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地域での人のつながりを処方する【社会的処方】

みなさん、こんにちは。
前回の記事で少し書いたんですが、この4月より「社会的処方」の活動を
大学の有志で始めることになりました。
(COVID-19の関係で本格始動は遅くなりそうですが…)

この、「社会的処方」という言葉は私自身もつい最近まで知らずにいたのですが、今回紹介する本、

『社会的処方』

を読んで自分がやりたいことにもかなり関わってくると知り、まずは知っておくべき概念だと思ったのでシェアすることにしました。


さっそくなんですが、みなさんは

「孤立」「孤独」

の違いが分かりますか?ちょっと立ち止まって考えてみてください。

先日このプロジェクトを先導してくれている友人からこの質問をされたのですが、
今までこの違いについて考えたことがなかったのではっきりとした答えは出ませんでした。


「孤立」と「孤独」は日常的には明確に区別されずに使用されていますが、研究上ではきちんと区別されています。

社会的孤立(social isolation):家族やコミュニティとほとんど接点がないこと。客観的な状態を指すものとされる。
孤独(Ioneliness):主観的状態を表し、仲間づきあいの欠如あるいは喪失による好ましからざる感じを持つこと。

このうち、今現在問題になっているのは前者「社会的孤立」です。

地方でこのような状況に陥っている人がいるのは容易に想像がつきます。
しかし、社会的孤立は地方だけの問題ではありません。
都心部のマンションに住んでいて物理的に人が近くにいる状態でも地域の人とのつながりがなければ社会的には孤立しています。


この「社会的孤立=つながりのないこと」の何が問題かというと、
人とのつながりがないことが寿命を縮めることになる、ということです。

その理由の一つに、持続可能な地域のつくり方でも少し紹介しましたが、孤独死を増やすことが挙げられます。

しかし、それだけではなく、この本で紹介されている研究の中に面白いもの
がありました。

日本のある地域の高齢者たちが「運動サークルに所属しているかどうか」、また「実際に運動しているかどうか」という点に注目して比較してみたところ、ジムでひとりで黙々とトレーニングしている高齢者よりも体操サークルに所属しても体操せずに喋ってばかりいる高齢者の方の方が4年後の身体機能は高かったのです。

このような結果が出ているなか、日本は社会参加の頻度や人との付き合いが先進諸国の中でも低いと指摘されており、この状況が続けば社会的孤立は国内でも大きな問題となると言われています。


医療費が国内の財政を圧迫している現在、病気にならないように働きかける、予防へのアプローチは重要だと私自身も考えており、教育や社会のつながりを作るような場を作りたいと思っています。
その点でも社会的孤立は解決すべき問題です。


この社会的孤立の問題に最も早く警鐘を鳴らし、国主導で対策がなされているのがイギリスです。

イギリスでは国家的な社会的孤立/孤独の調査の結果により、2018年1月に孤独に関する諸問題を取り扱うために孤独担当大臣のポストを新設し、そこで、社会的孤立を解決する方法の1つの方法として、社会的処方(social prescribing)が注目されているのです。

社会的処方とは、患者の非医療的ニーズに目を向け、地域における多様な活動や文化サークルなどとマッチングさせることにより、患者が自律的に生きていけるように支援するとともに、ケアの持続性を高める仕組みのことを指します。


社会的処方の目的は人々が健康に過ごすことを助けることで、人々が健康に過ごすために必要な5つの方法が本書で述べられており、以下のようになっています。

・Give:人から施されるだけではなく、自らが支援する側にも立てる
・Connect:ほかの人たちとつながることができる
・Keep learning:学び続けるものを持っている
・Be active:身体的・精神的に活動的である
・Take notice:周囲で起きていることに注目している

つまり、社会的処方は人をWHOで定義しているような文字通りの「健康」にすることを目的にするのではないのです。

この本で述べられている健康とは社会的、身体的、感情的問題に直面したときに、適応し自ら管理する能力があること(ポジティヴヘルス)と定義され、
つまり、身体的・精神的に完全な状態ではなくても、それに対応しながら、自分の長所を生かしてうまく生きていくということなのです。

実際にイギリスの現場ではリンクワーカーといって医療者とコミュニティをつなぐ資格を持った人たちがいて、社会的処方を進める役割を担っています。

このイギリスでの取り組みは日本ではまだ国主導で行われている訳ではありませんが、日本でも「リンクワーカー」の役割を果たしてくれている人が意外と身近にいるかもしれません。

そこで、リンクワーカーという人のイメージを膨らませるためにもここで一例を紹介します。

例えば、身近なカフェ。
Aさんが健康に関する悩みをオーナーと話していると、オーナーさんがよくこのお店に来ていて、今抱えている問題に関する活動をしている医療者Bさんを紹介してくれた。

これもAさんと医療者Bさんをつないだので、カフェのオーナーさんはリンクワーカーの役割を担ったことになります。


1つのコミュニティの中でつながりが生まれるような場がそこら中に出来たらすごく素敵な世の中だと思います。

4月から我々が始める「社会的処方」も地域コミュニティのなかでたくさんのつながりが生まれるような場を作ることが出来ればいいな、と考えています。

この「社会的処方」という本の中には全国で行われている社会的処方がたくさん載っていて、新しい発見もたくさんあったので興味がある方は是非読んでみてください!

それでは。

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