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草原の個性

 個性が大切とか、違いを認め合うとか、そんなことを言ってはいても、所詮私たちの個性や違いなんて無いに等しい。隣のこいつも向こうのあいつも、たいして違いなんてないだろう。
 もし違いがあっても、違いすぎる場合は認めるのではなく、排除しがちではないだろうか。
 あいつもそうだ。あいつは違いが原因でいじめられてた。
 あいつは逃げなかった。どうせ暮らす場所は変わらないと言った。
 今いる場所で精一杯やるのみだと。
 私はあいつの隣で揺れていたい。私はそれで充分だった。

 その時、空から声が聞こえた。
「あ、四葉のクローバー!!」
 巨大な手があいつを抜いていった。
 ほら、やっぱり個性と違いのおかげでこうなる。
 自分と同じ三つ葉のクローバーが広がる草原で、個性は命の長さを縮めるだけだろう。
 女の子の手に握られたあいつは、寂しそうにこっちを見ながら向こうへと消えていった。


七緒よう
 

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