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「演劇は分かろうとしなくていい」―舞台「白昼夢」の作・演出、赤堀雅秋さんにインタビューしました!

編集部のお蝶さんです!

数年前に、ある映画を見て衝撃を受けました。無差別殺傷事件を起こす若者の家庭を描いた「葛城事件」という作品。独善的な父親を演じていた三浦友和さんが、強烈すぎて忘れられませんでした。人間の奥深くにある闇を、容赦なく引きずり出す演出力に、ガツンと一発殴られた気分でした。

「この映画の監督に会って話を聞いてみたい」と、ずっと思っていて、このたび願いがかないました。
劇作家で演出家、映画監督、俳優と多彩な顔を持つ赤堀雅秋さん。

4月22日に広島市内で赤堀さん作・演出の舞台「白昼夢」が上演されるため、東京下北沢の本多劇場で公演を観劇した後、インタビューしました。

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「赤堀作品に出演したい!」と熱望する役者さんが多いだけに、「白昼夢」にも三宅弘城さんや吉岡里帆さん、荒川良々さん、風間杜夫さんと実力と人気を兼ね備えた俳優たちが出演。赤堀さん自身も出演しつつ、「8050問題」をテーマに据え、見ごたえのある作品に仕上げていました。ままならない人生を歩む人々の哀しさを、生々しくリアリティーを持って描き切るのは、まさに赤堀さんの劇作家、演出家としての手腕です。

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ところで、今回の新作「白昼夢」には、気になる…というか、「どうなんだろう??」と観客に感じさせるシーンがいくつかあって、取材でもそういう部分を、赤堀さんにずうずうしく質問してみました。

でも、「うーん、どうでしょうねぇ~」といなされてしまい、質問する方がやぼだなと感じることも。赤堀さんは「演劇なんて、全て分からなくていい」とおっしゃいます。むしろ「分かりやすくて、何かを啓発してくれる作品は良いものとして捉えがちだけど、かえって危険だ」と。

私はその言葉を聞きながら、「ああ、自分は無理に答え合わせをしようとしていたんだな」とふに落ち、反省しました。

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どう解釈していいのか悩ましい芸術作品を見ると、すっきりしなくて居心地が悪く感じる人は多いと思います。例えば、別役実さんやベケット(「ゴドーを待ちながら」の劇作家)らの不条理劇を見ると、普通の人は頭から「?」がいっぱい飛ぶと思います。飛ぶはずです。

それでいいんですよね。

だって、たくさんの人がいてそれぞれ感じ方や考え方は違うのに、答えを一方向に集約していく作品の方が、窮屈ですし、深いとはいえません。一歩間違えたら、それはプロパガンダになってしまいます。

私たちが「どうして??」と疑問に思ったり、見た後で、「…何でああなっちゃうんだろう??」ともやもや感じたりすることこそ、演劇や映画など芸術作品の妙味なんですね。私たちの想像を喚起する「余白」や「隙間」が、実はとても大切なんだなと、実感しました。

赤堀さんは「若い人にこそ、たくさんの演劇を見てほしい。そして、友人と議論してもらえたら」と話していました。そうおっしゃる時の赤堀さんの目はきらきらしていて、思わず見入ってしまいました。

「余白」や「隙間」を埋めようと、(いや別に無理やり埋めなくてもいいんだけど)身近な人たちと演劇や映画について話題にするからこそ、私たちは思考停止に陥らず、豊かになっていくのでしょうね。

※舞台の写真撮影 宮川舞子さん

(編集部・お蝶さん)



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