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MBA日記 人を見ない経営の失敗例 ~自然共生社会の実例

先日のMBAの授業の内容。

日本の「SATOYAMA(里山)」に込められた長期目標は、
自然共生社会。

これに伴う3つの行動指針や6つの視点などがあるが、
要は、
自然環境の許容できる範囲で開発しながら
共存、共生を図りましょう、
というもの。

それに対して失敗例が紹介された
中国の「退耕還林」政策について。

かつて人口増大の圧力で山の上まで開墾され、
農業で山を切り開き、狼は姿を消し、
やがて土壌は疲弊して砂漠になった。
そして地下水が枯渇したハゲ山となったため
畑の段に人工的に溝を作り、雨水を必死に貯めようとした。
しかし、植林をしても木が育たず、草がかろうじて育っただけ。
政府は農業を撤退し、木を植える「退耕還林」政策を打ち出し、
植林作業の間補助金を与え住民・住宅を撤去した。
人のいない農村になった。
木を見て人を見ない政策が展開され、人と文化の繋がりも消えた。

こうして無人のハゲ山ができあがったわけです。

ちなみにこの、空前の生態系修復事業「退耕還林」政策とは

• 生態環境の保護と改善を目的として、土地の砂漠化や水土流失しやすい地域の傾斜地に対して、計画的・段階的に耕作を停止(退耕)し、植林・植草することにより植生を回復(還林)することを指し、2000年から試験的に開始された。

• その主な特徴は、
①耕作を停止した土地や、林に適した荒れ山を造林し、その代わりに住民へ穀物(現金)を提供する(以糧代賑)こと
②自主的に植林した農民には最長70年の経営請負権が与えられる(個体承包)こと

である。

政府主導で自然再生計画を地元農民に推奨したわけだが、
この苗畑をめぐる政府と農民の意識の乖離は以下のようになった。

• 政府の意見
苗畑の経営と管理は相当な林業知識と経験が必要である。
農家は庭先で数本程度の木を植えた経験があるといっても、育苗の専門知識をまったく 持っていない。

• 農民の意見
我々の技術力が多少低かったとしても、村の中で必要な苗を育てたい。
現在、村人たちは、(政府 が)運んできた苗を植えたくないのですが、食糧をもらうために、いやいやながら植えている。
このため、植林地の管理も最低限の木の活着に留まっており、植えた木にも自信を持てず、管理したところで、将来、金になるようなことはないと思っています。

つまり、
地元の農民の気持ちなどを一切考えずに、
頭でっかちの政府が上から戦略だけで押し付けた結果、
農民の意欲が湧かず環境再生はうまく回らなかったという経緯であろう。

人を考えない環境経営が成果とならなかった実例。
これって自然経営だけでなく、
あらゆる会社や組織でも同じことが言えるのではないであろうか。

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