マンガがフルカラー×縦スクロールになる理由。ウェブトゥーン化で失われるもの
マンガをフルカラーで縦スクロールにすべきか?
先日、堀江貴文氏が日本のマンガもカラー化するべきではという持論を展開して、話題になっていました。
ウェブトゥーンとは、韓国発祥のデジタルマンガで、縦スクロールとオールカラーの作品が連載されています。
カラー化のメリットを示すエピソードとして、自身のメルマガで連載中のモノクロマンガをInstagramに投稿したところ、予想外に「いいね」が少なかったと話しています。
この持論について、ヤフコメなどでは「ページ見開き型は動きのメリハリがある、モノクロだからこその良さがある」など賛否両論となっています。
「東京タラレバ娘」の作者である東村アキコ氏は、韓国のマンガアプリで縦スクロールとオールカラーを特徴とするウェブトゥーン形式のマンガを連載しています。
よくオールカラー版のデメリットとして、カラー作業によって作家の負荷が高まるというのがありますが、東村氏によると、スクリーントーンを貼る手間に比べると影響は少ないといいます。
一方で、縦スクロールについては、やはり向かないジャンルもあるといいます。
動きや見開きの迫力で見せられないからこそ、アクションなどの動きで見せるマンガよりは、会話劇を中心とした小説のようなコンテンツが向いているようです。
メリットデメリットがあるウェブトゥーンですが、今後、日本のマンガも韓国のウェブトゥーンに習って、フルカラーかつ縦スクロールになっていくのでしょうか。
コンテンツは、入れ物の形に合わせて形が変わる
結論として、日本のマンガもカラー化と縦スクロールのウェブトゥーン化が進むと考えられます。
理由の一つは堀江氏がいうように、その方が人々のアテンションが取れるからです。広告業界の人なら直感的に分かりやすいのですが、モノクロの写真とカラー写真のどちらが人々の注意を引き付けるかといえば、間違いなくカラー写真です。
カラーマンガの方が人々のアテンションが間違いなく取れるのですから、カラー化の方向に向かいます。
もう一つの理由は、コンテンツの歴史をひも解くと、入れ物に合わせてコンテンツの形が変わるからです。
東村氏のコメントにあったようにマンガがモノクロなのは、雑誌という入れ物に最適化されていたからです。テレビが登場した当初もモノクロでしたが、技術が進化するとともにカラー化されました。
マンガも雑誌という紙から、スマホというデジタルに入れ物が変わったので、入れ物に最適化されたウェブトゥーン形式に進むのは自然なことなのです。
この理屈と同じ理屈で、縦スクロール化も進むと思います。見開きのコマ割りも、雑誌という入れ物に最適化されたものだからです。
スマホという入れ物の最適化は縦スクロールですから、入れ物に合わせてコンテンツの形が変わる法則を適用すると、やはりマンガも縦スクロールになるのが自然な流れでしょう。
ウェブトゥーン化で失われるもの
ということで、マンガがほぼ間違いなくウェブトゥーン化していくと予想されますが、この流れにより読者の「文脈を読む力」が失われる可能性があるような気がします。
モノクロマンガはカラーマンガに比べて情報量が少ないので、読者が情報をある程度自分で補完する必要があります。
また、見開きの漫画にはコマ割りによる独特の演出があります。コマ割りが大胆に斜めに割られているなら"迫力”を感じることができますし、逆にコマ割りが小さく並んでいるのであれば"淡々とした”印象を受けます。
このように、モノクロマンガはある程度自分で情報を補完しながら読む、コマ割りの意図を組むという、配置された要素から文脈を読む力が必要になってきますが、ウェブトゥーン化するとこれらの要素が薄まるため、文脈を読む力というのは失われやすいような気がします。
ただ、すでに小説からマンガになった時点で自分で情報を補完する量は減っているので、文脈を読む力はそがれているわけです。今となっては、ほとんど文脈を読む必要がない動画コンテンツが人気である以上、ウェブトゥーン化が「文脈を読む力」の低下のきっかけとなるというよりは、コンテンツ全体においてどんどん「文脈を読む力」を要しなくなっているというのが大きいように思います。
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