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障害のある友人の代わりに本を出版する、は、単なるエゴなのかもしれないけれど。


大好きなヴェルディ観戦。ともっちさんこと山下智子さん。

歌舞伎研究者を夢見て大学院に進学したはずが、博士課程1年目、創刊されたばかりのダンス雑誌に心奪われて、編集部に出入りするうちに正式に働くことになったのはもう20年も前のこと。
ダンス雑誌の編集者からスタートしたはずなのに、縁あったがん患者・家族向けのサイトの編集者を経て、今は医療福祉ライター。
編集・ライターという意味ではずっと変わっていないのだけれど、飽き性の私がもう10年以上なんだかんだ医療福祉の世界に携わっているのは、生老病死という大き過ぎるテーマは飽きようがないからだろうと思う。

自ら企画を立てて取材をした人や団体とは一回限りになることはなく、ずっとつながり続けてしまうことがほとんどなのだけれど(中には幼い子どもたちを連れて住み込み取材した老人ホームや介護事業所もある)、その中でも強いつながりを感じているのが星つむぎの村だ。重度の障害や病気で長期入院を余儀なくされるなどの事情で、本物の星空を見上げることができない人たちにプラネタリウムを届ける、「病院がプラネタリウム」の取材をきっかけに出会った。

全国にいる村民(とコミュニティメンバーを呼ぶ)を介して、分身ロボットOriHimeで全国を旅しようという星つむぎの村のプロジェクトで出会ったのがともっちさんこと山下智子だ。

OriHimeで星つむぎの村の活動に参加


ともっちさんは、生まれつき脳性まひという障害がある。脳性まひと言っても人それぞれ障害のあり方は異なる。
ともっちさんは、知的にはなんら障害はないが、身体は脳の指令通りには思うように動かせず、移動には車椅子が必要で、24時間365日全介助を必要とする。

星つむぎの村のOriHimeプロジェクトを通じて、ともっちさんと急速に距離を縮めることになる。

私たちが一緒にやったことの一つは、子どもたちの通う小学校の3年生を対象としたOriHimeとZoomを使った授業。授業後のアンケートには「大人になったら、ともっちさんとビールが飲みたいです」「僕もゲームが大好きなので、ともっちさんと対戦したいです」といった言葉たちがあふれていて、しめしめ、と一人こころの中で静かにガッツポーズしちゃいましたよね。
それにしても、この企画を相談した1週間後には授業を実現してくれた、即断即決の校長先生、サポートしてくれた担任始め先生方には感謝しかない。

自宅からOriHimeを操作中のともっちさん

二つ目は、福岡天神散策。ともっちさんは幼少期を福岡で過ごしたこともあり、彼女の記憶にある福岡の街並みをOriHimeで散策し、通っていた障害者施設にもご挨拶に行った。ともっちさんを知る当時の介護者はもう誰もいなかったけれど、4歳頃の記憶を鮮明に覚えている彼女の記憶力にも驚いた。

が、この日のメイントピックは、OriHimeママの誕生につながったことだろう。天神散策の流れから、福岡は中洲で「役に立たなくてよい場所」を謳って、フィッシュ明子さんが提供する昼スナに顔を出し、OriHimeでともっちさんと上記の授業の打ち合わせをしたのはもちろん狙ってのこと(笑)

予想を遥かに上回って、その場でともっちさんがOriHimeで昼スナのママをやることになったのにはこれまた驚い…いや、驚かない。

だって、ともっちさんでフィッシュママだから(笑)福岡にお越しの際は、昼スナ開催日に合わせて来福をオススメしたい。役に立たんでいいと言いながら、人の役に立つことしかしてないフィッシュママが出迎えてくれる。

フィッシュママとともっちさんのOriHimeママ

そんなこんなで、1ヶ月後には昼スナでOriHimeを通じてスナックママをやっているともっちさんの姿を目にすることになり、そのさらに半年後にはカクテルを調合する器材を作ってもらい、東京自宅のPCから操作し、自らカクテルをつくるともっちさんの姿を目にすることになる。

EyeMoTを利用した、遠隔カクテルメーカー

私のまわりには「これやりたい」から「もうやっている」までの実現化能力が高い人間で割とあふれているのだけれども、それにしてもともっちさんの実現化能力とスピードときたら。私は私をワクワクさせてくれる人間たちにとびっきり弱い。あまりにもともっちさんが面白いので、東京での仕事ついでにともっちさんの家へ遊びに行き、一緒にビールを飲んでいたらば、出てくる出てくる痛快エピソード。

障害問わず楽しめる競技ボッチャの初代チャンピオン(ロサンゼルスパラリンピックで金メダル獲得目指して邁進中)、水泳も世界大会で金メダルを獲得したことも。

そもそも自立生活(家族等に頼らず、介助者のサポートで自分で生活する)を始めたきっかけは、大好きなJリーグヴェルディの試合を親にも誰にも邪魔されずに思う存分観るため、大好きなビールを思う存分飲むため。

「障害があっても、サッカーも観るし、ビールも飲む。みんなと同じ」

なんて言葉も、ともっちさんの口から発されるからこそ、ちょっとひねくれて斜に構えたところのある私のこころにすら響く。

ビール大好き。

ほろ酔い気味でおしゃべりを楽しんでいる中で、飛び出したのがこのひと言。

「ライターなんだから私の本書いて出版して。
私は仕事をするわけにはいかないから、みとちゃんが書いて」

頼まれたら基本NOとは言わない(嘘です、NOと言うときは言う)ことで知られる私。関西の大学に進学した高校時代の友人が都内の大学へ進学した私を富士登山やモンゴル旅行に誘ってくるので「なぜわざわざ遠くに住む私を誘う?」と聞いたら、「他の人が速攻断ってくることでも断らないから」と言われて、なるほどと納得した。おかげで“なんにもない”ってことを味わいに行くモンゴルの旅の醍醐味を知れたし、富士山頂で朝日も拝めた。

ともっちさんの本を書いて出版する。

これって間違いなく、おもしろそう×断らない、案件だよね?
断る理由なんてある?
深く考えるまでもなく、「わかった!ともっちさんのことを書こう!
本を出そう!」と答えてしまっていたのは、酔っていたからでは決してない(多分)。

が、しかし、

「今年、11月2日で自立生活25周年なんだよね。で、私がずっと追いかけていた元ヴェルディの一樹(平本一樹)の背番号が25番。
26ではダメで、25でないと意味がないんだよね」

って…。

聞いてない。
いや、聞いた。

えぇっと、つまり2024年11月2日に出版したいってことかな?

というわけで、出版日だけ決まったけれども、あとは何も決まっていない2024年2月25日。

切羽詰まっていた時に目に飛び込んできた長倉顕太さんと原田翔太さんの出版塾TACに勢いで飛び込んでしまった以外は、まだ何も始まってすらいないけれど(出版スケジュール的にはほぼ絶望的であることは百も承知で)、
まずは、noteで発信することから。

さぁて、今日はヴェルディ戦の開幕の日
(Jリーグの開幕は23日。
あくまでヴェルディであることと25であることがポイント)。

ともっちさんと私の、本を出版というチャレンジも開幕です。


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