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医療機器・デジタル技術関連ニュースまとめ 2024#3(1/13〜1/19)

この1週間に弊社Facebookページ等で紹介した医療機器研究・産業、ロボット・AI等デジタル技術関連ニュースをまとめて紹介します。
※記事のリンクが切れている場合は記事名で検索していただくとヒットする場合があります。

#2 まで日付での分類をしていましたが、今週からは領域ごとに分類して紹介します。まとめ方はまだ試行錯誤で今後も変わっていくと思いますがご容赦ください。

今週の個人的注目トピックは

  • サスメドの株価大暴落
    1月15日の医療技術評価分科会にて医学的有効性が不十分のため今回の診療報酬改定の対象にならないとの資料が出てサスメドのIRプレスリリースの結果、株価は1月12日の終値1,382円から本日1月19日の終値702円と半値近くまで暴落しました。国民皆保険制度の中での新技術医療ベンチャーの厳しさを感じます。とはいえ診療報酬加算の道が完全に閉ざされたわけでもないと思いますので、引き続き応援したいところです。

  • 「ヘルスケア事業者のための生成AI活用ガイド」策定
    生成AIが医療現場でも医療機器開発でも活用されるようになってきました。今、医療機器開発の今後のトレンド調査のため色々文献を見ているのですが、EYのPulse of the Industry: medical technology report 2023やJST 研究開発戦略センター (CRDS)の調査報告書 「健康・医療トランスフォーメーション 科学技術・イノベーションの潮流 」(2003)でもGenerative AIや大規模言語モデルの応用について言及があります。

  • キヤノンとオリンパスが超音波内視鏡で協業
    オリンパスはアロカから超音波診断装置技術の供給を受けてたんですね。東芝と日立の医療部門がキヤノンと富士フィルムに移り、アロカが日立を経て内視鏡ベンダーの富士フィルムに入った結果、東芝系のキヤノンとの協業になるという合従連衡の変遷。
    さらに今年富士フイルムヘルスケアも再編で消えそう(本社と販売保守会社に分割吸収)です。ここ20年で信じられないほど大きく変わりました。


医療機器・新技術

・医療AI

人工知能によるコンピュータ検出支援を用いた大腸内視鏡検査の大腸がん検診における有効性を評価するアジア多施設共同臨床試験を開始|国立がん研究センター

アジアでのAI-CADeの有効性評価。

VUNO、『胸部CT AI』日本健康保険適用···「海外売上拡大期待↑」 | 亜洲日報

韓国VUNO社のMed®-LungCT。韓国発AI医療機器は現在日本でどのくらい承認・導入が進んでいるのでしょうか。

BioTrace – 肝腫瘍アブレーション時の超音波検査をAIで精密化 | Medical AI Times

AIによる画質向上技術はMRI誘導に対抗する超音波画像誘導のRFAやHIFUのさらなる後押しとなるでしょうか。

パートナーのアプリケーションをEIRLプラットフォームに搭載し医療機関に提供する「EIRL AI パートナープログラム」を開始 | エルピクセル

viewtfyと接続してAI診断結果を即座に高精細3D表示、とか?

眼科医療機器のニデックとオービスが提携、ベトナムでAI活用した眼のスクリーニング検査拡大へ | VIET JO

眼科のAI診断・スマホ診断、グローバルに広がっていますね。

結核患者の咳をAIが聞き分け、スマホ診断で新トレンド | MIT Technology Review

咳、声、呼吸音などを「音響バイオマーカー」として疾患のスクリーニングに活用する取り組みです。

【時事メディカル】AIでTAVI後の高リスク群が判明

クラスター解析により

「高齢で大動脈弁圧較差が高く左室肥大と関連しているクラスター1(311例)、左室駆出率が保持され、大動脈弁面積が大きく血圧が高いクラスター2(538例)、頻脈、低流量/低勾配の大動脈弁狭窄症、左心および右心機能障害を呈するクラスター3(243例)―に分類」

「クラスター1および2に対しクラスター3では心血管死と心血管イベントによる再入院の複合リスクが有意に高かった」

時事メディカル

との結果。論文は


日本デジタルヘルス・アライアンスがヘルスケア領域に特化した生成AI活用のガイドラインを策定

ヘルスケア事業者のための生成AI活用ガイド」が策定されました。

生成AIを活用したサービスを設計・開発・提供する際に留意すべき事項について、大きく

  1.  活用する基盤モデルの選定

  2. さまざまな場面での適切なデータの取り扱い

  3. アウトプットの信頼性確保や利用者への適切な説明

  4. ヘルスケア領域での規制面、

の4点について取りまとめられています。

【日本医療政策機構 調査報告】2023年 日本医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査

期待は大きいが、デジタル・ディバイトが新たなメディカル・ディバイドに繋がらないか注意が必要でしょうか。

画像診断AIの4つの“もどかしさ”:日経メディカル

精度、責任、運用・管理、ヒトの位置づけ。

AIは医療分野を「大きく変革する」と武田薬品CEO | ARAB NEWS Japan

「データは非常にデリケートな話題です。データ・プライバシーの概念は非常に重要です。ですから、透明性を確立する必要があります」

「多くの国では、所有権やデータについて患者に尋ねると、患者は常に自分がそのデータを所有していると感じています。実際には、多くの国ではそうではありません。データは他者が所有しているのです」

ARAB NEWS Japan

AIは医療にどのような影響をもたらすのか? | 東洋経済オンライン

富士フイルムの広告記事ですが、東大松尾豊教授との対談です。

「AIのプロジェクトがPoC(概念実証)で終わってしまうというのは、よくあります。業務やワークフローの全体像を理解したうえで本当に効率化するべき部分を効率化し、トータルとして時間や工数を削減するということができていないからです。」

東洋経済オンライン

目的へのフォーカスが曖昧だとPJが死ぬというのはAI事業以外でも典型的なPoC死因の一つでしょうか。

「ロボット手術にAIが搭載されることも予想されていますが、私はまずカーナビのような手術のナビゲーションが必要だと思っています。自動車はカーナビがあって、ようやく自動走行が実用化されつつありますが、手術に関してはカーナビに相当するものがありません。」

東洋経済オンライン

というのは誤解があり、手術用のカーナビはあるがまだレベルが低い(自動経路計算ができない)という状況と思います。


・SaMD

心臓リハビリ治療用アプリ等の開発を行う株式会社CaTeに出資 | 三菱UFJキャピタル株式会社

在宅での心臓リハビリ(運動療法・行動変容)を実現する心臓リハビリ治療用アプリの開発。在宅心臓リハビリテーションはリモハブなども取り組んでいますね。

「高血圧治療補助アプリ」登場から1年 見えてきた「アプリで治療する」患者像:日経メディカル

生活習慣に課題がある人、薬は飲みたくない人、健康意識が高く真面目な人。

ニュース - CureApp, Inc.: CureApp 高血圧症向け治療アプリ 全国47都道府県の医療機関にて導入

身近に広がるSaMD治療。

サスメド大幅続落、厚労省資料で不眠障害用アプリ「医学的有用性示されず」 | 個別株 - 株探ニュース

1月15日開催の薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会にて「今回の診療報酬改定では対応を行わない技術」に分類されたとのこと。https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS82385/3530b9a2/9a20/4d37/856a/74c52da9113e/140120240115515469.pdf

1/17 中医協の資料。 サスメドは41ページ。https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001191733.pdf

もう2日間で約半値まで落ちてます…
SaMD保険収載の厳しさ?まだ道が閉ざされたわけでは無いようですが。

スマホ利用検査で眼底疾患を早期発見(日本) | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

水野優先生(広島大学)のスマホ眼底カメラ。
OUIのSmart Eye Camera同様、個人的に眼科のデジタル医療のトレンドには大変興味と期待を持っています。


プログラムの医療機器該当性に関する解説資料についてのご意見募集のお願い 

https://www.jaame.or.jp/program/files/public-comment-request.pdf

期間は2024 年2 月5 日(月)まで。
慣れないと読むのに難儀するガイドラインや判断事例などを分かりやすくするために作成した解説資料・フォーマットについてのご意見募集です。

「どんなプログラムが医療機器に該当するのか・しないのか、という該当性判断のわかりやすい情報が求 められており、ガイドラインや判断事例などが示されていますが、医療機器の法規制に慣れない人にとっては、必ずし もわかりやすいものではありません。」

プログラムの医療機器該当性に関する解説資料についてのご意見募集のお願い 
https://www.jaame.or.jp/program/files/public-comment-request.pdf


・オンライン診療

水俣市とハート・オーガナイゼーションが高次医療機関とのオンライン・リアルタイム連携システム導入支援業務の委託契約を締結

国保水俣市立総合医療センターと熊本大学病院の遠隔連携診療を支援するシステムを導入。

歯科領域のデジタル化 遠隔医療、実用化に期待:歯の健康相談:福島民友新聞社

マネタイズの面で難しい新しいデジタル医療デバイスについては非医療機器としてのサービス展開のほか、混合診療が認められる歯科領域での活用も一つと思います。VRや遠隔診療で実施例も。


・遠隔手術

ソリトンシステムズ、モバイル通信で低遅延伝送実現 遠隔操縦に応用 | 日刊工業新聞 電子版

Saora × KDDI の遠隔手術にも。


・訓練

イービーエム、福島で大腸がん手術の訓練用器具を開発 - 日本経済新聞

初見で「素晴らしい出来だけど高そう…」と思ってたけどなんと20万!安い!
といって医師の個人的な訓練に使える価格ではないと思いますので、研究や大手医療機器メーカーでの開発・営業・訓練プラットフォームに活用されることが期待されます。KOTOBUKI Medicalもそう。
プレスリリースは
腹腔鏡下結腸右半切除術訓練シミュレータCOLOMASTERを新発売
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000135734.html


・新製品・開発

キヤノンとオリンパス、超音波内視鏡の生産・販売で協業…先進国高齢化で需要増 : 読売新聞オンライン

オリンパスとキヤノン、「昔はカメラ競合」の協業 | 東洋経済オンライン

キヤノンメディカルの超音波診断技術とオリンパスの内視鏡技術での協業。

アロカ(超音波技術)が日立を経て富士フイルム(内視鏡ベンダー)に吸収されたことに対して、競合からの装置供給を解消するための新たな枠組み。
オリンパスはアロカから超音波診断装置の供給受けてたんですね。

オリンパスのプレスリリースはこちら。

デジタルバイオマーカー開発のテックドクター、23年10月発売のFitbit Charge6と医療機器等のデータ比較(バリデーション)を実施

Fitbit Charge6のデータ精度は医療機器と同等。
性能を標榜していないし診療に使うわけではないからから問題ないんだろうけど、もはや未承認医療機器…?

AD新薬の開発続々、レケンビと異なる利点も  認知症学会・岩坪氏、ドナネマブやトロンチネマブなど | 日刊薬業

医療機器ではないですが関心あるところのAD薬が百花繚乱。期待は大きいけど日本の保険制度で維持できるんでしょうか。


・行政・規制

第1回 医療に関する広告のルールってどんなもの?| 医療維新 | m3 .com

オープンイノベーションでの医療機器開発でも、未承認医療機器の広告にならないような最低限の配慮は必要です。

規制改革推進に関する中間答申が公開!オンライン診療に関する議論状況(前編) | Digital Health Times

オンライン診療の受診可能な場所・医師非常駐診療所等の議論について。

ロボット支援下手術6件を保険適用へ、中医協全体で177件、先進医療は5件 医療維新 | m3. com

2024年度診療報酬でロボット支援下の弁置換術や肺切除術、3Dマンモグラフィなどを新たに保険適用へ―中医協総会(1)| GemMed

ロボットの6件は弁置換(2)、肺切除(2)、膣断端挙上、人工股関節置換。ロボットは予後のエビデンスが非劣性なだけでは適用難しいですが、医師の負担軽減・安全性向上の面の評価もしてほしいところと個人的には思います。

米国政府のAI駆動型保健医療DX推進策とDFFTの関係性:海外医療技術トレンド(103)(1/3 ページ) - MONOist

注目は「AI医療機器関連ガイダンスの作成作業を加速させるFDA」。
FY2024のCDRHガイダンス提案のAリストにArtificial Intelligence/Machine Learning (AI/ML)-Enabled Device Software関連。


・サプライチェーン、デバイスラグ・ロス

半年以上代替なく…先天性心疾患の子供の医療機器、入手困難に | 産経新聞

「子供の血管にも使えて成長に合わせサイズを拡大可能なタイプの製品」が販売終了。

オーファン医療機器の維持は特に規模の小さい企業にとってはかなり厳しい問題で、国内生産の確保のためには何らかの特別な支援が必要かもしれません。

富田氏らは平成26年から先天性心疾患への承認を目指し、米企業が開発したステントの国内治験を医師主導で開始。29年に治験を終えた。国内企業が近く厚生労働省に承認申請を行う見通しだ。

ただ承認審査や保険適用に向けた議論などには数カ月を要するとみられる。日本小児循環器学会と日本先天性心疾患インターベンション学会は厚労省に、審査の迅速化と早期承認を求めている。

産経新聞


CES2024

【CES2024】更年期やスマートリングなど女性ヘルステック製品|木村 恵 - フェムテックや健康経営の社会情勢やビジネスモデル|NewsPicks

話題のEvie Ringや更年期・子宮頸がんを対象としたヘルステックなど。

2024年のCESは「美」に焦点、57年続く「見本市」が持つ嗅覚と巻き込み力 | 日経クロステック

今後期待される領域として今回初日朝の基調講演に迎えられたロレアルの「美」の他、AgeTech、FoodTechなどを挙げています。いずれにせよデジタル技術とスタートアップの力は欠かせない印象を受けます。


学術・大学行政

(60)Japanese research is no longer world class — here’s why|野依センター長室から|特集・コラム|研究開発戦略センター(CRDS)

もはや他国から心配されるほど凋落の激しい日本の研究力・研究環境ですが、

「企業であれ、大学であれ、年配の指導者たちは衰退を傍観するだけ、あるいは不都合への言い逃れ、保身に終始するばかりで、V字型再生に向けリスクをとる決断をしたためしがない。明日に責任を持つべく宿命づけられている大学院生や30-40歳代の研究者、これまでアカデミアで分断されてきた女性たちは、この重ね重ねの失態をどう感じるであろうか。」

「科学界では謙譲は美德でありえず、沈黙も不要である。是非とも勇気を奮って「再生は自分たちに任せろ」と言って欲しい。」

研究開発戦略センター(CRDS)

がまさしくという感じです。
シニアに出来ることは責任を取ることと若者に自由を与えること。

昔、東京女子医科大学の笠貫宏学長(当時)が

「医療イノベーションに必要なのは、ベンチャーを応援することではなく、大企業を大人にすること」

というようなことを仰ってました。

シニアに出来ることは、若者にあれこれ口出しをする「応援」ではなく、シニアとしての矜持を見せること、「大人になること」です。


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