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「正しさを貫く」〜事業において、ビジネスマンにとって大事なこと〜

名著から人生100年時代を生きるためのエッセンスを学ぶこのシリーズも今回で5冊目!前回の「影響力の武器」に続き、今回は「正しさを貫く」を取り上げます。

この本は日本におけるセキュリティ事業のパイオニア、セコムの創業者である飯田 亮(いいだ まこと)氏の仕事と経営哲学をまとめたものです。

その哲学には効率化・多様化を極める今の時代と一見逆行するものも少なくありません。しかし根本には事業とは何か真摯に向き合い、成果を出し続けてきた飯田氏の捉える事業の本質が詰まっています。

「将来事業を起こしたい。事業を引っ張るリーダーになりたい。」そんな意志を持つ人にとって必読の一冊だと思います。

飯田 亮「正しさを貫く」PHPファクトリー・パブリッシング

この記事ではそんな飯田氏の哲学のうち、僕が大事だと思った二つのポイントに絞ってご紹介します。この記事が事業の本質とは何かを捉え直すきっかけになれば嬉しいです。

結論だけ先にまとめると、飯田氏の哲学の中で大事だと思ったのは以下の2点です。
①長期的にみて、正しいことを徹底する
②ビジネスの要は人間性
それでは一つずつご紹介していきます!

①長期的にみて、正しいことを徹底する

飯田氏の仕事・経営哲学を理解するために、事業とは何かを確認しておきましょう。飯田氏は本の中で事業を以下のように定義しています。

「そもそも事業というのは、社会に何らかの有益さを提供するために行うものです。」
「事業が好きだから事業をやっているのであって、それにはお金が必要だから、必要な資金は利益で生み出してくる。それを再投資して、さらに良い仕事をお客様に提供する。」

事業とはお金を設ける手段ではなく、社会に価値を提供し対価としてお金をいただく一連の活動である。

飯田氏はこの定義に沿い、「社会に価値を提供できるものはなにか?」を基準に、正しい・正しくないの判断を行っています。言われてみれば当たり前のことですが、これがあらゆる事業の根本であることを改めて認識させられますね。

そしてもう一つ、飯田氏の哲学に通底する考えがあります。それは長期的な視点で考えるということです。正しいことは短期的に見たとき要領が悪く映ることも多いです。そんなとき「長期的にみて正しいか?」と考える視点の大切さを飯田氏は繰り返し説きます。

以降では「長期的にみて正しいことを徹底する」ためのポイントを2つ紹介します。

正しいことはいつか受け入れられる

「社会的に正しいこと、公正なことは、必ずいつか社会に受け入れられる」

前述した内容のまとめになりますが、このように飯田氏は断言します。

これを徹底するため、セコムの基本理念をまとめたセコム憲法には判断の尺度として「正しいかどうか、公正であるかどうか」という一文が入っているそうです。

現実の仕事では困難な場面も多いもの。それに耐えかねて「利益のために何をやってもいい」と短期的にラクな考えに流されてしまうと、いずれ社会から排斥され長期的にみて失敗してしまうでしょう。

長期的にみて社会にとって正しいか、この気持ちをスタート時点において持っていることが事業を成功させるために非常に重要になるでしょう。

問題には正面から立ち向かう・困難の泥水を飲もう

「何事であれ、逃げずに真正面から取り組まなければなりません。逃げずに、直向きな努力を続けることが大切です。逃げて横道に逸れる方が、さらに問題の解決を難しくしてしまうものです。」

事業を大きくする上で、この大切さを身を以て実感したと飯田氏は言います。創業当初、「水と安全はタダ」というのが常識だった日本において、警備をアウトソーシングする利点を理解してもらうのに非常に苦労したそうです。しかし厳しい状況でも真正面から営業したから今のセコムがあると飯田氏は断言します。

『「知り合いに頼らない」「紹介を受けない」「売る前の交際・接待費は使わない」という条件も自らに課していただけに、営業の困難さは尚更でした。』
『しかし私は自分が始めた新しい仕事の価値を、正面から認めてもらい、「まとも」に買ってもらいたかったのです。真に当社の提供するサービスを理解してもらい、その上で契約をしてもらうことが当社の発展に大きな力になると確信していたのです。』

ラクな道に逃げず、正面から向き合って自分たちのサービスの価値を認めてもらう。そんな地道な努力を積み上げた結果セキュリティーサービスの必要性は社会に広く認められるようになりました。

個人の活動においても正面から立ち向かうことが重要です。

「仕事においては、まともに努力し、汗水を流し、困難という泥水をたらふく飲むことによってこそ、人は育ちます。このことが人に力をつける最良の方法だと信じて、正面からの難しい方法を取るべきです。」
「要領よく、小器用に成功してみても、その人の本当の実力にはつながりません。」

その場しのぎの小細工は短期的にみてうまく立ち回ったかに見えます。しかしそのようなやり方を続けると逃げ回る習性が染みつき、物事に真正面から向き合うことができなくなります。

困難から逃げず、真正面から向き合うことこそが長期的にみた成長、成功につながります。

これを読んだとき、「7つの習慣」の個性主義と人格主義の話と共通しているな、と感じました。その場しのぎのテクニックを重視する個性主義と、原則に従って根本に向き合う人格主義。長期的な成功へ導いてくれるのは後者の人格主義でした。
(「7つの習慣」を読んだことがない方は、この記事を参考にしてみてください!)

この「困難に正面から向き合う」重要性は、エンジニアである僕自身の経験からも実感しています。

エンジニアの業務では日々多くのバグやエラーに遭遇します。その中には自分の知らない分野が絡んだ問題も多数。このときネットで出てきた対処法をコピペして乗り切ってしまうこともありました。

しかし「コピペ」を繰り返し、問題の根本について深く理解しないままやり過ごしてしまうと、同じような問題に直面したとき再度時間をとられてしまいます。

さらに良くないのは、どんな問題もコピペで乗り切ろうと考えてしまうようになったことです。一度コピペのラクさを知ると、問題に当たったときに「コピペで乗り切れないかな」と考えてしまいます。

しかしコピペばかりでは自分の知識は増えず、エンジニアとしての成長がないため、長期的にみて大きなマイナスになってしまいます。

最初に時間をかけて理解した方が長期的にみて効率的だし、新しい分野の知識を学ぶことで、今までの知識と結びついてシステムの理解がより深まる。自分の力で問題を解決できるという自信にもつながる。成長という面でも正面から向きうことが効果的だと実感しました。

②ビジネスの要は人間性

飯田氏の仕事・経営哲学で重要だと感じたポイント二つ目は「人間性」に関してです。本の中で飯田氏は組織の上に立つ人ほど人間性が大事だと繰り返し説きます。

企業というものは組織です。数多くの人間の組み合わせによって「トータルな力」を発揮してこそ成長することができます。組織を乱すような人柄では、企業にとってマイナスになります。お客様も人間です。好かれない人柄のビジネスマンが、お客様に喜んでいただけることなどありえるでしょうか。

ビジネスとは人間同士の営みです。お客様も人であり、事業を作り上げる組織の仲間も人です。ビジネスで成功するためには人に好かれる人柄、人間性が必要不可欠になります。

経営者に一番大切なのは人間性
「経営者はたくさんの部下を率いていかなければならない。そして部下が経営者に求めているのは、単に能力だけではない。やはりもっと人間的な面を求めているものです。人情であったり、温もりであったり、優しさであったりというような、人間性という言葉でしか表現しようのない何かを求めているわけです。一流の経営者は、それに答えている人たちです。」

飯田氏はこのように組織を率いるリーダーにこそ人間性が必要だと断言しています。

以降はこの人間性のその磨き方についてピックアップして紹介していきます。

仕事の前に「人間としての基本」・靴の減り具合と人間的魅力は比例する

「いくら有能であっても仕事が人と人の間で進めるものである以上、人間として問題のある人物はいずれ行き詰まってしまう」

いくら成果を上げているひとであっても、「人としての基本」ができていない人は長期的にみて通用しません。

「挨拶」「お礼の言葉」「感謝の気持ち」「誠実さ」など、人の基本となる部分をおそろかにすることなく、確たる土台を培うことでその上に花が咲く、メンバーに慕われるリーダーや信頼を勝ち取るビジネスパートナーになることができるのではないでしょうか。

そして基本を大切にするだけでなく、「人間的魅力」を高めることも仕事で成功するためには重要だと飯田氏は言います。

「仕事は人間同士の営みだから、その人の人間性次第で結果が変わってくる。その人が魅力的であれば、自然、実績が上がってくるはずです。」

では人間的魅力を磨くためにはどうすればいいのか。それはたくさんの人に会うことだと飯田氏は言います。

「いろいろなタイプの人間がいることを、体験を通じて知るところから出発するのです。仕事で成功するためには、顧客の誰からもいい感情をもたれ、好かれ、そのどなたにも感謝できる人間でなければなりません。そのためにはごく少数の人に揉まれているだけではダメなのです。」
「人に会うにあたって心がけたいのは、相手の話を乾いたスポンジのように素直に聞くということです。」

営業としては多くの顧客のもとに足を運んだ経験、つまり「靴のすり減り具合」が人間的魅力のバロメーターになるでしょう。(オンラインでやりとりするようになった現代では別のバロメーターが必要かもしれませんね笑)

エンジニアや経理など普段顧客と接しない仕事こそ、意識して人に会う機会を持つことも大事かもしれません。

愛嬌の高め方

パナソニックの創業者、松下幸之助さんは人を見るとき愛嬌を重視したそうです。人として好かれることが、仕事をする、人を率いる上でとても重要なのは前述のとおりです。

「愛嬌とはなんぞやというのは、これもなかなか曰く言い難しみたいなところがあるけれども、まず明るいこと。それから自分を飾らずに、欠点も含めてさらけ出せる人です。そういう人間なら必ず愛嬌があるものです。」
「愛嬌のない人間はダメです。心で付き合わずに理屈で付き合う人たちです。」

僕の話にはなりますが、この1ヶ月のテーマがまさにこれでした。「見栄を張らないこと」ついつい背伸びして自分を飾ってしまうことが、僕にとっての大きな課題です。

欠点を含めて腹を割って話せないひとは、人から距離をとってしまいます。相手からも距離を置かれる。そんな人が人を率いることはできません。

また欠点をさらすことに抵抗がある人は、上司への報告や相談も遅くなります。「こんなもの上司に見せられない」というプライドが邪魔して、周りの人から力を借りていいものを作り上げることができないのです。(「仕事は総力戦」だということを「入社一年目の教科書」で学びました。気になった方はぜひこちらの記事を見てみてください!)

この1ヶ月で気づいたことは実はあからさまに見栄を張る機会は少ないもの。でも「実はわかってないけど話を合わせてうなずく」みたいな小さな見栄張りがたくさんあるなと。なので見栄を張らないために「わかったふりをやめる」ことに力を入れました。

わかったふりをしているなーと思ったら「え、それどういうこと?」と聞き直してみる。日常の小さな行動から変えていくことで少しずつ見栄を張らなくなってきたなと実感しています。

とはいえ癖はなかなか抜けないものなので、見栄を張らない、素でいられる人になれるよう引き続き取り組んでいきたいと思っています。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました!

今回は「正しさを貫く」を読んで、特に重要だと思った「長期的にみて正しいことを徹底する」「ビジネスの要は人間性」というポイントをご紹介しました。

「将来事業を起こしたい。事業を引っ張るリーダーになりたい。」そんな志を持った方にとってこの記事が少しでも役に立ったなら嬉しいです!

ありがとうございました!それでは来月の記事でお会いしましょう!

山藤 篤志

表紙引用:PHP Interface

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