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秋の空を見上げて

昨日まですごく暑かったのに、窓を開けてみたらとても心地の良い風が部屋に入ってきた。外に出てふと空を見上げたら、なんだか空が高い。
まだまだ暑いと思っていたけれど、待ち焦がれていた私の大好きな季節がとうとうやってきたらしい。

好きな季節

いちばん好きな季節は?と聞かれて「秋」と答えるようになったのはいつからだろう。

昔は秋がいちばん微妙な季節で、特に興味のない季節だった。(失礼)
春は入学や卒業、新学期となんだかドキドキ胸踊る季節。
夏は長くて嬉しい夏休みがあって、旅行に行ったりと楽しいことが多い。
冬はクリスマスやお正月。私は誕生日が12月なのでイベントづくしの季節。

では秋は?長いお休みもなければイベントごともない。
小学生の私にとって、芸術の秋もスポーツの秋も食欲の秋も、特にピンと来なかった。まぁ、運動会は大好きだったけれど。

昔は何かしらのイベントで季節を感じていた気がするけれど、歳を重ねるごとに風や気候、匂いなどから季節を感じ、それを心地よいと感じるようになってきた。
特に季節の変わり目、まさに今みたいな時期はそれがすごく敏感になり、何かのタイミングで「あぁ、また季節が変わるな」と感じて、なんだか懐かしいような、胸の奥がきゅっとなるような感覚になる。
その感覚が、なんとも言えず好きなのだ。

高い秋の空

昔、天気予報士がテレビで「秋の空が高く見える理由」を話していた。
うる覚えだったので改めて調べてみたところ、秋の高気圧は空気が乾燥していて、青や紫などの波長が短い光を強く散乱する分子多く含んでいるため、夏の空よりも青々と見えて高く感じるのそう。
また、広く晴れをもたらす移動性高気圧と、雨を降らせる温帯低気圧が交互に通過する秋。この温帯低気圧の温暖前線は巻積雲と呼ばれるイワシ雲やウロコ雲が発生しやすく、この雲は空の高いところに位置するらしい。
視線の位置が高くなることに加え、雲の下に空が見える割合も大きいから空が高く見えるんだとか。
うん、ちょっと難しいけど意味はわかった。

それまでなんとなく「秋は空が高く見える気がするな」と思っていたので、その話を聞いてから、秋は空を見上げる回数が増えた。

どんなに都会に住んでいても、それでも高く感じる空。
空気が澄んでいて、どう頑張っても手の届くことのない高い高い空を見上げる。
それまでは肌がじっとりとするような湿気と暑さをまとっていた空気が少しだけスッキリしていて、肌を撫でる風もとても気持ちが良く、心地いい。

何とも言えない、あの瞬間がすごく好き。

昨日もふと見上げた高い空と、肌を撫でる心地の良い風で、ちょっと心がキュッとして、再び行きたい場所に思いを馳せた。

秋の思い出

社会人になってからの私の「夏休み」はいつも9月だった。
旅行会社という仕事柄か、職場の人は夏休みになるとどこかへ旅行に行く。全員一気に休むことはできない為順番なのだけれど、そこは年功序列。
みんな安くて空いている時に旅行に行きたがるので、入社して初めての夏休みはお盆だった。
2年目以降は少しでも航空券が安く取れる9月に休みを取ることが増えた。
長期休暇も仕事のピーク時期を過ぎた秋に取ることが多い。

なので私が旅に出る時期はいつも秋。
高校時代からの親友と休みを合わせて海外旅行へ行くのが毎年の楽しみだった。

記憶を呼び起こす瞬間

当時よく聞いていた曲。昔使っていた香水の香り。
それに触れると、いきなり脳がタイムスリップしたかのように、昔の出来事やその時の記憶がいきなり鮮明に蘇ってくる瞬間がある。
「あぁ、あの時こんなことを考えていたな」と懐かしくて胸がいっぱいになったり、笑えてきたり、そして何だか寂しくなったり。

秋の空気は香水の香りと同じように、私を十数年前の秋に戻してくれる。


まだ20代前半、仕事にも慣れてきたあの頃。
仕事に明け暮れながらも、休みのたびに旅行に行って、いろんなことを思って、感じて、たくさん夢を見た。


秋の空気はその時の自分を鮮明に思い出す、そんな季節。

写真はたくさん残っているけれど、その時の記憶を掻き出したことはない。
行きたくても行けない、この状況下だからこそ
昔の旅の思い出をゆっくり振り返るいい時間かもしれない。
何だか色々な記憶が蘇ってきたので、せっかくだから遠い記憶を頼りに旅の思い出を綴っていこうと思う。

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