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不条理な作風がかすかに、いやいや、かなり演劇的~『イニシェリン島の精霊』

編集部のお蝶さんです!
 
久しぶりのキュン愛映画部。
『イニシェリン島の精霊』について、語りたいと思います。
もぉ~私にとっては怖い作品でした!
エンドロールの最中、一緒に見た長男をつっついて「怖い怖い」とつぶやいたら、「映画終わっていないんだから、静かにして!」と怒られました…。
 
ヴェネチア国際映画祭脚本賞やゴールデン・グローブ賞 作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、主演男優賞、脚本賞の3部門受賞、第95回アカデミー賞主要8部門9ノミネート(結局、最優秀作品賞を逃しましたね)など評価がめちゃくちゃ高い作品です。

監督は、「スリー・ビルボード」などのマーティン・マクドナー監督
 
見終わって、「恐怖ぶるぶる」なんだけど、何となく演劇を見終わった後のような感触が残りました。調べてみると、劇作家でもあるマクドナー監督はこのお話を戯曲として書いていたのに、未上演のままだったそう。どうりで。「難解でどこが面白いのか、分からない」という人も多いかもしれませんが、演劇を見慣れている人であれば入りやすい映画のような気がします。
 
舞台はアイルランドの対岸にある小さな島。内戦(北アイルランド紛争)が繰り広げられている本土側からは砲弾の音が聞こえます。島の住人のパードリックは素朴な男。パブでお酒を飲むのを楽しみに日々過ごしていましたが、いつも一緒に飲む年上の友人コルム(彼はバイオリンを奏でる音楽家)から絶交を突きつけられてしまいます。
 
理由は、「残りの人生をおまえのおしゃべりで無駄にしたくない」。
 
理解できないパードリックは関係修復を図りますが、コルムからは「俺にしゃべりかけたら、自分の指を切り落とす」と最後通牒を突きつけられます。
 
「指を切り落とす」。どうしてそうなる!
思わず、その不条理さに恐れおののいてしまいますが……。
 
多彩なとらえ方ができるのも、この映画の魅力かなと。
戦争という大きな争いと島の些末ないざこざ。
戦争が人々にもたらす暗い影。
孤島という密室のような空間での逃れられない人間関係。
善良、だけど無為に過ごしている人と、自己実現に燃える人とのかみ合わない関係。などなど…。
 
私は、コルムの気持ちがちょっと分かります。
人生の中で「集中したい」「一人にしてほしい」時ってあるんですよ。
特に、芸術関係の人には。
自分の指を切りたいとは思えませんが…。
 
広島でこの映画を公開中のサロンシネマでは3月17日、上映後にアイルランド文化論などが専門の広島大学大学院教授・桑島秀樹さんのアフタートークがあるそう。トークを聞くと、さらに深く味わえるかもしれません。

お蝶さんの映画noteより。

ipadでかいてみたよ。

(編集部・お蝶さん)


  


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