せかいでいちばんたのしいクジラ
このうみには たくさんのいきものが くらしています
ちいさな ちいさな プランクトンから
おおきな おおきな クジラまで
ひろい ひろい うみのなかでくらしています
クジラのなかには にんげんたちから
「せかいでいちばん こどくなクジラ」とよばれているクジラがいました
そのクジラは ひとりで
ふかいうみのなかを およいでいました
ほかのクジラよりも ちょっとたかいこえの
このクジラがやってきたのは
むかし むかし
おじいちゃんのそのまたおじいちゃんが
まだ こどもだったときに しずんだ
ちんぼつせんです
うみのなかの たにのあいだに ひっかかっている
そのちんぼつせんは ちかくをとおる
うみのハイウェイの きゅうけいじょになっています
そこでレストランをやっている ダイオウイカのおばあさんが
クジラをみつけていいました
「やあやあ ひさしぶりだね やすんでいくかい?」
クジラはこたえます
「おばあさん ひさしぶり ちょっとだけ おひるねしていくね」
「はいはい どうぞ おちないように きをつけてね」
クジラはマストにのこった 〝ほ〟のハンモックに
ゆっくりとからだをのせると きもちよさそうに
うみのなかで ゆらゆらとゆれながら すこしだけねむりました
つぎにクジラがやってきたのは
マリンスノーがふる うみのへいげんでした
つもったマリンスノーが ほんもののゆきみたいに
うみのへいげんに つもっています
クジラがつもったマリンスノーに とびこんで
あそんでいると ユノハナガニのこどもたちが
おおぜいで あそびにやってきました
「「「ねえねえ クジラさん いっしょにあそぼうよ」」」
こえをそろえて ユノハナガニたちが いいました
クジラは
「もちろん なにしてあそぼうか」
とこたえると ユノハナガニたちは
「「「マリンスノーでなにかつくりたい」」」
といいました
みんなは あつめたマリンスノーを ぎゅっぎゅっとかためて
ダイオウグソクムシをつくって あそびました
しばらくして すこしさむくなったクジラは
ユノハナガニたちに さよならをいって
かいていかざんのふもとにある おんせんにいきました
あかくひかるマグマを とおくにみながら
ふきだすおんせんで からだをあたためます
「おい クジラのあんちゃん もうすこし つめてくれやせんか」
クジラが こえのしたほうを むくと
大きなミズダコのおじいさんが 8ほんあるあしを
クネクネさせていました
「あ ごめんなさい さあ どうぞ」
クジラがおおきなからだを よこにずらすと
ミズダコじいさんが となりにやってきました
ミズダコじいさんは ふうーと きもちよさそうに
こえをだしました
そのとき ちょっとだけ スミがでたのを
クジラはみていました
「なあ クジラのあんちゃん しってるか」
ミズダコじいさんが はなしかけてきました
「にんげんたちも おおきなおふろで やまをながめるんだぜ」
そんなことクジラは ぜんぜんしらなかったので
「そうなんだー おじいさんは いろいろしっているんだね」
とかんしんしました
クジラは ミズダコじいさんに さよならをいって
また ふかく くらい うみのなかを
ひとりで およいでいきます
しばらく およぐと なかまのクジラたちがいました
「やっと もどってきたな」
「みんな まってたよ」
「さあ そろそろ いこうか」
クジラは なかまたちに むかって
「おまたせ それじゃ みんなついてきて」
というと なかまたちのせんとうを およいで
うみのハイウェイに のりました
すいすいと スピードをあげていくと
クジラは きもちよくなってきました
きもちよくなったクジラは ちょっとたかいこえで うたいはじめました
うしろで なかまのクジラたちが いいました
「やめてよー」
「きみの うたごえは みみがいたいんだ」
クジラは あわててふりかえって
「ごめん ごめん じぶんが おんちだって わすれてたよ」
といいました
なかまのクジラたちは わらいながら
「きみは とってもつよくて やさしいけど うたは にがてなんだな」
「ぼくらのために せんとうをおよいでくれるのは うれしいんだけどね」
「そうだ こんど みんなで うたをおしえてあげるよ」
と くちぐちに クジラにはなしかけます
クジラも わらって
「うん ぼくがちゃんと みんなをつぎのうみに つれていくから
ついたら うたをおしえてね」
といいました
クジラは うみのなかにある あそびばをたくさんしっていて
なかまも たくさんいるから
きっと じぶんは
せかいで いちばんたのしく
くらしているクジラ
なんだな とおもいました
ななおよう
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