【町田志樹先生:インタビュー第1回】「信頼」の見抜き方とSNSの危険性
「質」は「量」の延長線上に
——先生は,これまでどのように医療関連の情報を得てこられたのでしょうか。
町田:
信頼性が高い書籍と論文を交互に読んできました。
つまり,「traditional」と「最新」の組み合わせですね。
研究が進んで系統立てられたものと,新しい知見のいずれも吸収するようにしていました。
ただどうやって信頼できるかどうかを見抜くのかというと,経験と言わざるをえません。
若い頃は,医療情報のなかに疑わしいものがあるということさえもわかりませんでした。
私は当時,やみくもに量をこなして勉強していましたが,そうしているうちに,だんだんと信頼できるものとそうでないものがわかってきた気がします。
誰が発信しているのか,何を根拠にしているのか。
タイトルやテーマがキャッチーでもだめです。
量をこなしているうちに,見る目が養われてくるのでしょう。
「質」は「量」の延長線上にありますよ。
また私は医学史を学んでいたので,どういう考え方がどこから生まれたのかある程度把握していました。
それもあって,信頼性が高いものがなんとなくわかったのかもしれません。
——現代における情報選定の難しさとはどのようなものでしょうか。
町田:
現代には多くの媒体が存在し,情報は溢れ,本物の情報も偽物の情報も玉石混交です。
当然,昔よりも選定の難易度は増しています。
なかには若者の不安を過剰に煽り,その不安を利用してお金を稼ぐ人々もいます。
正しい情報を見抜き,不安に心を揺さぶられないことは,若いうちに身に付けておきたいスキルです。
ルサンチマンのるつぼ
——特に気を付けなければいけない媒体はありますか。
町田:
X(旧Twitter)には不安を煽る人々が多いように思えます。
特に声高に過剰な表現を用いて若者の不安を煽るものには,素性がよくわからない匿名のアカウントが多い気がします。
不安を煽ったうえでサブスクリプションに移行させたり,グループに入会させて会費を徴収するという事例もなかにはあります。
匿名だからこそ,そういう行為ができるのではないかと思います。
私もXのアカウントをもっていますが,個人的思想に対して猛烈に石を投げる匿名のアカウントを多くみかけます。
だから私は国試情報など,個人の考え方が表れないようなことをつぶやくようにしています。
Xとは一部,現実世界でストレスを溜めている者達が集う場所,ルサンチマンのるつぼといえるかもしれません。
妬み嫉みの温床と感じることがあります。
——ただ,SNS上で信頼できるアカウントもあることは事実ですよね。
町田:
もちろんあります。
原則として実名であれば信頼性が高いことが多いと考えています。
私が信頼を置いているXユーザーとしては,唐澤幹男先生(Total Body Make代表取締役),河合眞哉先生(Body Pioneer株式会社 代表取締役),張本浩平先生(株式会社gene代表),輪違弘樹先生(エバーウォーク・メディカルエージェンシー 代表取締役)などがいらっしゃいます。
すべて実業家を挙げましたが,これには理由があります。
私は以前に実業家の方々と医学以外の対話をした際に,ほぼ話題についていけなかった経験があります。
そのときに社会人として必要な知識が欠如していた自分を恥ずかしく思い,医療のことばかりではなく,広く世の中についても学習しようと心に決めました。
これはきっと,かつての私だけではありません。
「医療人」ではあるが「社会人」ではない人々が,医療業界には多いのではないでしょうか。
(第2回につづく)
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