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10人インタビュー企画 ⑤佐藤佑介さん~『静脈産業』を盛り上げ、地方創生の新しいロールモデルを作る~

秋田マテリアル株式会社 代表取締役 佐藤佑介(さとうゆうすけ)さん

 にかほ市で注目を浴び始めている企業『秋田マテリアル』の社長である佐藤佑介さん。赤字続きの会社に入社後、その行動力から黒字に転換させました。その後もカリスマ性を発揮し続け、どんどん会社の規模を拡大させています。そんな佐藤社長がどんな半生を過ごし、今後にどのような展望を持っているのか、深掘りしていきたいと思います。

メディアラボによる「10人インタビュー企画」
〜地方で働く・活動する人々の想いや理由を探る〜
 都心では、地方で働くことの良さを知る機会が少ない。でも、「かっこいい」「おもしろい」取り組みは、場所を問わず人を巻き込める魅力がある。
商業施設の少なさや交通の便が悪いことなどを上回る、地方ならではの魅力とは一体何なのか?メディアラボメンバーが、にかほ市で活躍する10人のインタビューを通して探り、深堀り、記事で伝えるインタビュー企画です。

Q: どんな学生時代でしたか?

何も考えていなかった学生時代

 地元の工業高校に進学したのですが、つまらなすぎました。一応、部活はサッカーをしていたのですが、部活をしたら疲れてしまい、授業中寝るのは当たり前。体育ですら寝ていました。こんな感じで、何も考えずに過ごしていた高校生活だったと思います。高校卒業後は、地元の製造業に就職しました。


Q: どのような経緯で秋田マテリアルで働くことになったのですか?

未来ある仕事への責任感

 地元の製造業に就職したのですが、ずっと屋内で働くというのに退屈さを感じて、10か月で辞めました。その次に建設業に転職しました。そこも政権交代の影響で打撃を受けてしまったため、秋田マテリアルに勤めていた母に相談したところ、未来のある仕事だと言われたことをきっかけに、秋田マテリアルに入社を決めました。
 私が入社した当時、秋田マテリアルの業績は赤字続きでした。社員も5人しかおらず、みな60歳を超えた女性でした。その中に当時25歳だった私が入ったわけです。
 今まで何も考えないまま生きていましたが、秋田マテリアル入社後は、自分が頑張らなければ会社が潰れてしまうという責任を感じました。さらに、入社した時期に結婚や長女の誕生が重なり、家族を守らなきゃいけないという責任感も生まれたことによって、意識が変わりました。その後、飛び込み営業などのがむしゃらな努力によって、黒字に持っていくことに成功しました。とにかく死ぬ気で仕事をしたのを覚えています。



Q: お仕事の内容、やりがい・苦労を教えてください

『静脈産業』を魅力あるものへ

 秋田マテリアルの主力事業は、資源のリサイクルや産業廃棄物処理を中心とする「環境事業」です。このような産業は『静脈産業』と呼ばれます。産業を体の動脈と静脈に例えて、目的を達成する産業(モノづくりなど)を動脈産業と呼び、その目的を達成して必要なくなったものを資源やまた利用できるように戻す産業(リサイクルなど)を静脈産業といいます。環境意識の高まる昨今、この静脈産業に目が向けられてきていると思います。そんな静脈産業を自分たちが支えているという点にやりがいを感じます。しかし、現状は、動脈産業に対して静脈産業が追い付いていないという状況で、環境破壊が進んでいってしまっています。この現状を変え、静脈産業が動脈産業に追いつくくらい魅力的なものにしていく必要があります。そのためには、優秀な人材が静脈産業に来てくれるようにしなくてはいけないと考え、やれることを日々模索しています。
 会社が成長していくにつれて、必要となる人材の多様性も増していきます。会社規模が小さい頃は、小規模ながらも猫の手も借りたいような人手不足の状態で、来てくれた方にどんどん仕事をこなしてもらっていました。しかし、会社が大きくなり、組織化していく中で、マネジメントの重要性も増していきます。会社としてはマネジメントができる人材を育成したり、経験のある方を採用したりと、工夫を施しています。会社を成長させていくための組織づくりと人材補完が、常に挑戦しているポイントとも言えるかもしれません。

Q: 今後の展望を教えてください

地方創生の新しいロールモデルを秋田で

 これから、都市への一極集中の時代が終わるにつれて、地方のあり方が見直されていくと思っています。自己実現をすることが幸福であると考えられている現代で、それが実現できるのが地方であると考えています。現状秋田県は、日本全国で人口減少率ワースト1位・少子高齢化率ワースト1位・死亡率ワースト1位・出生率ワースト1位・幸福度ワースト1位と、ボロボロな状態です。つまり世界的に見ても、課題の先進度が先をいっている地域であると思うのです。そんな現状から、地方に足りないものを産業として構築して、秋田県でその改革を達成することによって、地方創生の新しいロールモデルを作っていこうと、現在考えて動いています。世界から真似されるようなロールモデルを作っていきたいです。そのロールモデル構築の第一歩として、わが社の主力である静脈産業をさらに発展させて行けたらと思います。
 また、嬉しいことに、秋田マテリアルを継ぎたいという社員が現れたので、近々、代表取締役の席を譲ろうと考えています。そして私は、これまでも取り組んできたドローン事業の拡大に尽力すべく、新しい会社を立ち上げます。(2023年3月1日に設立予定)ドローン事業も、少子高齢化が進み、人手不足になっていくなかで、今後地方の発展に必要となってくる産業です。このように、地方創生に必要な事業をどんどん作り、新たな経営者の育成にも取り組みつつ、最終的にはホールディングス化へと進めていきます。会社の役割を拡張し、大きな夢に向かっていけたらと思っています。



Q: 読者へのメッセージ

 「人」という部分が一番のにかほの魅力であると思っています。好きの反対は無関心と言われますが、にかほの人たちは人に関心がありすぎるのでは?、と時々思うほどです。それに煩わしさを感じることもたまにありますが、その根底には愛があるのだなと思いますね。私の実家が農家だったのですが、祖父が亡くなり、私が何もわからない状態から農業をやらなくてはいけなくなった時に、周りに住んでいる方々が、気さくに農作業のやり方を教えてくれました。そんな経験から、にかほの人たちは愛があり、とても温かい環境にあると感じました。
 秋田は、自然豊かで、食べ物も美味しいし、人も温かい、良いところです。そんな素晴らしい秋田県なのに、様々な指標でワースト1位という現状なので、一緒にそれを変革していきましょう。




インタビューしてみた感想

 社長という立場ながら、とても親しみやすく、話しやすい方だなという印象でした。こんな方が上司だったらとても働きやすいだろうと思いました。そして、大きな夢を掲げて、実際に行動に移し、様々な事業を拡大していって実現に向かっているというその行動力とバイタリティを、私も見習っていきたいと感じるようなインタビューでした。秋田マテリアルはどんどん成長していく、将来がとても楽しみな会社なので、今後もその動向を追って行きたいと思います。

執筆者:メディアラボインターン 長山想大

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