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【恋愛小説】夢 ❁3mins short love story❁



先にベッドに横たわり、枕の位置を直しながら
深緑色のシーツの皺を伸ばすように貴方が腕を伸ばす。



つい数時間前まで綺麗にセットされていた
貴方の前髪が額に降りてきていて、
長い睫毛に触れそうで
触れなかった。


こんなに長かったのかと思いつつ、
違う印象の貴方に少し胸が高鳴った。



貴方の顔にかかる髪の毛を掬おうと
私は手を伸ばしかけた。



その瞬間、



閉じていた貴方の目が開いて私の瞳を捕らえた。
そして、私の手は行き場を無くして空を掴んだ。



『おいで。』



低くて甘いその一言に胸がざわめいて狼狽えた。


それはまるで嵐が来る前の静かで激しい秋の風に
木々が揺れて舞い落ちる葉のように。


ゆっくりと弧を描いて、
遠回りをしながら堕ちていくように。



きっともう知っている。 
墜ちることから逃れられないことを。



ふとそんなことを思いながら、
窓の外の月明かりに照らされた木々に一瞥をくれて、


貴方の腕の中に堕ちた。







貴方の腕の中で、夢を見た。




たとえそれが一夜限りの夢だと知っていても。




『夢』 FIN

最後まで読んでくださったことをとても嬉しく思います。 またあなたが戻ってきていただけるように、私なりに書き続けます。 あなたの一日が素敵な日になりますように🌼