見出し画像

"BtoBマーケティング"という言葉が,製造業や法人取引をしている事業者における”マーケティング”に対する考え方を狭めているのかもしれない #短文 #脳内メモ

 いま,"BtoBマーケティング"と言われてるものは,”生産財マーケティング"だとか,"産業財マーケティング","ビジネスマーケティング"といった言葉で言い換えられることがある。英語だと,"industrial marketing"や"business marketing"だ。

 で,"BtoBマーケティング"のコミュニティ,セミナー,あとはソーシャルメディアやnoteやその筋の人たちが話をしていることを聞くと,「それって,営業企画やセールスマーケティングの話であって,"BtoBマーケティング"の全体像を話してるわけじゃないよね???」とか,「それってマーケティングじゃなくって,”営業”の話してないかな?」って思うことがこの10年ぐらいずっとある。

 「"BtoBマーケティング"として話されてるもののほとんどが,営業まで(つまりクロージングまで)の取引支援のもの。つまり"セールスマーケティング"」

 この違和感の原因がずっとわからなかったんだけれども,さきほどふと気づきました↓

 最近いろんなところが,「御社のBtoBマーケティングのスコアはこんな感じです」という診断を提供していたりするんだけど,それらを眺めていても,「これは(BtoBマーケティングの一部分である)セールスマーケティングの話であって,企業の"BtoBマーケティング"がどれだけできているかのスコア付けをするには部分的な話じゃないかなあ」と思うものにしか出会わない。そしてこれらの企業・人々の書いているもの・しゃべっているものの中では,「BtoBマーケティング」という言葉は使われるものの,「産業財(生産財)マーケティング」や「ビジネスマーケティング」という言葉が出てくることはない。このことから考えるに,「BtoBマーケティング」がすなわち「セールスマーケティング」の文脈で語らがちなのは,「BtoBマーケティング」というものが主に「売り手」と「買い手」の”取引”に注目されて語られているからであって,プロダクトやチャネルの話,あるいは購買後の顧客との関係性の話などが抜け落ちているからだろう。

 例えば Kotler の Marketing Management の第七章 Analyzing Business Market では以下のような項目が並んでいるのだが,こういう話が上記にはない。

画像1


画像2

 例えば,"BtoB"におけるビジネスのほとんどは derived demand によるものだということを理解しておかなければ,マーケティングを実施する上での事業環境分析もできないし,Organizational Buying を理解しておかなければ B2Cにおける購買行動との違いもわからない。なので,本来的には"BtoBマーケティング"を実践するのであれば,これらを理解しておく必要があるように思うのだが,先述したように,きっと"産業財マーケティング"などの言葉と比べて,"BtoBマーケティング"という言葉が暗に示している,「"B"と"B"との"取引"」の箇所にしか注目されず,それによって,「BtoBマーケティング=ほぼセールスマーケティング」となっているのが,実務の現場の実情な気がしている。

 しかしながら,法人需要を対象としているマーケティング担当者なのであれば,「産業財マーケティング」,「インダストリアル・マーケティング」といった言葉で学ぶ必要は相当にあるだろう。なぜなら,ソリューションやモノが売れるという理由は,単に”営業と購買プロセスの最適化”だけに限らない部分があるからである。”ingredients branding"や"relationship marketing","service marketing"といった分野は,深く・広く考え,実践できる”BtoBマーケター"には必要だと思うのだが,「セールスマーケティング」の分野に特化した「BtoBマーケティング」「BtoBマーケター」のスコア付けが業界内で跋扈すると,それが標準だと考えられてしまい,残念な方向に進んでしまう気がしてならない。

 

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?