【初読で陥る】「7つの習慣」実践の落とし穴

この記事ではいわずと知れた名著であり、最も有名なビジネス書とも言える「7つの習慣」をついて扱う。「7つの習慣」を初めて読んでから、今回一年ぶりに読み返して気づいたこの本の実践の落とし穴と対策について、実体験をもとに解説する。

落とし穴と対策

まず結論から言うと、「7つの習慣」を実践する際の落とし穴は、習慣が身につくまでモチベーションが持続しずらいことである。そして僕が考える一番有効な対策は、第3の習慣で紹介されている「1週間の計画を立てる」ことを実践することである。本書の内容についての説明と、この結論に至った理由について説明していく。

一年ぶりにこの本を読み返し、7つある習慣の内、身についていた項目が一つ(その一つも完全ではない)しかなく愕然とした。同じ轍を踏む人が一人でも少なくなることを目指しこの記事を書くので最後まで読んでいただけたら幸いだ。

7つの習慣の前提

この本は実りある幸福な人生を送るために必要なことを7つの具体的な習慣に落とし込み解説されている。

「実りある人生には、それを支える基本的な原則があり、それらの原則を体得し、自分自身の人格に内面化させて初めて、真の成功、永続的な幸福を得られる」と本書では説明している。

ここでの原則とは「誠実」「正直」「人間の尊厳」「公平」など、「普遍的に応用できる深い基本の心理」のことであり、たとえ宗教が違ったとしても、どの社会にも見出すことのできる、「人間の有意義なあり方を支配する法則」のことである。

そして「これらの習慣を身につけるのは、継続的な幸福と成功の土台となる正しい原則を自分の内面にしっかりと植え付けること」だと著者のコヴィー氏は主張する。

また7つの習慣についてコヴィー氏は「依存→自立→相互依存へと至る『成長の連続体』を導くプロセス」とも表現している。人間は誰しも生まれた時は親に依存している。成長して一人で生活できるよう経済的、感情的に自立し、最終的に社会を構成する他者と相互依存の関係を築くことが実りある人生には必要なのだ。

7つの習慣のうち最初の三つは自立、すなわち私的成功のための習慣であり、後半の三つは相互依存、すなわち公的成功のための習慣である。そして最後の一つはそれら六つの習慣を継続的にレベルアップさせるための習慣になっている。

依存→自立→相互作用の順番は絶対であり、自立していない人が相互依存を実現することはできない。前半の三つがマスターできていなくとも後半の三つの習慣は役立つが、まずは最初の三つの習慣を継続することが効果的だろう。この記事でも最初の三つの習慣にフォーカスして内容を説明する。

原則を体得するための7つの習慣に臨む前に注意すべき点が一つある。それは7つの習慣は応急処置的なテクニックではないということだ。現代は「人間関係と自己PRのテクニック」そして「ポジティブな心構え」が成功の条件だとする「個性主義」の考えが蔓延っているとコヴィー氏は主張する。

現代人は個性主義のテクニックを使うことで、今抱えている問題に応急処置的に対処する。しかし問題の根本に向き合わないため問題は慢性化し、問題は再燃する。目先の問題を一時的に先送りするために、人間関係や思考法のテクニックを学んだところで問題は解決せず、実りある人生を送ることができるようになることはないのだ。

応急処置的な「個性主義」ではなく、「人間の内面にある人格的なことを成功の条件にあげる」「人格主義」こそが実りある人生に必要なものの見方、パラダイムであるとコヴィー氏は主張している。個性主義から人格主義へ、パラダイムシフトを意識することが7つの習慣を取り組む上で押さえておくべきことである。

第一の習慣:主体的である

パラダイムシフトを行う上で必要なことはなんだろうか。それは自分が過去培ってきたパラダイム、セルフパラダイムについて自覚し、それが原則に基づいていない場合は原則に基づいたパラダイムへと書き直すことである。第一の習慣「主体的である」ことは自分はパラダイムを書き直すことができると意識するための習慣である。

ではどうやってセルフパラダイムを自覚すればいいのだろうか。そのためにはまず刺激と反応の間にある選択の自由を理解することが大事だとコヴィー氏は主張する。

ある刺激(たとえば作業中に携帯の通知がなるなど)に対して普段どのように反応しているだろうか。僕の場合、通知がなった時、作業を中断してスマホを開き内容を確認してしまいがちだ。この通知という刺激からスマホを開くという行動まではほとんど無意識であり、その間に選択の余地は内容に思える。

しかしコヴィー氏は「自覚・想像・良心・意志」の四つを用いることで刺激と反応の間を作り、選択の自由を発揮できると言う。過去積み上げてきたセルフパラダイムに支配され、刺激に対して反応するのではなく、「自覚・想像・良心・意志」に基づき、原則に沿った反応を選択することが「主体的である」ことなのだ。

このためには「自分の行動は自分の選択の結果である」ことを理解し、「自分の選択に対して責任を引き受ける」必要がある。この責任を引き受け主体的に振る舞うために、率先力を発揮せよとコヴィー氏は主張する。これは進んで行動を起こす責任を自覚し、刺激に対する反応を選べるだけでなく、刺激を生む環境そのものを変えてしまうと言うことを指す。

先ほどの例ならば、スマホの通知を切ってしまうというのがわかりやすいだろう。スマホの通知がなるのは、自分が通知をオンにしているからだ。「だって通知が気になっちゃうんだもん」と考えるのではなく、自分の選択と行動で刺激を起こさないようにするのが主体性を発揮するということだろう。

どれくらい自分が主体的かを図る尺度として、コヴィー氏は「関心の輪・影響の輪」という概念を提案している。影響の輪は自分がコントロールできること関心の輪は自分に関係ある、関心があるが、直接的にコントロールできないことだ。

先ほどの例であればスマホの通知設定は影響の輪の中であり、誰からかメッセージが来ることは影響の輪の外、関心の輪の範疇である。「Aくんからやたらとメッセージがきて集中できない」と愚痴る前に、影響の輪に集中しスマホの通知を切ってしまえばいいのだ。

影響の輪の中に注力することで自分の影響を与えられる範囲、コントロールできる範囲を広げることができる。それは「アウトサイドイン」の考え方であり人格を磨くことにつながる。アウトサイドインとは「自分自身が変わる・内面にあるものを変えることで、外にあるものをよくしていこうという考え方」であり、もっとも効果的な手段である。

影響の輪の中心にあるのは「決意し、約束をしてそれを守る能力」であるとコヴィー氏は主張する。この「決意し、約束したことを守る」ことが主体的であるために効果的なアプローチなのだ。

第二の習慣:終わりを思い描くことから始める

自分が死ぬ瞬間を考えたことはあるだろうか。僕はこの本を読むまでなかった。この本で「自分の葬儀の場面を思い描け」と言われた時、「自分の内面の奥深くにある基本的な価値観」について思いを巡らせたと記憶している。

コヴィー氏は「人生における全ての行動を測る尺度・基準として、自分の人生の最後を思い描き、それを念頭において今日一日を始めること」で「あなたにとって本当に大切なことにそって今日、明日、来週、来月の生き方を計画できる」と主張する。

この第二の習慣が入っていることをまとめると、自分の価値観を見極めるということだと思う。今従っている価値観は果たして自分の内面奥深くの価値観だろうか。それとも他者から与えられた価値観だろうか。

僕の場合、他人からの評価を気にし、社会が正解だとするものに迎合して生きてきたように思う。潰しのきく理系、偏差値の高い大学、就活生の人気ランキングの高い企業。だが死ぬときに「そのとき属する狭い社会から提示された正解」なんてものを褒められても嬉しくないな〜と考えてから少しずつ自分の価値観について考えるようになったと思う。

物づくりをするとき二つのステップがあるとコヴィー氏は説明する。「第一の創造」は設計図を描くことだ。「第二の創造」は設計図をもとに物を作り上げることである。そして「第一の創造」はリーダーシップに、「第二の創造」はマネジメントに対応するとコヴィー氏は主張する。

そしてリーダーシップはマネジメントに先立つ必要がある。間違った設計図からは間違ったものしかできないからだ。そしてこの第二の習慣は自分にとって正しい設計図を書く、リーダーシップを発揮して価値観を見極めるためのものである。

価値観を見極めるためにコヴィー氏は「想像と良心を使え」と主張する。第一の習慣によってセルフパラダイム、現時点の自分の価値観を「自覚」することができる。そして「想像と良心」によって自分の価値観にそって理想を思い描き、原則にそった自分自身のガイドラインを定義することができる。

より具体的な取り組みとしてコヴィー氏は個人のミッションステートメントを定めるよう勧めている。ミッションステートメントとは「信条あるいは信念んを表明したもの」であり、「どんな人間になりたいのか、なにをしたいのか、土台となる価値観と原則はなにか」を端的な言葉で表した物である。

ミッションステートメントは自分の価値観を反映した「揺るぎない基準」となり、1日のはじめにミッションステートメントを確認することで、その日一日自分の価値観に沿って主体的に過ごすことができるようになる。

ミッションステートメントを書く上で想像と良心を働かせるための方法として、コヴィー氏は自分の葬儀を想像することを勧めている。これにより広い視野で物事を考えられ、より自分の価値観を見極めることができる。

またコヴィー氏は「役割と目標を特定する」こともミッションステートメントを書くときは大事だと言う。「それぞれの役割で達成したい目標を定める」ことで、バランスが取れ、真に自分の価値観を反映したミッションステートメントにすることができる。

第三の習慣:最優先事項を優先する

これは上述の内容をもとに言えば「第二の創造」でありマネジメントにより設計図に基づいて物を作るための習慣である。自分の価値観に沿ったミッションステートメントを効果的に実行することとも表現できるだろう。

これには意志の力を使い決断と選択を行えとコヴィー氏は主張する。日々の生活において、自分の価値観に照らし合わせ、決断と選択を行うことで、自分の意志によってマネジメントする力がついてくる。

では自分はどれくらい意志の力を発揮できているだろうか?これは「誠実さ」すなわち「自分と約束しそれを守っているか」の度合いで測ることができるとコヴィー氏は主張する。「誠実さは人格主義の根本をなし、主体的な人間として成長するために欠かせない物だ」とコヴィー氏は主張する。

僕はこの誠実さについて読んだとき、信号の赤渡りについて思いを巡らせた。僕の良心が叫ぶ価値観からすると、赤信号を渡ることは許されない。どんなに車通りが少なく、その信号を待つことがどんなに非効率的であろうともである。誠実であることはときに非効率だと感じる。しかし効率を優先して良心に叫ばれる耳の痛みを思うと信号を待つほうが効果的なのだ。

この例のように、この第三の習慣では効率よりも効果的であることを優先する。効率的にタスクをマネジメントするのではなく、自分の価値観に沿って決断と選択を行うのだ。このためにコヴィー氏は「最優先事項を優先する」ことを勧めている。感情や効率、その場の雰囲気に流されることなく、自分の価値観にそって最も重要なものを優先するのだ。

このためには自分の価値観を見極めておく必要がある。価値観が見極められなければ赤信号を渡るべきか渡らないべきか、自分で決められないのだ。気分がいいときは渡らないが、友達が一緒にいるときは渡ってしまうことになる。これでは価値観に沿って行動することは叶わない。このため、第三の習慣には第一、第二の習慣が必要なのだ。

コヴィー氏は最優先事項を優先するために計画立ての新しいツールを提案している。それは従来の効率重視の時間管理と異なり、タスクを緊急度と重要度で分類する。そして緊急ではないが重要なものを第二証言とおいたとき、第二証言に時間と労力を割くよう計画立てすることをコヴィー氏は提案している。

この計画立ては1週間単位で行い、以下のステップで進めることが推奨されている。
①役割の明確化
②目標設定
③スケジューリング
④1日単位の調整

このステップで計画を立てることで原則に基づき、良心に導かれ、目的意識を持ってバランスがとれ、広い視野をもった計画立てができるとコヴィー氏は主張する。

実践してわかった落とし穴

最後に冒頭言ったの落とし穴について説明する。「7つの習慣」を実践する際の難しさは内容があまりに抽象的すぎることである。初読時は「原則ってなに??」となって10回は該当箇所を見返した。そしてそこにある抽象的な定義に絶望し次の日にはわすれていた。

同じことが実践の際にも起こるのだ。本の中には勇気づけられる具体的で劇的な実践例がたくさん盛り込まれている。そににモチベートされて初めて見ても三日坊主で終わるのだ。

なぜなら実践する内容が抽象的すぎて、日々の生活で効果を実感しづらいから。ミッションステートメントを考えていてもなにも変わらない。ミッションステートメントを書き上げたいならそのためのモチベーション設計を行う必要があるのだ。

そのために僕は第三の習慣「1週間の計画を立てる」ことをおすすめする。1週間の計画を立てることは日々の行動に変化を与える。そして「第二象限」の活動として週に数時間ミッションステートメントを立てる時間をとれば、モチベーションを維持しながらこの本の内容を習慣的に実践できるだろう。

実を言うとこれはあくまで仮説だ。この先は自分で実証していきたいと思う。

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