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信頼を裏切るということ ①

世界中に衝撃がはしった
大谷翔平選手と水原氏の件。
信頼していた人の裏切りが、
大谷選手にもたらした
想像を超える衝撃と心の痛み、
お察しします…

違法なギャンブルよりも
多額の窃盗・横領よりも
(もちろん、それも大きな悪ではあるけれど)
じぶんを信頼し、
たいせつに思ってくれている人を
裏切ることの罪は、重い。

私があるホテルのクラブフロアで働いていたとき、
毎月必ずおひとりでいらして、
連泊してくださる
M様という常連のお客様がいらっしゃいました。

スタッフとも当然顔見知りで、
おでかけのときには私たちスタッフにも
必ずちいさなおみやげを買ってきてくださる、太っ腹で明るいかた。
もちろん、クラブフロアの常連客なので
ご自身のお好みがしっかり確立され
高い意識をお持ちゆえに
接客やサービスの細かなところにも
時々ご意見をいただくこともあったのですが
私は、それもこのホテルやスタッフを信頼し
愛してくださっているからこそ 
と有難く思っていました。
(実際、いただいたご指摘は「たしかに!」と思うことのほうが多かった)

ある日、
夕方のクラブフロアラウンジの一角に
マネージャーやチーフが集まり
これまでにないくらい張りつめた、
なんともいえない雰囲気をかもしだしていました。
その中心にいらっしゃるのは、M様。
いつも豪快で明るいM様が俯いて涙を流されている。
それは、心臓がキュッとなるような衝撃的な光景。

聞けば、
連泊中のM様が可能時間帯ギリギリに客室清掃のオーダーを出され
一旦外出されたあと
忘れ物を取りにお部屋にもどられたところ
清掃中のハウスキーピングスタッフが
「こんなギリギリの時間にオーダーするなんてワガママな客、迷惑だよねー!」と
悪口大会の真っ最中。
はからずもそれをM様が耳にされ、
たいそうショックを受けられたらしい。

もうね。
ことばを失います。
M様は、たぶんこの場所を
「第二のマイホーム」と
思っていてくださったと思う。
私たちホテルスタッフは家族。
ここを、スタッフを、愛し信頼し
「心のキャッチボール」ができていると
思ってくださっていたからこそ
ながいあいだ
毎月毎月、決して少なくはない金額を投じて
お越しくださっていた。

M様はまさに
「おかえりなさいませ」
とお迎えするに相応しいお客様。

信じていた、
大好きだった「家族」に裏切られた。
このときM様はきっとそんなおきもちだったのではないかと思います。

私にできることは、
いつも好んで召し上がっているドリンクを
そっとお持ちすることだけ。
窓際のお席で俯いていらっしゃるM様に
役職もない、一介のスタッフが
僭越だとはおもいながら
「あの、M様…この度はほんとうに申し訳ございませんでした…」と
ちいさくお声をかけた途端、
「あなたならわかってくれるわよね」と号泣されたM様のお顔を
いまも鮮明に覚えています。
思わず、もらい泣きをしてしまうほど
そのことばと表情には悲しみがあふれ
なにもできないじぶんがほんとうにせつなかった…

(この思いは、私が尊敬する当時のチーフとておなじで
バックヤードでハウスキーピングの責任者に
涙ながらにM様のおきもちを訴えていて、
その姿からはほんもののホスピタリティを感じました)

その翌月から、何か月経っても
M様のお姿をみることはなく、
月がかわるたびにチーフと
「今月こそいらしてくださるだろうか」「お元気かな…」と
いう会話を交わす日々を過ごし
お会いできないまま、
私は次のステップに向かうため退職。

退職時に
「もしM様がいらしたら渡してほしい」と
御礼のメッセージカードを預けたら
奇跡のようなタイミングで退職翌日に
(なんで?)
「M様、明日予約はいった!!」と連絡が!

そのあと、同僚経由で
無事に復帰?されたM様からいただいた
メッセージカードの
「いままで楽しかった!またどこかでお会いできますように!」
というひとことが、とてもとてもうれしかった。

こんなことを言うと
いろいろモンダイもあるかもしれないけど
ホテルに限らず、
接客をしているかたのなかには
お客様の前(オモテ)では
とってもすばらしいけど
一歩バックヤード(ウラ)に下がったら
罵詈雑言、という態度の人も
少なからずいる。
そのウラオモテこそが、
お客様への大きな「裏切り」だと
私は思っています。

「ほんもの」と「誠実さ」は、イコールなのだ。

ウラオモテなく
心をこめて
全力で

プロならば、「ほんもの」を目指すべし!


#信頼 #裏切り #ホスピタリティ #接客 #接遇 #誠実さ #裏表










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