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「おとす」という苗字
コンビニの若い男性店員のネームプレートに「お・と・す」という3文字が並んでいた。苗字としてはかなり珍しい。
瞬間的に思い浮かんだのは、「落とす」という動詞。
でも、動詞から成る苗字などまず考えられない。
そこで訊いてみたところ、その若者は快く答えてくれた。
「甲乙の『乙』に、横須賀の『須』です」
イントネーションが関東風だったし、「横須賀」という地名を持ち出すあたり、出身はそちら方面なんだろうと思った。
この辺りで聞いたことないのも当然だと、勝手に納得。
でも、そんな憶測は見事に外れた。
帰宅後、ネット検索してみたところ、「乙須」という苗字が最も多いのは、鹿児島県薩摩川内市だということが判明。小倉町乙須という地名があり、そこが発祥らしい。
その最多の薩摩川内でも、その件数は20。全国で探しても50件にも満たない少数苗字だということがわかった。
未知との遭遇がら、気ままな仮説を巡らせ、その仮説を実証するべく裏付けとなる情報を探し、結果は見事に覆され、新たなる知識を獲得する。
苗字に限らず、こういったプチ民俗学的で無害かつ無益な考察パターンを趣味として楽しんでいる傾向がある。
「あなたの趣味はなんですか?」
と尋ねられても、なかなか説明し難い趣味である。
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