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営業の類型というものついて

 経営学の世界においても「営業研究」という分野はまだまだこれから発展しそうな分野であり、私自身もマーケティングだけでなく、営業も非常に(研究対象としても)興味がある分野であることから、色々な論文を読んではいる。

 その中で、例えば、(欧米的な)「sales」と(日本における)「営業」とは違うのではないか? またそうであるとするならば、「マーケティング」の役割も違うのではないか?と考えることがある。

 さて、(特にB2Bの領域では)「日本の製造業にはマーケティングは存在してこなかった」と言われる一方で、営業部門の中に”営業企画”という名前の部署は存在している(きた)ことがあちこちで確認ができる。

 実は日本では、営業部門の中にある“営業企画”がマーケティングや販促の機能を請け負ってきたのであり、「マーケティング」という名前を関した部署がないだけで、実質的に日本の製造業においても「マーケティング」の”機能”は存在していたといえるかもしれない・・・など、ということが学術的な「営業研究」の成果からわかってきている(すなわち、業界の中で半ば一般化されてしまっているある種の説への破壊度は凄まじいともいえる)。

 さて、そうした「営業」と「sales」の違いの話は一旦横においておいて、そもそも「営業」や「sales」というのは、その名前のもとに色々なタスクや役割が存在するのではないか?という疑問を持ってみるというのも良いように思う。

 例えば私の場合は広告代理店での「営業」職から、社会人のキャリアをスタートさせている。しかしながら、広告代理店における「営業」というのは、その昔は「連絡」という名称であったこともあるような職種であるし、また「営業」のニュアンスはそれぞれの企業によって違うようにも思う。

 そこで、「営業」や「sales」(以下、本文章では「営業」と「sales」の違いを語ることが主旨ではないので、「営業」という言葉に集約をさせてもらう)の役割を細分化して、”どのような”営業の形式があるのかを研究者とと実務家の文章をレビューして類型化してみようと思う。

 「営業の類型化」についての実務家としての意味あるところとして、営業戦略、特に組織や人材に関する戦略構築に役立つように思っている。例えば事業の規模や事業フェース、何を売っているかによって、各社の営業のあり方は変わるべきものであるが、巷には営業組織やタスクのテンプレート化したものが存在し、それを当てはめて営業組織や営業戦略を立てようとする企業が以外と多いのは嘆くべきことだ。それよりも自社にあう営業のスタイルはなんなのか?を考えることが先にくるはずなのだが、現状はなかなか(実際は)そうなっていない。

 実際は、事業やプロダクトのフェーズや、あるいは販売しているものによって、営業の行うべきことは変化するはずであり、単純なプロセスマネジメント型の営業戦略を立てたところで、それが妥当な営業組織のあり方だとは思えない。むしろ、”営業”が行う仕事の役割に応じて、人材の獲得や組織の構成を検討しないといけないのではないだろうか。

 「型」を先に準備して、そこに人員を配置したところで、自社の事業やあるいは人材の役割を妥当な戦略のもとに描くことはできるのだろうか?

 そこで、”どういった営業”が必要になってくるのか?を事業や商品のありようによって変わってくるというヒントを、この文章で提供できればよいのではないかと思う。

 さて、本文章については、以下の分類から始まる。


 これは、幾つかの文章からまとめた、Types of Salesperson つまり「営業人材の類型」に関する資料である。 主に上記に書いた Kotler 先生の共著や、実務家の文章などをレビューしてまとめている。この中にある類型を以下に解説をしたい。

1. Order Takers: 客を説得して商品を買ってもらい売上を伸ばすという責任はない。そうではなく、客側の注文を適切に会社に伝えてデリバリーする役割の営業 =お客さんが purchase ready な状態に対応する営業

1-a: Inside Order-Takers : 客側が商品選択を自由に行い、そして客が買いたいものについて、代金の受け取り、商品の引き渡しを行う役割。=電話で客の注文を受け、フィールドセールスをサポートするテレマ・セールスのスタッフなど。

1-b. Outside Order-Takers: 客先のところに出向いて、例えばノートパソコンやタブレットを使って客の注文を取る。積極的に客側を説得し購入につなげる役割ではない。=三河屋さん・御用聞き営業

1-c. Delivery Salespeople: 商品の引き渡しに特化。注文数の増減は客側の意思決定であり、客を説得し購入につなげる役割ではない。しかし、この役割は客からの信頼性etcの獲得につながる。

2. Missionary Salespeople: Missionary Salespeopleは、企業の開発思想や商品の使われ方などの”布教”活動を行う営業人材。注文を取る役割はもたないが、客に企業や商品に興味をもたせる役割。製品に関する情報の普及に携わり、会社への好意度を高め、製品について客に学んでもらうことを支援する。

3. Order-Creators/Demand Creators: 客側が自らオーダーをする、デマンドを生み出す、といったことに特化した営業人材。主に購買の初期段階にいる見込み客に対して、どのようなモノやサービスを買えばいいかを具体化する支援を行う。 また、新しい市場・新しい商品の需要創出もこの役割。

4. Order-Getters/Front-line Salespeople: いわゆる”営業”としてイメージされるのはこれ。客を説得し、商品やサービスの購買を促し、オーダーを獲得する。積極的な営業で売上に貢献することを目指す。

5. Support Salespeople: プリセールス、アフターセールスなどの各フェイズでセールスを支援する。

5-a. Technical Salesperson: 高度な技術知識を持つ営業担当者。顧客企業の技術的コンサルティングを主とした技術営業。

5-b. Merchandisers: 小売店や卸売店での販売をサポートする人々。全国的な受注交渉を本社側で行うことがある一方、個々の店舗や流通のチェーンへの販売をサポート。商品のディスプレイのアドバイス、販売促進策の実施、在庫状況の確認、店長やオーナーとのコミュニケーションを重視する。

5-c. Trade Salesperson: 外交販売員。小売店でのディスプレイや棚の獲得など、買い場周辺でのセットアップや小売の手伝いに従事。

5-d. Solution Vendor/Service Salespeople: Solution Vendor: は、顧客の問題を解決することを得意とする営業人材。多くの場合、自社の製品やサービスのシステムを用いて解決する方法を提示する(=ソリューション営業)。Service Salespeopleは、販売した後の顧客対応。


 これらの類型はメンタルモデルではないので、すべての人が上記のようになる必要はありません。

 上記の記事を読まれ方には、ぜひ以下もお読みいただきたく思います。


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