お世話しているつもりが、お世話されている! お散歩アプリ『ピクミン ブルーム』
8月24日に日産スタジアムで行われた藤井風のライブに行ってきました。
夢のような時間でした。
ライブのフィナーレに、ステージ後方から花火が派手に打ち上がった時、おおおーすごい!と思うと同時に、さみしい気持ちも湧き上がってきました。
私の夏は終わりました…感無量です。
さて今回の【勝手に分析!Good CX】は、そんな哀愁を胸にいただきつつ、「運動不足を解消するお散歩アプリ」について分析していきます。
急に始まったピクミン生活
みなさんはピクミンを知っていますか?
ピクミンは、任天堂が開発・発売したアドベンチャーゲームシリーズ『ピクミン1〜4』に出てくる、植物のような不思議な生き物。
私がハマったのは、昔からあるこのピクミンのゲームではなく、ピクミンが運動促進を手伝ってくれるお散歩アプリ『Pikmin Bloom(ピクミンブルーム)』です。
Nianticと任天堂が共同で開発した位置情報ベースのモバイルゲームで、プレイヤーが現実世界で歩くことによって、ピクミンの苗を育てたり、花びらを集めたりできます。歩数に応じてゲームが進行し、歩けば歩くほどピクミンが成長します。
ピクミンのことは何となく知っている…という程度の知識でしたが、友人がこのアプリにどハマリしていたのを見て、リモートワークで運動不足だし、私もやろうかな〜と気軽な気持ちでインストールしたのが始まりでした。
さすがの任天堂、チュートリアルが分かりやすい!
まず驚いたのはチュートリアルのわかりやすさ。
本編に入る前に、実際に本番と同じ動きを試しにガイドされながらやることで戸惑いが少なくなります。
ピクミンを鉢から引っこ抜くスワイプの動き(指を下から上にピッと動かす)がちょっとクセになります。このスポンッ!って抜ける気持ちよさは「またやりたい」という気持ちを刺激しているんじゃないかと思いました。
導入フェーズでこうした小さな成功体験を与えてもらい、「おお、もっとやりたい」という気持ちが高まっていきます。
「かわいい」は、強力な行動の動機になる
世の中にはすでに、ウォーキングをサポートするアプリやサービスって色々ありますよね。以前、私が血迷ってジョギングを始めようかなと思った時は、かの有名な『ナイキ+(NIKE+) ※』も使ってみたことがあります。
※今は「ナイキ+ ラン クラブ(NIKE+ RUN CLUB)」
でも…全然続かなかったんです。でもピクミンブルームは今のところ毎日続けられています。
それはジョギングよりも軽いウォーキングだからということもありますが、「自分一人でがんばらなきゃ」という気持ちから、「ピクミンたちを育てたいから、今日も一緒にがんばろう」という気持ちに変わったことが大きいと思っています。
ナイキ+にも仲間と一緒に走れる機能があることは知っていますが、本気度が高く、ガチ勢が多そうなコミュニティに、ゆるゆるな自分が入れる気は1ミリもしませんでした…。
自分が歩き出すと、アプリ上でピクミンはその後ろをぞろぞろとついてきてくれます。そして道中でいろんなアイテムを拾ってくれたり、遠くの場所で見つけたアイテムを後からおつかいで取ってきてくれることがあります。
最高にかわいいのは、それらを献上してくれる時の「アイテムとってきたよー!」といわんばかりの上目づかい…。
この目を見ると、ありがとう、この子たちもこんなに健気に頑張ってるんだから私もやらなきゃ!という謎のやる気が湧いてきます。(以前は友人に同じようなことを言われても「はて?」としか思っていなかったので、やってみて自分でもこんな気持ちになるというのは意外でした)
また、ピクミンは何も喋らないので、「もっと歩こうよ!」など鬱陶しい指示をしてこないのも良いです。あくまで自分のペースでできるようになっています。
恐怖マーケティングだけじゃない、人が動くポイントを知っておきたい
もう少しCXの観点で考えてみましょう。
私たちがクライアントワークで、人の行動変容を促すためにアイデア出しをする時、まず考えやすいのは恐怖マーケティングのやり方です。
こうした脅し表現は、実際に人の興味を引くには効果的ですし、私自身も過去にこうしたヘッドラインを書いたこと、何度もあります。
でもこうしたネガを解消したいがためのモチベーションは、「継続」のフェーズに至った時にはどうでしょうか?
嫌だけどなんとかしなきゃ...という気持ちでウォーキングに出かける毎日って楽しいのでしょうか。
ピクミンブルームはもう少し違ったアプローチだと感じます。
ピクミンと歩くのが楽しい、自分の後をついてきてくれるのが愛らしい。
戦略的に歩くとデコられたピクミンがゲットでき、収集欲がほどよく刺激される。
1日にやり込める範囲に制限があるので、やりすぎで疲れることがない。(早く明日になって続きをやりたい!とすら思える)
こうしたユーザーの「明日もついやりたくなる心理」を理解した設計が功を奏していると感じます。
気がついたらいつもより遠回りして歩いていた。いつもとは違う道順でスーパーに向かっていた。強制的ではない歩の積み重ねで、私も気がついたら、レベルをぐんぐん上げ続けています。
こうした運動促進のようなアプリは、最初はそれほど前向きではない動機で始めたのだとしても、やはり長続きする秘訣は、楽しみながらできる、自己肯定感を高めてくれるということではないかと思います。
私もはじめは「歩いてピクミンをお世話しなきゃな〜」と思っていましたが、本当のところは、彼らに「歩かせてもらっている」自分に気が付きました。
これからもあまり一気にレベルアップを目指さず、ゆるく続けていきたいと思います。
ちなみに、この前知ったんですがピクミンの歌ってあるんですね。
「引っこ抜かれて、あなただけについて行く
でも私たち愛してくれとは言わないよ」
せつなすぎます。ますます好きになりました。
(執筆者:エクスペリエンスデザイナー 池田映子)
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