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牧師夫人の徒然なるままに(七三七) 「ああ、マルタのような私?」(ルカ一〇)

 ある方が眩暈のため脳神経外科医に診断を仰いだ時のことです。医師はX線などの資料から目を離すことなく、あれこれと説明を始めました。その患者さんは次第に憤り、ついには医師と資料の間に自分の顔を割り込ませて「先生、私を見て話してください」と叫んだそうです。最近は検査データにばかり見入っていて患者本人と正面から向き合ってくれる医師が少なくなりました。要するに病人を全人的に診るのではなくて、病気そのものだけに関心があるからなのでしょうか。
 さて、主任牧師を退いてから、夫にも時間の余裕が出来ました。息子が説教をする日曜日には夫もゆとりを持って朝をむかえます。一方の私は夫のスケジュールがどうであれ、これまでと変わらない忙しい日曜日の朝です。犬の散歩に掃除、洗濯、エトセトラ。起床から家を出るまでは分刻みでの忙しさです。
 ゆとりの出来た夫は、私を助けようと思ってのことでしょうか、犬の散歩に出ようとする私の行程に立ちふさがり「リーバイ君。お散歩かい?ほらご褒美」などと言って急いでいる私の持ち時間を奪います。思わず「邪魔しないでよ。私は忙しいの」と冷たい言葉を吐いてしまいます。夫を全人的にみることなく、愛犬の心、夫の思いやり?も無視して、その行為に対して毒舌を吐く私は、マルタのようでしょうか。

安食道子

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