コミックエッセイ描き方講座を受けた話
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コミックエッセイ描き方講座を受けた話

9月から11月まで、隔週で元KADOKAWA編集者松田紀子さんの「コミックエッセイ描き方講座」を受講していました。

講座は全部で5回(オンラインでの講義4回+発表会)+松田さんのコーチング。目標は、一冊の本を作る想定で(最大)12ページのコミックエッセイを完成させること。

受講生は11名(初めてコミックエッセイを描く方、SNSなどで発表している方、プロの方などさまざま)でのスタートでした。


感情を見つめること、自問自答すること

全4回の講座は内容盛り沢山で、毎回メモを取る手が止まりませんでした。

もともと好きでコミックエッセイを読んでいたので、なんとなく知っているような気でいたのですが、実際に学んでみると、全然、ほんとに全然わかっていないし、どこかで甘くみていたということを思い知りました。

共感性、読後感、伝えたい相手を具体的に考えること(なんとなくで書かない)の大切さ、コミックエッセイにもフィクションはアリで、ほっこり〜切実なものまで幅広く表現できることなど、

前半の講義だけでもたくさんのことを学びました(それまではコミックエッセイというとざっくりと「実用系」「生活系」「お仕事系」、それも全てノンフィクションという印象でした)。

とくに印象に残ったのは、「感情を見つめること」、「自問自答すること」「それを描ききることで自分自身が癒やされるか」という松田さんの言葉です。

「なんとなく」で済ましてしまいがちなところを流さずにしっかり感情を見つめて、自分の視点で言語化し、かつその先に、自分自身が癒やされるイメージがわく作品を作る。
とっても難しいことですが、せっかく受講するなら全力で挑戦したいなと思いました。


描きたいテーマが浮かんできた

松田さんの言葉を染み込ませていくうちに、自分の中に描きたいテーマが浮かんできました。それは限られた友達にだけ話したことのある個人的な体験で、過去に文章にしたりしてみたけどあまりうまくいかずここ数年心の底に沈めていたものでした。

具体的にいうと、「人生でピンチに陥った時に子どもの頃の自分に出会い、対話をしていくことで自己卑下や孤独への恐怖をなくし、本来の自分をとりもどしていった」というものなのですが、ちょっとスピリチュアルだし、人によっては苦手かもしれないし、なかなか信じてもらえないだろうなと思って積極的に人に話したことはありませんでした。

でもコミックエッセイというジャンルの幅広さ、懐の深さを知ったことで、そのテーマに挑戦してみたいと思った私は、ネタシートに思いつく限りのことを書いて、何度もテーマを練り直して(若干こねくり回しすぎたかもしれない)、2回目の講座の後の松田さんの個別コーチング(一時間)にのぞみました。


「これ、人間で描いてみたらどうですか?」

いざ、コーチングの時間。自分的に練りに練ったテーマは「この方向で」と落ち着きほっとしたのも束の間、なんとなくこんな絵(↓)でいこうと思っているんですがという1ページをみてもらうと

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「これ、人間で描いてみたらどうですか?」

と松田さん。

当初このかぼちゃ人間で行く気満々だった私は(今となってはなぜこれでいこうと思ったのか自分でも謎ですが大真面目にそう思っていました)「いや、、無理です、、」とこたえました。

なぜなら、人間が描けないから。

といっても、何度か描いてみたことはあります。

これとかこれとか、中には(2年前ですが)note内のコンテストで賞をいただいたマンガも。(発表会では人間を描くのは初めてといってしまいましたが、正確には「本格的に」描くのは初めてでした)

産後のマンガは、コアラじゃなくて人間で描いていきますと宣言したこともありました。

でも何度挑戦しても苦手意識は抜けず、「やっぱり私には描けない」と思って、描き慣れた(大好きな)コアラの絵に戻りがちでした。

やっぱり動物が描きやすいし好きだし、その方が生々しくならないし、人間よりも動物で描く方が向いていると思っていました。
だから今回も、動物ではないけれど人間でもない、苦肉の策でかぼちゃ人間を編み出したのでした。

でも松田さんから、「人間で描いた方が共感性の面でも伝わりやすくなりますよ」という話を聞いて徐々に心が揺れ、最終的には「一冊分描けば誰でも必ず描けるようになります!」という言葉に背中を押され、人間を描くこととがっつり向き合ってみようと思いました。

その頃には講座も折り返しで、残り2回(キャラクターの回とネームの回)を残すのみでした。

毎日子どもが寝た後に部屋にこもり、ラジオを流しながら限られた時間いっぱい絵を描きまくり、自分が描けそうな人間を探る日々が始まりました。

子供っぽくならないように、等身はできるだけ高く、線は少なめに、無理なくかけて、親しみを持ってもらえそうな「人間」。

いろんな作家さんの絵をみて勉強して(とくにこやまこいこさん、野原広子さんに影響を受けました)、キャラクターの回の講座を受けてからはそれも参考にさらに描いて描いて描いて。もう夢中でした。


思いがけない人がたくさん出てきた

これなら描けるかもという主人公のキャラクターがようやく定まってくると、当初予定していた自分の中の物語が思わぬ方向へ動き出しました。脇役の人物が何人も脳内に現れたのです。

この人(主人公の幼なじみ)は想定してたけど、あんな人(主人公の同僚)もこんな人(ちょっと意地悪な先輩)も?そしてこの人、そんなこと考えてたの?あんな過去があったの?と、自分でもよくわからないままその人たちの行動や特徴をメモする日々が続きました。

作業をする夜だけでなく、昼間子どもを抱っこしたり離乳食をあげている時間にも思いつくことが増え、スマホのメモ帳に記録して、夜になるとそれをまとめたりしていました。

そのころの夜な夜なの作業は、くるしくて大変で、間に合うか不安で、でもめちゃくちゃ楽しくて。あんなに夢中で何かを作ったのは、いつぶりだろう。

この人たちを早く、もっとたくさん描きたい、この人たちの決断を、最後までちゃんと自分が見届けたい、という気持ちでハイになって課題のキャラクターシートやネームに必死に取り組みました。


発表会で感動しまくった夜

そんな感じで必死にやっていたせいか、なんとか仕上げた12ページを松田さんに送った後、私は完全に燃え尽きました。何度も見返しすぎて何が何だかわからなくなっていたけど、とにかくやり切った感、今の自分にできることは出し切ったぞという達成感でいっぱいでした。

興奮がおさまらないまま、数日後にはnote pleceで行われる発表会がありました。

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マンガに必死で頭から抜けていましたが、妊娠中から夜間に外出していなかったので、ちゃんとした夜の外出は(おそらく)1年半ぶり、加えて育児とコロナで人と会うことも極力控えていたので、スーパー、病院、美容院以外で人とちゃんと会うのはほぼ半年ぶりでした。

さらにここ数日の疲労ともともとのあがり症と人見知りで、なんだか変なテンションでドキドキしながら会場へ向かいました。

会場でスライドに映された皆さんの作品を見ていると、それぞれの人生が垣間見えるようでした。

この講座がなかったらきっと出会わなかった人たちの、心の深い部分から取り出した作品をみているという状況がなんだかとても尊いものに感じたり、実感を伴ったまっすぐな作品に感極まって泣いてしまったりしました。

さらにグランプリの小池ぬーみんさん、準グランプリのまりげさんのスピーチにももらい泣きをして、全員が順番に松田さんから修了証を受け取り(手書きのメッセージがうれしかったです!)、終了後は(私は残念ながら打ち上げに参加できなかったので)慌ただしく駅へ向かい、電車に乗り、乗り換えた山手線の中でも受講生限定のサークルに感想を書き込んでいました。ああ、すごかった。すごい1日だった。本当に参加してよかった。

そう、本当によかった。

よかった。

……でも。


翌日の落ち込みと、嬉しいDM

翌日、興奮から覚めはじめた私は、落ち込んでいました。
どの人の作品も素晴らしかった。勉強になった。楽しかった。私自身も8月の応募時点では思いもよらなかったテーマに挑戦できた。はじめて本格的に人間を描けた(と自分では思えた)。受けてよかった。そう、ほんといいことばかり。

でも。

心の隅からじわじわ滲み出てくるものがありました。悔しさでした。

めちゃくちゃ頑張ったからこそ、グランプリを獲りたかったというのが正直な気持ちでした。

実力を考えたら、遠く及ばないのはよくよくわかっています。でもこの3ヶ月間本当に必死で考えてあーでもないこーでもないと試行錯誤して、自分の内面を覗き込んで、新しい登場人物たちと出会い、ときに痛みを感じながらも夢中でやってきたので、何かを掴みたかった(結果を残したかった)というのが正直な気持ちでした。

「あー、頑張ったのになあ」と落ち込んでいると、みかねた夫にすすめられたサンボマスターの「できっこないをやらなくちゃ」のまっすぐな歌詞に泣き、

私の創作をずっと応援してくれている友だちに「松田さんや受講生の皆さんや作品の登場人物に出会えたことが何よりすごいことだよ」と言われて、「本当その通りだよ〜」といってまた泣き。

ひととおり感情を出し切ると、ようやくちょっとスッキリしました。

そして改めてこの3ヶ月間濃かったなあという気持ちと、さてこれからどうしよう(1冊分の構想はあるけど、一人で描いていけるのか?一人だと絶対にまた挫折しそうだあ)とぼんやり考えていると、受講生仲間のみーきちさんがDMをくださいました。

みーきちさんとは受講中もnoteを通して少し交流があり、実際にお会いできたらお話ししたいなあと思っていたのですが、私がド緊張していたりすぐに帰ったこともありお話しできず終いだったのでした。

そして急きょ、週末に二人でお茶をすることになりました。

続けていく方法はたくさんある

作品の感想を伝えあったり、いつ・なぜマンガを描きはじめたのか、どんなことを描きたいのか、コミックエッセイ講座の感想などなど、みーきちさんといろんなお話をしました。たのしくてたのしくて時間があっという間でした。

思えば、絵を描く時はいつもひとりでした。

直接感想をもらうのは夫と前述した幼なじみの友だちの二人で、実生活でも他の人にはほとんど言っていないし、かといってオンラインで同志がいるといえばそうでもなく。

今回の講座中は自分のこと(育児含む)に精一杯で、受講生の方達とそこまで積極的に交流もできず、がっつり創作について語り合うことはできませんでした。

なのでみーきちさんとお話ししていると、「絵を頑張っている仲間」がいるってこんなに楽しくて心強いんだという思いでなんだかもう胸がいっぱいになりました。

そして悩んでいた「これからどうするのか問題」について、モチベーションを保つ方法のひとつとして「みんチャレ」というアプリ(テーマを決めてグループを作り、互いに刺激し合いながら継続していく)を使うことなど、創作を続ける方法はいろいろあるみたいですよ〜ということを教えてもらいました。

もうもう目から鱗が落ちまくり、でした。
1冊分しっかり作りたいなら、本当に強い心を持って孤独にコツコツやっていくか、編集者さんなど誰かと組んで人の気配を感じながらやっていくかしかなくて、そのどちらにもなれない私は一体どうしたらと思っていたのですが、道はひとつじゃないんですね。

創作を続けていくにはいろんな方法があることを教えてもらい、急に視界が開けたような気がしました。
そして数日前までの落ち込みが嘘のように、今後も創作を続けていくために自分にあったペースと方法を探ってみよう、と前向きなきもちになりました。
みーきちさん、声をかけてくださって本当にありがとうございます。

「welcome to my little universe」

育児との兼ね合いを考えた結果、講座で作り始めたマンガは(みーきちさんが教えてくださった「みんチャレ」の力を借りつつ)半年〜1年かけてこれからもコツコツ作り続けていくことにしました。せっかく出会えた登場人物たちのことを、(時間はかかるとおもいますが)なんとか最後まで描ききりたいと思っています。

そして育児をしながらでも続けられそうなこととしてもうひとつ、毎日イラストを1枚投稿することも決めました。(11月17日からTwitterではじめています)


マンガではなくイラストにしたのは、発表会の日に受講生の中に「イラストの線がいいね」と褒めてくださった方がいて、それが自分にとってはとても意外で嬉しかったから。

ポートフォリオがわりに(なるのかわからないけど)イラスト専用のInstagramアカウントを作って投稿を始めました。

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@kawase_haru です。よかったらフォローしてください。


#illustration などのハッシュタグを追っていろんな人の作品を見ていたところ、偶然見たある海外のイラストレーターさんのプロフィール欄に、ハッとする言葉が書かれていました。

「welcome to my little universe💫」

思わず声が漏れました。本当そう。本当にこれ。これ、これに尽きるよ。と思いました。

この言葉のとおり、みんな小さな宇宙をもっていて、創作ではそれを自由に表現してる。そこに優劣も人の評価も何もない、ただ自由に表現できればいい、それがすべてなんだ、と心からおもいました。

そのフレーズに出会うために自分はInstagramのアカウントを再び作ったのかな?と思うほど胸を打たれました。

こじつけかもしれないけど、コミックエッセイも同じで、自分の中の宇宙(感じたこと、悩んだこと、経験したこと、見えるもの見えないものも含む自分自身のすべて)を表現することなんじゃないかなあと思いました。


最後に

コミックエッセイ描き方講座を受講したことで、私は以前より少し?だいぶ?変わりました。

コミックエッセイの魅力と懐の深さを知り、自分の過去を振り返り、苦手意識のあった人間を描くことに初めて正面から挑戦し、12ページをなんとか仕上げました。それは、8月に松田さんへ志望理由を送った(日常マンガを描くつもりだった)頃には想像もしなかった未来です。

そうして出会えた登場人物たちとは、これからもゆっくり付き合っていこうと思います。まとまってきたらなんらかのかたちでアップしていきたいと思っているので、もしよかったらその日を気長に待っててくださるとうれしいです。

そして講座を受講したことで出会えた人たちと、これからも時々励まし合いながらそれぞれの作品作りに励んでいけたらうれしいなと思っています。

松田さん、受講生の皆さん、これを最後まで読んでくださった方(めっちゃ長かったですよね、6000字でした)、本当にありがとうございました。

Twitter:@mkawasem

Instagram:@kawase_haru

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川瀬はる

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