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高専と大学のあれこれ

大学教員として働く中で,高専からの編入や,高専生のインターンシップ,高専との共同研究,高専卒の大学教員など,高専と関わることは意外と多い。

その中で,高専には専攻科や準学士など,一般には多少わかりにくい独特の制度がある。

自分は高専卒でもないし,高専で働いたこともないので,以下の内容は全て書籍やネットからの情報になるが,自分の理解のためにまとめてみた。

概要

高専の正式名称は,高等専門学校である。

1962年に最初の国立12校が設置され,今では,滋賀・山梨・佐賀・神奈川・埼玉の5県を除く全国に57校(国立51校,公立3校,私立3校)ある。

高専は,中学校の卒業者を受け入れ,5年間の一貫教育を行う高等教育機関である。

一般的な高校よりも2年間長く,多くが全寮制を敷いている。多くの高専が学生寮を併設している(修正しました)。

元々は,高度経済成長期における産業界からの技術者育成の要請を受けて誕生した経緯があり,そのため,大きく工業系と商船系の学科に別れているが,経営情報学科や,国際流通学科などの学際的な学科を設置している高専もある。

これらの専門科目に加えて,一般科目をバランスよく配置した5年間の教育課程により,技術者に必要な教養と専門知識を身につけることを目的としている。

5年間の課程を卒業すると,準学士と呼ばれる「称号」が付与される。これは学位に準ずる称号であり,学位ではない。

2年生の短期大学は,高校の3年間と合わせると高専の5年と同じ年数になるが,短期大学を卒業すると,短期大学士と呼ばれる学位が授与される。

こちらは確かな学位であり,準学士よりも格は上になるが,現実的にはそこまで区別されていないようだ。

ちなみに,専門学校を卒業すると,専門士と呼ばれる称号が付与される。

専攻科

高専を卒業した学生の進路は,主に,①就職,②専攻科への進学,③大学への編入の3つである。

2020年度のデータだと,就職58%,専攻科17%,大学編入22%となっている(その他3%)。

https://www.kosen-k.go.jp/Portals/0/resources/letter/kouhou/gaiyou2020.pdf#page=18

専攻科では,5年間の高専教育の後,さらに2年間のより高度な専門教育が行われる。専攻科の歴史は比較的浅く,1992年に初めて設置された。

専攻科の課程を修了すると,学士の学位が授与される。

学士は,一般的な大学を卒業することで授与される学位であり,つまり,「専攻科卒業=大学卒業」という扱いである。年数も高校+大学=7年間,高専+専攻科=7年間,で同じである。

制度上同格なので,それぞれの進学率にも大きな差がないのだろう。

面接官などを務めた経験から,大学への編入を希望する学生には「興味のある研究室がある」「大学院に進学したいので早めに大学に入りたい」のようなアカデミックな理由の他に,「大学が実家に近い」「就職の幅が広がる」「色んな属性の人と関わりたい」などの理由があるようだ。

編入は非常に一般的で,自分の勤める国立大学でも毎年必ず編入生はいる。

大学院

高専の組織内には専攻科よりも上のカテゴリーはないことから,専攻科を卒業した学生の進路は,就職大学院への進学の二択となる。

同じく2020年度のデータだと,就職が66%,大学院進学が32%のようだ(その他2%)。

大学院は大学とは別の機関なので,専攻科卒であろうが大卒との違いはない(ともに入学金が必要)。

ただし,研究室では大多数が内部進学であることから,専攻科卒の学生には,学部時代から出来上がった人間関係の中に入り込む必要がある。

旧帝大などのレベルの高い大学の場合は,他大学から進学してくる学生も一定数いるので,それほど心配する必要はない。

大学院は修士と呼ばれる前期課程で終わる学生が多いが,研究職に興味を持った学生は博士と呼ばれる後期課程に進学する。

そのため,専攻科卒や大学編入者であっても,博士を取得し,その後研究者や大学教員になる人は多い。

現役の高専生や高専への入学を考えている中学生,その親御さんには,高専の先には修士課程や博士課程などの進路があることも十分知っておいてほしい。


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