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受験勉強は「急がば回れ」である----本当の効率とは何か (その1)

 よく、受験勉強のやり方などを説いた本に「効率のいい勉強をしなさい」みたいなことが書いてあります。

 むろん、効率は大事でしょう。無駄な努力をしても仕方がない。そのことは私も否定しません。でも、「効率」というのは、あまり表面的に捉えない方がいい。それは「急がば回れ」ということがあるからです。だから、たまに「出ることだけ教えて下さい」なんてことを言う人がいるけど、「出るところだけ一生懸命覚える」なんていうやり方は、実はすごく効率が悪いのかも知れない。いや、知れない、というより、悪いんです。そういうのは応急処置でしかないから。

 つまり、一見遠回りのように見えていることが、長い目で見ると、実はそっちの方が近い、効率がいいということがあります。というのは、入試に直接出題されるわけではないが、入試に役立つ知識というものがあって、そういうことを知っているかどうかが結果を左右するからなんですね。

 一般に、勉強を早めに始めた方がいい、というのは、そういう意味もあります。「急がば回れ」というのは、回る時間があるからこそ言えるわけですから。「長い目で見る」だけの余裕がないと、表面的な効率でやっていくしかなくなります。

 しかし、繰り返しになりますが、そういういわゆる「効率的な勉強法」というのが本当に効率的かどうかというのは大いに疑わしいのです。反対に、試行錯誤とか、一見非効率なことが、後で振り返って見ると実は大事だった、ということが受験勉強ではよくあります。

 受験勉強というのは、中間テストのための勉強みたいに、出るとこだけ詰め込んで、というわけにはいかないものです。変な例えかも知れませんが、「氷山の一角」というのがあるでしょう、ふつう悪い意味に使いますけれど。でもある意味で、大学入試も似たようなところがあって、実際に出題されている内容は、ある意味で氷山の一角みたいなものだと思います。

 何が言いたいかというと、大学が本当に知りたいのは、テストの結果そのものというより、その下に隠れて表面には現われない、あなたの本当の学力なのです。大学は、表面に現われた氷山のどこを叩けば、つまりどんな問題を出せば、その下に隠れた学力の全容を推測できるだろうかと考えながら問題を作っているわけで、単にテストの点が高い、受験テクニックに長けた学生が欲しいわけでも、出題形式に習熟した学生を入学させたいわけでもないはずでしょう。

 あるいは、別の例えで言うと、試験というのは健康診断みたいなものです。健康診断の結果がよければ、それは喜ばしいことだけれども、本当に大事なことは、あなたが健康だということです。だから実際にはそんなに健康でないのに、どうやったら健康診断のときに健康に見せかけられるかというテクニックなんか教わっても仕方がない。そんなことを教わるよりも本当に健康になる方法を教わるべきなんです。勉強だって同じことです。

 だから受験勉強に際して、傾向分析といった、どちらかと言えば表面的なことは、大事でないとは言いませんが(*)、そういうことに終始するのは本末転倒なのです。受験生のみなさんは、水面上に現われた氷山の形を整えることよりも、水面下にあって目には見えない学力を充実させなくてはなりません。すなわち健康診断の結果をごまかす方法よりも、本当に健康になる方法を学ぶのです。
 (*) 志望校の過去問などの傾向分析は、目標設定をしたり、身に付けた学力を十分に発揮できるよう対策をとったりするために有効であることは間違いありません。

 みんな気が付いていないかも知れませんが、勉強するということは、脳に、目に見えない変化を与えることです。そして学力が付くということは、脳の中に、それまで存在していなかった回路ができるということでしょう。脳だって身体の一部なんだから、変化するには多少の時間がかかるのは当たり前です。

 だから、すぐに成績が伸びないからといって焦ってはいけません。「急がば回れ」を肝に銘じて、じっくり取り組んでいきましょう。

 参考資料
 『初めての大学受験英文法 ”超”入門講義 医歯薬系・空所選択問題を中心に: 志望校合格のために 予備校講師が本当に伝えたいこと』
 例題は少ないですが、一問一問をあり得ないほどじっくり解説した講義です。「医歯薬系」とありますが、英語が苦手の人なら誰でも歓迎です。

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