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大規模災害発生時のチェーンストア組織管理

チェーンストアには、人々の暮らしを守り育む役割がある。それは災害発生状況下でも変わらない。自社がその役割を果たせるかは、その時に組織として機能しているかどうかが決め手となる。平時とは異なる環境で、いかなる体制を築けば組織活動が進められるのか。災害発生時の組織管理の要点を解説する。(日本リテイリングセンター リサーチディレクター 渥美 六雄)


非常時に組織が動けなくなる理由

そもそもチェーンストア経営は、日頃からとても複雑な組織活動を行っている。そこでは物理的に隔てられた職場にいる幅広い専門分野に渡る人々が、上手く力を合わせながら組織一体として活動することで、事業が営まれている。

この緻密に動く組織活動は、経営方針の通知と理解、計画の共有と規律、問題点や例外事象の摘発と報告といった、首尾一貫した情報交換の仕組みによって成り立っている。

ところが、非常時にはこの組織管理の前提が崩れて、普段ならば支障なく済む当たり前のことができなくなる。間違ったことを行って失敗する以前に、どうすべきか判断できず、組織活動が停止してしまう。

▲[資料1]災害発生時のチェーンストア組織活動の失敗例

資料1に挙げるのは、これまでの地震や浸水、大雨や電力喪失といった災害時に、実際にあったチェーンストア組織の反省事例である。これらの失敗は平時では起こらない。

どこかで不具合が生じても、責任ある立場の人のもとに報告され、適正に問題解決が図られるように、組織体制が構築されているからだ。しかし、大規模な災害が発生すると、情報連絡手段が断たれたり、本来任務を果たすべき人が不在であったり、誰の領分なのか判然としなかったりという事情で、通常の組織を動かす仕組みが機能しない。

そこで、改めて組織管理体制を打ち立てる必要が出てくる。要となるのが、災害対策本部という特別な機関だ。

災害対策本部の発足

非常事態に対処するための組織活動の意思決定機関。それが災害対策本部だ。これによって、失われた情報連絡の流れと、組織活動の意思決定の所在を明確に示すことができる。

ここに情報と指揮権を集中させることで、各自が何を成すべきか、役割を伝えられるようになり、組織活動を阻む「傍観」の構えや、自発的行動や判断による混乱を避けられる。社内の各部署や直接指揮権の外にいる人々に対する説明や要求も、ここで一元化して行う。

資料2は、災害対策本部の分業体制を表している。

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