MEDIELITE FORUM 2024 "Design x Art x Innovation" 開催(2024.3.2)
千葉大で教員をしていた時代、研究室5周年を迎え卒業生も増えてきた頃から同門会(同窓会)を毎年3月に開催していました。
2020年に私が退職して暫く引っ込んでいた時代は中断していたのですが、昨年4年振りに同門会を復活。昔は現役生の研究発表と私のラボ近況報告を中心とした講演会を行っていたのを、ラボが無くなったので別の形のイベントとして企画をしてみました。
研究室がない=新入生がいない現状ではメンバーもこのままだと減る一方なので、研究室外の千葉大学医工学コース(旧メディカルシステムコース)卒業生・現役生にも声をかけています。昨年は現役の学生さんも参加してくれました。
今年はテーマを
として、この3つの領域の一線でご活躍の親しい方々にご講演をいただきました。
ではFORUMの内容のご報告を。
Design : 高橋 マナブ 先生
高橋さんは工業デザイナーとして様々なプロダクトのデザインに関わるだけでなく、色々なイベント・プロジェクトなどを通じた教育やソーシャルアクションにも広く携わるデザイン活動をされています。
マナブデザイン社のWorksページでもプロダクトの他に様々なワークショップ活動が紹介されています。TEDx Kioichoの運営などにも関わられています。
このWorksのちょうどど真ん中あたりにありますが、実は私の旧研究室 先端治療工学研究室 LITE (Laboratory of Innovative Therapeutic Engineering) のロゴも高橋さんにお願いした作品です。今でも高橋さんのportofolioに入れていただいています。
ご講演ではデザイン思考から始まって、キャリア形成に役立つと思われるプランド・ハップンスタンス、「つながる・はじまる」、越境力などのキーワードを、これまでのキャリア・ご経験などの実例を交えて解説していただきました。このフォーラム・同門会開催の思いでもある人と人とのつながり、出会い、偶然を産み出す積極的な行動などに繋がるお話に非常に感銘を受けました。
Art : 中路 景暁 先生
中路さんは私がPIとして千葉大に研究室を持って最初に配属された学生さんでした。千葉大での修士課程修了後はオリンパスメディカルシステムズに就職されたのですが、数年後のROBOMECHで偶然再会した際に「実はアーティスト活動するために会社辞めてバイトしながら夢を追いかけてる」と言われて大変驚いた記憶があります。
退職後に岐阜にあるIAMAS(情報科学芸術大学院大学)に進学・修了され、現在は自身のアート作品に取り組みつつ、他のアーティストの作品のエンジニアリング部分のサポート・製作にも携わっておられます。
NHK EテレのEテレ2355の1 minute galleryにも取り上げられた、ベルトコンベアを用いたアート作品”Sequences/Consequences”は何度見ても面白いです。
"Roll Role"は第25回文化庁メディア芸術祭 アート部門 審査委員推薦作品。
共作の"四角が行く"はなんと第25回文化庁メディア芸術祭 アート部門 優秀賞を受賞。
他のアーティスト作品へのエンジニアリング協力としてはnomenaの作品など。(四角が行くなどの共作も)
"時計の捨象"はSEIKOのプロモーション。
この製作では駆動部の防水加工に会社員時代の泌尿器内視鏡開発経験が生きたとか。塞翁が馬ですね。
職業アーティストとしてキャリアをたてていくことの苦労などもお話しいただきましたが、同じくエンジニアリングをバックグラウンドとする人間として中路さんの作品はどれもとても興味深く、面白く、興奮させられるもので、興奮したままあっという間に公演終演という感じ。今後の制作活動にも非常に期待しているところです。
今回講演内でのご紹介は無かった"Cascade"も僕が好きな作品です。
Sequences/Consequencesにも通じる、人間と機械の関わりの現在を考えるパフォーマンス作品で、大学時代ジャグリング部で活動していた中路さんのバックグラウンドも感じさせます。
Innovation : 片桐 大輔 先生
千葉大在職時から親しくさせていただいている片桐先生は、薬学部で博士学位取得後、研究者、NEDOフェロー(産学連携支援)、大学発ベンチャー起業(その後売却)、ベンチャーキャピタリスト、産学連携部門の教授と、お若いながら大学の技術を社会実装する過程のほぼ全てを経験しているという稀有な人材です。現在は特に大学発スタートアップの支援に注力されており、千葉大スタートアップ・ラボを主宰されておられます。
昨年の折田純久先生(フロンティア医工学センター/医学研究院整形外科学 教授)と同じく、うちの元学生さんの千葉大の先輩枠です。
ちなみに片桐先生が薬学部の学生時代、薬学部はまだ亥鼻キャンパスではなく西千葉キャンパス。現在のフロンティア医工学センターA・B棟があるエリアがまさに旧薬学部エリアであり、うちの元学生さんにとってはまったく同じ学舎で学んだ大先輩でもあります。
※なお折田純久先生の現在の研究室の一部はかつて私の研究室だった部屋でもあります。
片桐先生からは、現在政府からも巨額の資金投資が計画されているイノベーション創出について、「そもそもイノベーションって何?」「なぜ大学にイノベーション創出の期待がされているの?」というところを歴史を含め丁寧かつわかりやすく解説していただきました。
なお不詳私、この2月から片桐先生の所属されている千葉大学 学術研究・イノベーション推進機構(IMO)のビジネス&テクノロジーアドバイザーを拝命し、片桐先生のもとで千葉大学発スタートアップ創出のお手伝いをさせていただくことになりました。
大学が創出した新しい知識を起点としたイノベーションの実現に少しでも貢献できるようにがんばります。
ラボと私の近況報告
もうラボ無くなって4年立つので研究報告は無いはずですが、受賞報告など。協力教員だった川村和也先生を含め日本コンピュータ外科学会で富士フィルムヘルスケア賞3つに論文賞2つ。
個人的には研究外でも受賞しています。兼業農家見習いです。
最近は起業した元研究者としてのご依頼も増えてきました。
ついでに共同研究者の大村和弘先生(東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科)の国際医療支援活動のドキュメンタリー映画 "Dr.Bala"がアマプラで配信開始となったことをご報告。(私は個人的にスポンサー協力しています)
素晴らしい映画ですので是非ご覧ください。
終わりに
今年も充実したイベントに出来たと思います。
テーマとしたDesign x Art x Innovationの知識・体験は、これからのキャリアを考える上でも何かしらの刺激・きっかけ・つながり・はじまりへと通じるものと信じています。
来年以降はどうするかまだ考えていない(研究室無いと毎年は頻度高すぎるので数年開けるかもしれない)ですが、ここ2年私のオフィス近くの川崎市内で実施したので、次回は西千葉にしようかと。楽しみです。