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アタシがしたセックス、全部レイプ 〜20代のアタシ〜

第3話


次の日、その駅に行った。昨日死んだ人が居たのに、いつもと変わらないただの駅だった。
飛び込んだ人が立った場所に今立っているサラリーマンはきっと、その死んだ人のことなんて知りもしないし、気にしてない。歩いてる人、電話してる人、タバコ吸ってる人、おしゃべりしてる人みんな、誰も彼もがいつもの日常で、自分や家族や友達なんかのことだけ考えて生きてる。だから、人1人死んだところで、みんなの日常は何も変わらない。
そりゃそうだよね。関係ないもんね。

でも、1人の女の人が花束を持ってホームの隅に立っていた。そして、花束を地面に置き手を合わせた。

この人はきっと、昨日死んだ人の彼女?奥さん?妹?お姉さん?
とにかく、その死んだ人が居なくなって悲しい思いをしてる人なんだ。だって泣いてるんだもん。

突然大切なひとが居なくなったら、困るよね。悲しいよね。話し相手が居なくなって、美味しいご飯を一緒に食べられなくなって、TVを見て一緒に笑い合えない。虚しいよね。

いつもと変わらない駅のホームで、その死んだ人も泣いている女の人も時間が止まってしまっていた。

アタシは駅のホームの隅っこで女の人を見ながらそんなこと考えてた。

いつもの電車に乗って、いつも通りにゆらゆらと揺られ、またいつものアタシの日常は始まる。ラッシュ後の空いた電車が心地よい。

アタシは電車に乗りながらウトウトするのが好きだ。今日もまた、アタシは眠ってしまった。

夢を見た。

死んだじいちゃんが出てきた。

アタシのじいちゃんは酒を飲むと叫んだりいきなり怒ったり、アタシを追いかけてくる。目が合えば怒鳴って、意味もなく家中追いかけ回して捕まえられて叩かれる。逃げても逃げても、息を潜めて隠れても見つかって捕まる。2階の部屋まで階段を上がって逃げても、じいちゃんは悪くなった足を引きずりながら階段を登ってくる。

子供の頃のアタシは、夕方になると酒を飲んで荒々しくなるじいちゃんが怖くて怖くて近寄るのが嫌だった。

夢でもじいちゃんは家の2階に逃げるアタシを追いかけてきた。大声を出して足を引きずりながら階段を登ってくる。アタシは必死で「来るな!嫌だ!来るな!」と叫んでる。

アタシの足をじいちゃんが掴んだ。

もがいても振り解けない。
アタシは必死で足をばたつかせた。

「嫌だ!離せ!」
もがいてもがいて、足に力を入れてじいちゃんの手を振り解こうとバタバタさせた。

その足がじいちゃんの顔面に当たった。じいちゃんは一瞬たじろいで、目をつむった。そして、アタシの足を離した。

でもまた、息を吹き返したかのように目を開いて睨んできた。
そして今度はさらに怒りを込めた唸り声を出して、アタシに向かってきた。

階段の途中で不安定な場所、落ちるのも怖いし、じいちゃんも怖いし、アタシは悲鳴とも泣き声とも言えない声を出してとにかく足をばたつかせてた。

ばたつかせていた足がじいちゃんの体に当たった。

そしてじいちゃんは階段を転げ落ちていった。
簡単にコロコロと転げ落ちていく。

白いフワーっとしたモノの中に落ちていく。そしていなくなった。


続く


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