は、学生参加者4、5名ずつ、患者様・ご遺族・ご家族の中から2名ずつのグループに分かれてグループディスカッションを行いました。始めに各グループの患者さんから、医師とのコミュニケーションについて疑問やすれ違いを感じた経験などについてお話しいただきました。その後は大野先生のご講演のテーマに基づいて、「健康食品を使ってみたい」と患者さんに言われた際の考え方や応答にどのような変化があったか、などを中心に、医師と患者さんの間のコミュニケーションのあり方についてディスカッションを行いました。各グループには運営スタッフがファシリテーターとして参加し、参加学生や患者さん・ご遺族・ご家族が意見を交わしやすいようなサポートをさせていただきました。
グループディスカッションでは終始柔らかくも真剣な雰囲気で対話がなされ、お互いの意見を尊重する様子が見られ、各自がコミュニケーションについて理解した上で当日に臨んでくださったことを嬉しく思います。(感想等の実施結果についてはアンケート結果をご参照ください)
ディスカッション終了後にはその感想共有、大野先生や患者さん・ご遺族・ご家族への質問の場が設けられ、学生から活発な質問が出たことがとても印象的でした。
また、勉強会終了後に自由参加で開催した懇親会には、多くの学生や患者さん・ご遺族・ご家族が参加してくださり、前の時間に引き続き多くの意見交換が行われました。

全体を通して、参加された方々が皆、当勉強会参加への目的意識を持ち、積極的に参加してくださっている様子が感じられました。運営としては非常にありがたく思っております。
運営側の配慮の行き届かぬ部分もあったものの、今後もより良い、学びの多い勉強会づくりに努めて参りたいと思います。

■学生のアンケート結果

参加した20名の学生のうち、19名からご回答をいただきました。

学年

学年


大野先生によるご講演の感想

大野先生によるご講演の感想

全員から「良かった」とのご回答をいただきました!

大野先生のご講演に関する感想(良かった理由)
● 補完代替医療に関して、「過去への後悔」「未来への不安」が原因だという深掘りされた意見をもらえて気づきを得られました。ありがとうございました。
● 医師が「治療効果が不確定である。」という発言が患者さんの不安を増長させてしまっていることに気づかされたから。
● 補完代替療法に対する正しい知識を学べたからです。また、患者さんにとってどのようなコミュニケーションをとることが医師に求められているか知ることができ、大変勉強になりました。

グループディスカッションの感想

グループディスカッションの感想

約95%が「良かった」「まあまあ良かった」と回答されました!

グループディスカッションの感想(良かった理由)
● 患者さんから直接お話を伺え、自分が医師になったときにどのように患者さんに寄り添って適切な医療を提供できるか考えさせられました。
● 遺族の方の補完代替医療に対する深い思いを知ることが出来たからです。当事者の生の声を聞くことができて良かったです。
● 実際に患者さんのご家族や患者さん自身のお話しを聞く貴重な経験をさせていただきました。出版されている本に書かれていることは正しいと思ってしまうということや、患者さん側の視点にも家族や周囲との関係性によっていろいろあるのだということを学べました。ありがとうございました。

患者さんとのコミュニケーションへの関心は高まったか

患者さんとのコミュニケーションへの関心

参加した学生全員の、患者さんとのコミュニケーションへの関心が高まりました!

大野先生への質問と回答
1)統合医療は近代西洋医学を前提とするものだと思いますが、仮に近代西洋医学そのものを全否定する患者さんが病院にきた場合(否定していたのだとしたらそもそも病院にこない可能性もあるとは思いますが)どうするかという検討はされているのですか?

「近代西洋医学そのものを全否定する患者さん」の背景に、どのようなことがあるのか丁寧に聴く姿勢を持ち続けることが大切だと考えます。
個人的な推測も入りますが、そのような患者さんの中には
・近代西洋医学でひどい経験をしたため医療不信に陥っている
・その患者自身の人生観や価値観から近代西洋医学とは相容れない考え方を持っていて全否定している
ケースがあります。そのような場合、患者さんとの信頼関係を築くことが何よりも重要になってきます。

2)医療面接で医師として聞かなければならないことを聞いたり話したりするほかに、患者さんの生活背景や価値観についても知ることが必要だと思うのですが、どういうタイミングで切り出したり、優先順位をつけたりすればいいのでしょうか。コミュニケーションについては日々苦労しています。答えはないと思いますが、参考になるような書籍があれば教えてほしいです。

タイミングや優先順位はケース・バイ・ケースなので、マニュアル化できるものではないと個人的には捉えています。書籍についても、コミュニケーション・スキルを学ぶためのものであれば参考になる教科書はあるかもしれませんが、質問にある「タイミング」「優先順位」には『唯一の正解はない』ぐらいの認識を持っておいてもらえたらと思います。また講演でも触れましたが「医学的な正しさは必ずしも万人にとって正しいわけではない」「世の中には多種多様な価値観の人がいる」ということも忘れないでください。そのことを知るために読書をすることは大いに賛成です。

3)今回のお話しを聞いて、患者さんとコミュニケーションを取る努力をすること、傾聴の姿勢を持つことの大切さ、エビデンスがなければ効かないわけではないと言い切れないことを学ばせていただきました。ありがとうございました。質問は、患者さんのお話しを親身に聞くコツを教えていただきたいです。今回の勉強会で患者さんのお話や当時の心境などを聞いていると、私の家族に当てはめてしまったり、お話しを聞いているだけなのに感情移入してしまうことで私の感情が揺さぶられて、感極まってしまいました。患者さんの悩みや不安は、学生や医師にとって全て理解できないとは思うけれど、出来るだけ寄り添いたい。しかし、私の場合は寄り添いすぎて、共感しすぎて自分も引っ張られたり背負い込みすぎてしまいそうだなと思いました。うまく距離をとりつつ、患者さんとの信頼関係を構築する心構えやコツなどあれば教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。

医療のプロフェッショナルとして「感情移入」「感情が揺さぶられる」は時に判断を誤る原因にもなりかねないので注意が必要です。また「寄り添い」「共感」についても、行き過ぎたり独りよがりだったりすると患者にとっては負担にしかなりませんし、医師の燃え尽き症候群にも繋がりかねません。そのためにも、医師と患者との適切な距離感について学ぶ必要があります。なお、適切な距離感については、医師個人の得手・不得手、医師と患者の相性など複合的な要因で決まりますので、唯一の正解はありません(強いて言うなら「お互い不快に感じない距離」となりますでしょうか)。今後、さまざまな場面で人間関係を築いていく経験を重ねていく中で、自分に合った距離感を見つけてみてください。さらに、見つけた自分の距離感に固執せず、ときには普段と異なる距離感で人と接することができるような技術を身につけることもトライしてみてください。
「患者さんとの信頼関係」については「信頼関係」と一言でいっても、いろいろなパターンがあるので心構えやコツもケース・バイ・ケースになると思います。なお、「医者と患者が仲良くなること=信頼関係が構築できた」という短絡的な考え方は、医療現場では時に好ましくない結果を招きかねないので注意が必要です。

4)患者さんと接する上で、患者の真意を汲むことは非常に重要であると改めて感じました。大野先生は、どのように他者の真意を汲めるような「コミュニケーション」しようと心がけていらっしゃいますか?

残念ながら、想像力を最大限に働かせて真意を汲むように努力しても、患者さんの真意が全て分かるということはありません。ですので、私がコミュニケーションで心がけているのは、「相手の真意は分からない」ということを常に念頭に置きながら(※医師が患者の真意を勝手に決めつけるようなことはしないための戒め)、ただし患者さんの真意を分かろうとする姿勢は示し続ける(※”アピールする”とは異なります)といった点になります。

5)患者さんから投げかけられた補完療法について頭ごなしに否定するのはもちろん良くないことだと思っています。医師は最低限、補完療法について知識を知っておきたいな、と感じたのですが、どのような情報源だと信頼できるのかどうかをご教授いただきたいです。

少し宣伝ぽくなりますが、下記を参考にしてみてください。
厚生労働省「統合医療」情報発信サイト[eJIM]
日本緩和医療学会「がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス」

6)今回は自分で決定権がある方への対応方法だが、子供など、決定権がない人に接する場合に気をつけるべきことを教えてほしい。また、子供と親の意見が衝突した際にどうするべきかの考え方も教えてほしい

子供であっても、年齢など理解度によって分かりやすく説明する必要があることは知っておいてください。”インフォームド・アセント”として大学の講義で学ぶ機会があると思いますので、そのときに勉強してみてください(既に講義を受けた人は復習してみてください)。

■患者さんから学生へのメッセージ

勉強会に参加された患者さんやご遺族、ご家族の方々全員から、本勉強会に参加された学生への応援メッセージをいただきました。運営チームから、改めて感謝申し上げます。

「今回のディスカションで扱った、授業ではなかなか触れることのできない実体験を、自分自身の医療者としてのありかたを考えるきっかけとしてほしい」
「さまざまな価値観をもつ患者さんを一緒くたにするのではなく、ひとりの人として対応できる医師を目指してほしい」
という内容のメッセージをいただきました。

また、今回の勉強会に参加した学生との会話を通して、これからの医療に期待を寄せてくださる方もいらっしゃいました。ほかにも多くのメッセージをいただきましたので、メッセージ全文は以下のnoteにて公開させていただきました。