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10人インタビュー企画 ⑩渡邊強~まだ誰もやっていない生産方法で自ら経済を生み出す~

和牛繁殖農家 渡邊強(わたなべつよし)さん

鳥海山の麓にある“上の山放牧場”で放牧をし、全国で1%未満しか流通していない黒毛和牛の「放牧経産牛」を販売している渡邊さん。最近では放牧経産牛を使ったディナーイベント【響命】も開催していました。そんな渡邊さんが24歳という若さにして、どうして家業を継ぎ、ここまで精力的に活動できているのか、きっかけや経緯が気になったため、インタビューさせていただきました。

放牧経産牛について詳しくご覧になりたい方はこちらの記事へ

メディアラボによる「10人インタビュー企画」
〜地方で働く・活動する人々の想いや理由を探る〜
都心では、地方で働くことの良さを知る機会が少ない。でも、「かっこいい」「おもしろい」取り組みは、場所を問わず人を巻き込める魅力がある。
商業施設の少なさや交通の便が悪いことなどを上回る、地方ならではの魅力とは一体何なのか?メディアラボメンバーが、にかほ市で活躍する10人のインタビューを通して探り、深堀り、記事で伝えるインタビュー企画です。

Q: どんな学生時代でしたか?

まわりを見返すために部活動に打ち込む日々

近くの高校で唯一農業系列のある高校に進学しました。入学後は体育の先生に勧められて、軽い気持ちで強豪である弓道部に入ることにしました。しかし、新入部員の中では一番を争うほど下手だったので、朝から夜まで授業以外はひたすら弓道に打ち込みました。すると2年生になってからはだんだんと技術を上げて、徐々に試合に出られるようになりました。最終的に3年生でインターハイ出場を果たし、国体選手にもなることができました。インターハイでは決勝まで進み、その中でも的にすべて当てた選手は私を含め全国で5人しかいなかったので、自信になりました!

Q: 家業を継ぐことに決めた理由やきっかけ

収入構造は自ら生み出すもの

中学3年生のときに、岩手県で酪農を営んでいる方を訪ねる機会がありました。365日牛を山に放して、ストレスのない牛のミルクを自社で加工し、販売する「6次産業化」に取り組んでいる方でした。その方に「自分の経済を作っていけ」と言われたことが強く印象に残っています。今までだったら農協で決められた値段で売られていましたが、その牧場では自分で値段をきめてブランド化しているのです。その経済を見たときに、市場に囚われない収入構造を作ることができれば、農業でもやっていけるかもしれないと思いました。そのこともあって、高校卒業後は、2年間由利本荘市の和牛農家さんのもとで研修を積ませていただき、家に戻ってきたという流れです。

Q: お仕事の具体的内容、やりがい・苦労

放牧経産牛がつなぐ新たな人脈

朝起きたら、すぐに餌やりや体調管理をします。その後は、日によって変わりますが機械の整備や獣医さんの往診など。分娩が近い牛がいれば、その準備に追われています。夏は牧草の収穫や冬は雪かきなど季節によっても仕事内容は変わってきます。
やりがいとしては、繁殖農家なので、子牛が市場で高く売れると嬉しいですし、経産牛がおいしいって言ってもらえるとやっぱり嬉しいですね。また、放牧経産牛という珍しい生産方法をとることで、人脈が増えることもモチベーションの一つです。普通に牛を育てていたら出会うことない人に会うことができて、良い刺激になっています。
その一方で、牛は体重500キロもある生き物なので危険が伴います。一歩間違えると怪我や死につながることもあるので気を引き締めなくてはなりません。しかし、日々の仕事が習慣化しているため、仕事自体がつらいと感じることあまりないですね。

Q: 今後やりたいことは

上の山放牧場

国内で誰も生産していない「日本の草だけを食べて育った牛(グラスフェッドビーフ)」を育て始めたいと思っています。その売り方もただ単に牛肉を販売するのではなく、オーナー制度を作り、実際に牛舎に遊びにきたり、命名権をつけたりなど一緒に成長を見守る販売方法を考えています。かつては草原だった場所に牛がいなくなることで森が広がり、今までの景観が失われてしまいます。それを食い止めるためには牛に草を食べてもらえるこの生産方法が最適です。また、外国から輸入した穀物で育てていると、どうしても外国頼りになってしまい、世界情勢によって左右されてしまいます。そのため日本の土地だけでおいしい牛肉を作りたいという想いもあってこの生産方法に取り組むことに決めました。

Q: 読者へのメッセージ

にかほ市は海と山が近いため、両方の食べ物を楽しめます。津波が来てもすぐに逃げられる点において安心です。県の中でも子育て支援が特に充実しているので、子育て世代の方にたくさん移住してほしいです。一緒に市政を変えて、若者が住みやすいまちを作っていきましょう!

取材してみた感想

中学生の頃から農業をするか否か自分と向き合っていたというお話を聞いて、当時の私は将来のことなど何も考えていなかったなぁと恥ずかしくなりました(笑)。高校に入ってからも弓道で素晴らしい成績を残し、大学からのスカウトがあるなかそれを断り、農家の道を選んで自らビジネスを生み出している姿は本当にかっこ良いと感じました。同世代の方が秋田で活躍していることがとても刺激になりましたし、今後も応援したいと強く思いました!

執筆者:メディアラボインターン 日本大学3年 石田耕司

関連情報

Instagram:渡邊強
WEBサイト:放牧経産牛販売サイト


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