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この10年で消えたITトレンドを振り返る

2010年代に本格的にスマホが普及するとともに、数々のITトレンドが消えていったんですよね。この10年で消えていったITトレンドを、振り返ってみようと思います。

消えたトレンド1. ソーシャルコマース


この10年で最ももてはやされ、そして消えていった代表格といえば「ソーシャルコマース」ではないでしょうか。
2013年前後に米国のFabをはじめとするソーシャルコマースが大量にあった記憶がありますが、そもそもソーシャルコマースの定義について調べてみました。

ソーシャルコマースの特徴は、amazonや楽天など従来のECとは異なり、インスタグラムのようなフィード型のSNSのようなインターフェースで商品を陳列したECのことなのですね。どちらかというとSNSに寄せているので、いいね機能やコメント機能などの機能がついてます。
写真が重視されるインターフェースなので、アートや雑貨など"何かオシャレ”な商品が並んでいるのが特徴です。

一番大きなサービスでいうとFabというコマースがあり、一時は日本円にして300億円もの資金調達に成功したそうです。しかし、その後資金の枯渇が激しく、最終的には金額非公開で買収されて今はフィットネス製品に軸足を移している、とwikipediaに書いてありました。

当時この手のサービスがいくつも登場した記憶がありますが、似たようなサービスのFancyはリンク切れになっているので現在は存在しないようです。

日本でも「Origami」というサービスが登場し、5億円の資本金でスタートしましたが「ソーシャルコマース」というサービスでは上手く拡大せず、その後決済サービスへとピボットしています(決済サービスとしてもPayPay等に押されて上手くいきませんでしたが)

消えていった理由

  • そもそもコマースにソーシャル機能を望んでいない
    Amazonや楽天で商品を購入しても多くの人はTwitterなどで拡散しないので、そもそもコマースとSNS事態の相性がそんなによろしくないのです。しかし、当時はTwitterやFacebookが盛り上がりはじめていた時代だったので、SNSを組み合わせればなんかイケる感が出てしまったのではないでしょうか。

  • なんかオシャレなだけだった
    これらのサービスに共通するのが「なんかオシャレ」感です。扱う商品はアートだったりインテリア製品だったり、何かオシャレでした。この何かオシャレという感じは、雰囲気で一見伸びそうな感じを与えてしまうのですが、実態はただのオシャレなのです。

消えたトレンド2 クローズドSNS


2010年代前半は、FacebookやTwitterが盛り上がりを見せて「ソーシャルが何かすごいぞ」という雰囲気に包まれていました。
そのカウンターサービス登場したのが、ごく親しい家族や友達と繋がるためのクローズドSNSです。メンバーを限定して内輪のメンバーでコミュニケーションを取ることを目的としています。
Facebookなどで友達には見せたいけど上司には見せたくないなど、繋がりすぎることを解消しようとしたサービスでしょう。

一番有名どころは米国発の「Path」ですが、2018年にサービスをクローズしています。日本でも9人限定のクローズドSNS「Close」などが登場しましたが、いずれもうまくいっていないようです。
当時、巷の9人で「Close」を使ってみて、参加者のプロフィール写真が並ぶ形だったので、全員が写真をサモハンキンポーに変えて、誰が誰だか分からなくなったのも、今では良い思い出です。

ちなみに、クローズドSNSではありませんが、コミュニケーションの範囲を狭めたSNSをGoogleも提供していました。この「Google+」というサービスは、一時期はデイリーアクティブユーザーが5000万人に迫る勢いでした。
私もFacebookと平行してしばらく利用していましたが、投稿範囲を限定する設定を手作業が行うというひと手間がネックだったように思います。

消えていった理由

  • 家族や親しい友達はチャットアプリでコミュニケーションをするので、コミュニケーション用のSNSを必要としない
    これに尽きる気がします。
    しかし、家族や親しい友達の関係をサポートする「ツール系」サービスは伸びています。例えば予定を共有する「TimeTree」であったり、位置情報共有アプリ「zenly」などです。
    とはいえ「zenly」は運営元の業績不振でサービスが終了しているので、一見伸びているように見えても、SNSというサービスは利用者がクリティカルマスに達しない限りマネタイズが難しいのでしょう。

消えたトレンド3. グルーポンなどフラッシュセールス


これも2010年代前半に一時期盛り上がりを見せたサービスでした。グルーポンは共同購入型のフラッシュセールスで、24時間以内に一定量の人たちが商品を購入すれば50%オフになるというような仕組みでした。
リクルートも「ポンパレ」という共同購入のサイトを立ち上げましたが、名称は別のECサイトに引き継がれているものの、共同購入サイト事態は終了しています。
他にも時間限定で値引きになるフラッシュセールスのサイトはいくつか立ち上がりましたが、いずれも今は存在しないか形態を変えているようです。

消えていった理由
おせち

消えたトレンド4.  レコメンド(パーソナライズド)/キュレーションサービス

2010年代前半、スマホの登場とともに「情報やコンテンツの総量が増えすぎている」という前提が生まれ、レコメンド(パーソナライズド)やキュレーションサービスにサービスが登場します。

たとえばニュースアプリ「SmartNews」は、今では誰も覚えてないと思いますがTwitterに特化したニュースアプリでした。Twitterの投稿を解析してカテゴリごとに人気のニュースを抽出したり、自身のTwitterと連携すれば好みに合わせたニュースをキュレーションしてくれるレコメンドアプリでした。

同じく「Gunocy」もユーザーの関心や嗜好にあったニュースをキュレーションしてくれるサービスでした。
今でもサービス自体は残っていますが、レコメンドやキュレーションの意味は薄まり、Yahoo!ニュースとあまり変わらないニュースアプリになっています。

消えていった理由

  • 思ったより情報量は増えていない

  • 人はみんなが見たいものを見る

「思ったより情報量は増えていない」というのは、情報やコンテンツ量は加速度的に増えているものの、GoogleのSEOだったり各種アプリでは新しい情報しかヒットしない設計になっているので、ユーザーの体感としては情報量が爆発的に増えている感覚がないのです。
また、「人はみんなが見たいものを見る」というのは、Yahoo!トップニュースの4割弱は芸能ニュースという話もあり、だいたいの人が見たいニュースは同じなのです。
ですから、レコメンド"ニュース”アプリは必要とされておらず、人気ニュースランキングで事足りてしまうのです。
ちなみに「SmartNews」と「Gunocy」はマス向けに舵を切りましたが、同時期にリリースされたニュースキュレーションアプリ「antenna」は、雑誌のようなオシャレな方向に寄せていました。調べたところ2023年の10月をもってアプリの配信は終了したようです(Web版は継続)

ただし、レコメンド(パーソナライズド)を表に出したサービスは消えていったものの、レコメンド自体の重要性は高まっています。例えばYouTubeやNetFlixでの滞在時間を伸ばしているのは適切なレコメンドです。
YouTubeやNetFlixというメガサービス事態は膨大なコンテンツを保有しているため、レコメンドが重要な要素になっています。

消えていったITトレンドまとめ


ということで、この10年で消えていったITトレンドを挙げてみましたが、このほかにも和製の写真SNSや、サブスク(定期通販)やらいろいろありますが、長くなったのでこのへんで結論をまとめて終わろうと思います。

ビジネススキームを構築できなかった


ここで紹介したITトレンドが消えていった理由は、ビジネススキームを構築できなかったということに尽きると思います。
例えばソーシャルコマースはSNSで拡散される&SNSを楽しむようにコマースを楽しむという前提仮説が2つとも違かった結果、普通のコマースとの差異がなくなり、拡大路線が取れなくなりました。

クローズドSNSも、家族や親しい友達はコミュニケーション用のSNSを必要としないという前提によって利用者が伸び悩みました。
しかし、予定共有サービスの「TimeTree」や位置情報共有アプリの「zenly」はユーザーが拡大していきます。が、ユーザーが拡大するだけではダメで、ビジネススキームを確立できなかった「zenly」はサービスをクローズしています。
一方で、mixiが提供する家族間の写真共有サービス「みてね」は、利用者数が国内外で1500万人に登り、会長の笠原氏は「国内だけでも(みてねの)売上高200億はいけるのではないか」と話しています。

レコメンド(パーソナライズド)においては「人はみんなが見たいものを見る」という理由から、前提仮説が覆ったものの、「SmartNews」と「Gunocy」はそこからピボットしてマス向けのスマートフォンニュースアプリに舵を切ったので、ビジネススキームが成立したのです。

ですから、ITトレンドがもてはやされたときは

  • そのトレンド仮説がユーザーのニーズとマッチしており

  • ビジネススキームが成立する

という2つの条件が成立しなければ、サービスが成り立たないということになります。

オシャレに気をつけろ


さらに気を付けるべきは「オシャレな」サービスです。ソーシャルコマースの「Fab」にしても、何かオシャレなサービスというのはビジネススキームが成立しているか否かという着眼点を曇らせるファクターとして働きます。

さらに競合がいる場合は何かオシャレにして差別化を図りたいと思いがちですが、一点注意するべきなのは、オシャレにした時点でターゲットとなる顧客層は少なくなっているのです。マス層はテレビのワイドショーは観ても、雑誌の「BRUTUS」は読みません。オシャレにしてる時点で、マスには到達しないサービスになっているのです。

この10年において、一番「オシャレ」で何とかしようとしたのが「WeWork」でしょう。孫正義氏は約100億ドル(約1兆5000億円)を出資したといいますが、経営破綻してしまいました。
「WeWork」について以前から堀江貴文氏が「ただのシェアオフィスビジネスなのに、都会の一等地にあって、儲かるイメージが見えない。企業のバリュエーションを釣り上げるだけ釣り上げて、最終的に誰かがババを引く」という主張をしていて、本当に孫氏がババを引くことになってしまいました。

この堀江氏の言う通り、ビジネススキームで考えるとシェアオフィスは利益率が低いので大規模なビジネスとしては成り立たないのです。しかし、「WeWork」は都心の一等地にあるシェアオフィスというオシャレ感によって、ビジネススキームを曇らせてしまったわけです。

ということで、結論としては「何かオシャレ」はあらゆる面において危険ということでした。


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