#5 長崎大学医学部学士編入試験:体験記[1次試験・2次試験]【医学部学士編入/社会人/複数正規合格】
はじめに
はじめまして。ご覧いただきありがとうございます。2022年度4月より国立大医学部医学科2年次に編入学しました「くま太郎」と申します。
医学部学士編入試験を受験した経験が、少しでも今後学士編入を検討されている方々のお役に立てればと思い、記憶がまだ残っているうちに、この度のnote執筆に至りました。
私は、文系/仕事との両立/生物未履修という背景の中、1年の勉強期間で運にも恵まれて合格をいただくことができました。
一方でなかなか厳しい状況からのスタートであったため、それなりに勉強には悪戦苦闘をいたしました。そうした背景もあり、誠に僭越ではございますが、今後学士編入試験を志す方に向けて私個人の体験も踏まえて微力ながら情報提供をさせていただこうと考えた次第です。
同じような境遇で奮闘なさっている方々にとって、私自身の体験が少しでもお役に立つことがあれば幸いでございます。
本記事は体験談の第六弾の記事となります。
R4年度長崎大学医学部医学科第2年次編入学試験を受けた記録をなるべく詳細に残します。記憶を頼りにしている部分もございますので、一部不正確な部分もあるかと存じますが、ご了承いただけますと幸いです。
医学部学士編入試験は、なかなか情報が手に入りにくい入試であるので、ここに記す情報が少しでも今後受験をなさる方々のご参考になれば幸いでございます。
1. 1次試験
[試験概要]
筆記試験となります。募集要項には、「学力試験を行い、募集人員の約4倍を第1次選抜合格者とし、第2次選抜の受験者を決定する。」とあります。
試験科目は、
生命科学系科目:90分、配点不明
英語:90分、配点不明
※〈要注意!〉
なお、令和6年度学士編入学試験から、出願書類に外部英語試験のスコアを追加し、一次試験の試験科目の英語を廃止するとのことです。
対象となる外部英語試験などの詳細は令和4年8月以降に長崎大学ホームページに記載があるとのことです。
R4年度入試では、この1次試験で170名程度→21名に絞られました。
[R4年度筆記試験詳細]
※問題の持ち帰り不可のため、記憶に頼っている部分が大きいです。出題順が一部ズレている可能性があります。また、すべての問題を網羅できていない可能性があります。申し訳ございません。
【生命科学系科目】
【英語】
[対策・準備]
【生命科学系科目】
生命科学については、化学や物理の知識を必要とするような出題は基本的にございません。その代わり、幅広い盤石な生命科学の知識を求められます。
生命科学のレベル感としては、KALSでいう基礎・完成シリーズからがメインの出題となりますが、問題によっては発展レベル、あるいはKALSの教科書には記載もないような知識も問われることがあります。
また、頻出の内容としてノーベル賞関連の内容があります。昨年もC型肝炎についての出題がありましたが、過去ではCRISPR-Cas9や概日リズム等の出題もございます。最新のトレンドをおさえてノーベル賞の受賞内容に関する基礎知識は学習していくことをおすすめいたします。
筆者も前日に“C型肝炎“についてGoogleに検索して、簡単な内容を覚えていったら、見事に当日に出題されて得点できたという幸運もございました。時間があまり無い方も少しでも空き時間に調べてみることをおすすめしたいです。
なお、GHS会という有志のサービスがノーベル賞関連の内容についてまとめた資料を販売していますので、そちらを購入するのも一つの手かもしれません。
筆者が長崎大学の1次試験までに行った対策は主に以下の通りです。
【英語】
難しい医学英単語などを覚えていく必要はないと個人的には感じました。
特に昨年は多くの受験生が問題の難易度の易化を感じていたようです。得点開示の結果、筆記試験不合格の方でも英語満点の方が複数人いたようです。
(ちなみに試験の途中退室が認められているのですが、かなりの人が途中退室しておりました。)
実際、来年から外部英語試験が導入されることを考えると、英語の試験が大学の思惑通りには機能していなかったことが予想されます。
したがって、今年はどういった試験になるか予想することは難しいですが、2021年実施と同様の難易度と仮定するのであれば、高得点勝負で、一問でも落とせないような試験となる可能性もあります。
蓋をあけてみないと分からない部分も多分にございますが、試験までの勉強時間が限られているとすると、長崎大学については、英語よりも生命科学に時間をかけた方が、得点の上がり幅は大きいかもしれません。
上記にも記載しておりますが、令和6年度学士編入試験(2023年実施試験)から外部英語試験が導入されるようなので、来年以降の受験予定の方はご注意いただければ幸いです。
[その他、試験の感想など]
・試験時間について
→生命科学は時間いっぱい使う、英語は時間がかなり余る。といった感じでした。例年、長崎大の後には他大学の試験も控えているため、いち早く試験を終わらせて、次の試験場に向かいたいと思う気持ちもわかるのですが、なるべくでしたら時間の限り何度も見直しをすることを個人的にはおすすめしたいです。
・キャンパスへのアクセスについて
→長崎駅から長崎大までは徒歩で行くことはかなり大変なため、長崎大医学部近くのホテルに宿泊できるのであれば、まずはそれをお勧めしたいです。
(ホテルコンチェルト長崎が有名です)
筆者は長崎駅近くのホテルに泊まりましたが、長崎駅から長崎大医学部まではバスあるいは路面電車でいくことができます。路面電車の場合は、「原爆資料館」で降りるのが一番近いかと思います。
また、意外とバスが色々とあって煩雑であるので、バスを利用なさる方は時刻表などで事前に入念に調べておくことをお勧めします。
なお、バスも路面電車も交通系ICカードでの支払いが可能です。
・入室時間について
→試験開始1時間前から入室が可能です。
・健康状態確認シートについて
→入室の際に、健康状態確認シートの提出が義務づけられています。事前に記入漏れがないかを確認してから持参していただければと思います。
・前日の掲示について
→前日の13時〜17時までに試験場案内などの掲示があります。この時間に現地に到着なさっていない方も多いかと思いますが、そこまで大した内容でもないので、ご友人がいらしたら、ご友人に確認してもらってもいいかもしれませんし、最悪、当日の確認でも大きな問題はないと思います。
ただし、2次試験は例年と異なる会場になったなどもあったので、もちろん余裕のある方は下見も兼ねて一度大学まで行ってみることをお勧めします。
[成績開示結果]
1次試験通過者は、成績開示を行えないため、詳しい結果は判明しておりません。
周りの開示者の方々の情報や自身の感覚としては、生命科学6割前後、英語9割〜10割ぐらいかなと思っています。
2.2次試験
[試験概要]
小論文及び個人面接試験となります。
募集要項には、「第1次選抜合格者に対して、小論文、面接及び書類審査(推薦書含む)を行う。最終合格者は、第1次選抜及び第2次選抜の結果を総合して、決定する。」とあります。
この試験によって最終合格者5名が決まります。
R4年度入試では、欠席者が1名ないしは0名だったと思います。受験者は、だいたい20代〜30代の方で占められていて、男女比は2:1ほどでした。
[R4年度第2次選抜詳細]
【小論文】(90分)
教室に21名全員が集められ、小論文試験が行われます。下書き用紙もいただけた覚えがございます。また、解答用紙にはマス目があり、問題はだいたい字数が指定されているので、その字数に合わせた解答欄が用意されています。
時間はかなりギリギリかと思います。時間いっぱい文字を書き続けることを覚悟したほうがいいかもしれません。筆者は全部書き終えることができましたが、最終合格した人の中でも書き終えられなかった方もいらっしゃいます。
なお、小論文の問題には例年、問題文中に下線が引かれている漢字の書き取り問題が出題されていて、2021年実施試験では以下の10問の書き取りが出題されました。
【個人面接】(20分)
小論文試験の終了後に休憩を挟んで、個人面接が行われます。
個人面接は番号の若い順から一人ずつ、ではなく、4つあるいは5つのぐらいのグループに番号をもとに分かれていて、各グループの1番目に当たる人から順に面接室への案内がされ、面接が行われます。ゆえに、番号が遅い方でも一番目に面接する可能性も十分にございます。
したがって、面接室は4つ〜5つ用意されていると考えられます。なお、試験官は3名で、試験官のお手元には、少なくとも履歴書と推薦書があったと思います。それらの内容についての質問もございました。また、試験官の先生方は、他の方々のお話を伺う限り、基礎よりも臨床の教授が多かったのではないかと思います。
主な質問内容は以下の通りです。
質問内容については、試験官の方の手元にマニュアルのようなものがあって、そこから聞かれているようでした。上記は少ない項目となっていますが、それぞれの質問に対するこちらの回答を、さらに深掘りして聞かれていくという形式でしたので、実際は色々なやりとりがございました。
私の場合は、特に仕事に関すること(上司や同僚との人間関係の構築の仕方なども含めて)をかなり聞かれました。
なお、他大学で聞かれることの多い「なぜ、〜大学なの?」のような質問は一切ございませんでした。
大学に対する思い入れよりは、受験者の人間性をじっくり見ていくような面接だと感じました。
推薦書の内容についても聞かれた覚えがありますので、可能であれば、事前に推薦者の方からどのような内容を書いていただいたか確認しておくことをお勧めいたします。
全体的には、鋭いツッコミなどもありましたが、試験官にも時折笑顔が見られ、比較的穏やかな面接であったように感じます。
[対策・準備]
[小論文]
KALSで、小論文の講座を受講なさっている方はそれで十分かと思います。
ちなみに筆者は小論文の講座は一切受講しておらず、事前に一個も小論文を書く練習をしていなかったですが、合格体験記をみる限り、過去の合格者はほぼ全員が小論文講座を受講している方であったので、絶望のまま受験しました。
それでも何とかなる部分もあるので、もしも筆者のように講座を受講していない方がいらしたとしても、あまり悲観せずにできる準備をしていただければと思います。
筆者が小論文対策用に目を通した書籍は、以下の通りです。
余談ですが、筆者は前日に友人から小論文の書き方をホテルのロビーでレクチャーしていただき、それが大いに役立ったところもありましたので、この場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。
また、よく出題されている題材として日本医学会総会の内容がまとまっている本があります。こちらは目を通しておいても損はないかと思います。
以下の通りです。
なお、漢字の書き取り対策ですが、何が出題されるかは何とも読みづらいので、時間に余裕のない方は無理にやらなくともいいかなと思います。
もし、何かやるとしたら、上記の本などに出てくる熟語をチェックするのも一つの手かもしれません。ちなみに筆者はそれを行いましたが、一個も当たりませんでした。
【個人面接】
これまでに2校の受験を終えて、一語一句想定問答を覚えていくよりも、ざっくりこんなことを話そうかなとキーワードを想定して準備をしていきました。
想定した質問に対して声を出して受け答えをする練習をしますが、毎回微妙に受け答えが変わるような形で、それでも良しとすることで自然な形で受け答えできるようにしました。
筆者は、想定質問とそれに対する応答をankiというアプリに入れて、質問をランダムに表示させて、何度も声に出して練習をしました。
筆者が事前に長崎大のために回答を用意した想定質問は以下の通りです。
[その他、試験の感想など]
・面接がどれくらい最終合格に寄与しているか
→1次試験合格者は筆記試験の成績開示ができないため、おそらく最終合格は2次試験における小論文と面接の結果がかなり寄与しているものと考えられます。筆記試験さえ通過してしまえば、あとは筆記試験の出来はあまり気にする必要はないと考えます。
・筆記試験の科目ごとの配点
→長崎大学については、生命科学と英語の配点が明らかになっていません。ただ、噂では生命科学に重きが置かれているのではないかと言われていますが、真偽は定かではありません。
3. 受験に際してのおまけ情報
・社会人の方は推薦書に注意です。
→通常、医学部編入において推薦書の提出が課されている大学では、原則は大学の指導教官の推薦書と指定されていることが多いですが、長崎大では異なります。
在職中の場合、勤務先の課長相当職以上の者となっています。現在、無職である人も直近に所属していた機関の方からの推薦書が必要となります。
筆者は上司に隠しての受験がそもそも難しく、あらかじめ受験を伝えていたこともあり、推薦書の依頼のハードルはそこまで高くはなかったのですが、多くの社会人の場合はそうはいかないかと思います。
早めからの準備をおすすめいたします。
・志望理由書が手書きで1200文字ほど書く必要がございます。
→長崎大学は「自己の経歴をもとに本学科を志望した理由」を400字以内、「卒業後に目指す医師像」を800字以内でそれぞれ自筆で記述する必要があります。手書きはなかなかの時間を要するために、早めからの準備をおすすめいたします。
なお、筆者は、鉛筆で下書きをした後にペンで清書して、鉛筆部分を消しゴムで消しました。
・入学金の支払い猶予を申請できるようです。
→大学によっては、入学金の締め切りが決まっていて、一度支払うと、辞退をしても入学金が戻ってこないこともありますが、長崎大については入学金の支払い猶予を申請して辞退した場合、支払わずに済んだ方もいらっしゃるようです。こちらは検討なさる際には大学に確認をとった方がいいかもしれません。
・羽田からの場合、格安航空会社がございません。
→羽田からですと、スカイマークの便が比較的安いですが、全てが神戸の経由便となっているので注意が必要です。成田空港からですと格安航空会社もございますが、多くの方は羽田からANAかJALを利用して移動なさっているようです。
・長崎大医学部近くには、コメダコーヒーがあります。少し歩くとスタバもございます。大学近くに宿泊なさる方はこちらで勉強できます。
なお、長崎駅周辺にはスタバなどカフェもあるので、駅周辺に宿泊する方もこちらで勉強できると思います。
4. 最後に
医学部学士編入試験は、情報がなかなか出回らない試験であるため、情報収集に苦労されている方も多くいらっしゃると思います。また、そうした情報を手に入れようとしてもそれなりのコストを強いられ、ただでさえ受験のために色々な部分で切り詰めている受験生に負担がかかってしまうことを心苦しく思っておりました。
個人的な思いとしましては、なるべく情報格差を埋めて、フェアな環境で公正な選抜が実施され、その中で志高い方々が医学部編入への権利を勝ち取っていかれることを望んでおります。
少しでも皆様のお役に立てますと幸いでございます。
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