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心中譚

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歪な迄に一途、粗の異質な愛は不実
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片耳豚

片耳豚

運命だ、と思った。
____は此の偶然に感謝した。
ざり、と音を立てて一歩を踏み出す。先刻迄鉛の様に重かった足は、信じ難い程に軽やかであった。

眼前の化生が、怯えた様に細く声を漏らす。

「誰、なの」

声は掠れていた。滝の流れる音が響いている事もあり、もう左耳の聴こえない____は、殆ど其の声を拾えなかった。が、何を言いたいのか表情から読み取るのは容易かった。

「忘れたのですか」

____

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縊鬼

縊鬼

想いは零れ螢の如く揺らめく。

其の軌跡が首に纏わり、音も無く締めた。

独法師でも彷徨い、踠く事は出来るから。

永い旅路に捧ぐ餞は、貴方が私に呉れた言の葉ひとつ。

「斃れ」

美花凋落

美花凋落

 後朝、菊乃は政之助を大門まで送り届けていた。
政之助さん、どうぞ又来ておくんなんし……と甘い言葉と腕を絡められ、政之助は満足気であった。
「なあ、お菊。お前、こんな所――颯々と出て行っちまいたくねエかい」
こんな所、で妓楼を仰ぎ見、政之助は尋ねた。
「何を……おっしゃいんす、政之助さん。わっちは籠の中の鳥――外を夢見るなんて、疾うの昔に諦めてござりんす」
眼を伏せ、本の少し力ない笑顔を向ける。其

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恋慕

恋慕

貴方を恋い慕います。
其れは何処迄も穢い感情で、私の心は何時迄も晴れないのです。
貴方の視線の先に私が居ない事が苦しい。
貴方の笑顔を私が見られない事が悔しい。
貴方の心に、私の居場所が無い事が憎い。
如何して?

「……」

貴方を乞い慕います。
私には、貴方の幸せなぞ興味が無いのです。
唯、其の優しい瞳を私に向けて……
朗らかな声を私に聞かせて……
私を愛して。
私の為だけに生きて欲しい。

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