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文系大学教授になる7:指導教授

 社会人が博士の学位を取得するケースが非常に増えてきました。そのまま、実務家として企業や官庁その他で活躍されるだけでなく、博士学位取得をきっかけに、大学教員としての転職を目指す方も増えてきています。人材の流動性が芳しくない日本では、学位を取得して、転職することを前向きに評価しない風潮があることは残念ですが、それでもこの流れは変えられないと思いますし、日本社会を良くするためには、この流れを強化すべきであると考えます。
 リクルートや最近ではビズリーチなど、転職を支援するサイトの活況は目を見張るものがありますが、大学教員としての転職は通常、そうした方法では困難です。転職支援サイトには、大学教員の転職を支援するためのノウハウや実績はまだまだ不十分であると考えられますし、需要に対して供給が圧倒的に多いというアンバランスも、こうした転職を困難にしています。
 真剣に大学教員への転職を目指して博士学位取得や博士課程後期課程の満期退学を目指す場合には、所属する研究室の「指導教授」の面倒見の良さを斟酌する必要があります。研究指導がうまくても、博士学位取得者の就職活動には無関心、というか、それは指導教授の役割ではないと位置付ける先生も多いと思います。弟子の教員としての転職というような経験を有しない大学教授も多いです。また、(著名)大学によっては、博士の学位までは面倒を見るけれども、教員としての就職は自分で公募情報などを介して、探してください、というようなケースがあるということも耳にします(あくまで噂)。
 それゆえ面倒見の良い「指導教授」のゼミに所属できるということが、どれ程幸運なことなのかは、教職への転職といった人生の一大事を無事に潜り抜けた人でないと、なかなか理解できません。しかしながら、そのことを事前に把握して、できれば修士課程・博士前期課程・専門職学位課程に入学するような時期に、将来の師匠=指導教授として師事できそうな先生を探し求めるということが、その後の人生に非常に大きな影響を及ぼします。
 ここで面倒見が良いというのは、決して、学界の長老や大規模研究室を運営して、多くの弟子を抱え、系列でそれなりの教員ポストを確保されているような先生を意味するものではありません。そのようなケースで、上手く転職できることももとより少なくない(いわゆるコネや縁故)ですが、面倒見が良いというのは、教員として転職する際の「テスト」(=書類選考、模擬授業、面接等)に関連して、応募しようとしている院生等の指導を適切にできる先生を意味します(昨今の教員募集は基本的に「公募」です)。非常勤講師の実務経験を少々有していても、講義が下手な博士は一杯おられます(自分のことを棚に上げて…なんですが)ので、模擬授業一つにとっても、何度も練習指導を行うことが採用試験に合格する要因となります。なので、必ずしも研究者としての研究実績をもって面倒見の良い師匠とみなすわけではありません。いや、むしろ、良い師匠とは、就活の支援は研究指導とは別の指導領域として理解し、研究指導に加え就職活動にも積極的に取り組む先生ということになります。そのような先生は多くはないと思われますが、面倒見の良い指導教授を見つけだすこと、それが大きく人生を左右するというのが、私の経験から得られたほぼほぼ確信です。
(2022.05.29)

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