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「ピエロがお前を嘲笑う」に、遅めの厨二病を呼び起こされる

名前からしていいんだよな。
「ピエロがお前を嘲笑う」。
なんていい響き。

これもずっと観たかった映画の一つ。何せ名前がいい。何度だって言うけどタイトルが良い。しかもポスタービジュアルもいい。このダークな雰囲気が最高。

ちらっとあらすじだけ説明しとこかな。
主人公は「フーアムアイ」と名乗る。出頭してきた彼は、警察が追いかけていたハッカー集団の中の一人。何故彼は出頭してきたのか? 彼の独白が始まる。

結論から言うと、「思ってたんと違った」。
って言うたらあんまりいい印象与えへんかもしれんな。違うんよ。おすすめしたくないわけじゃねえの。
観る前は、重ための社会問題を取り上げたようないわゆる純文学的な作品なんかなって勝手に思い込んでたのよ。だってビジュアルがさぁ。そんな感じするやん。「ジョーカー」みたいな感じなんかなて思うやん。
ぜんっぜんそんなことない。エンタメ要素満載、「カッコいいの詰め合わせ」みたいな作品やった。

正直な話、ツッコミどころは多い気がした。けど、細かいことを気にしなければサイコーにカッコいい。マジでカッコいい。
これを読む陰キャ同志は分かると思うけど、「ハッカーってカッコいい」っていう共通認識があるやんか。あるやんな? 陰キャにとっての「世界」っつーのはインターネットなわけよ。ハッカーってのは、その「世界」を弄んだりひっくり返したり、時には助けたりする存在やと勝手に思ってる。
カッコええやんか。な? 
インターネットっていう「世界」の中を縦横無尽に遊びまわるダークヒーロー。それが「ハッカー」ってわけ。言うとくけど私小学生の知能で喋ってるから正論とか正しい知識とか言うてこんといてな。
そんな陰キャ共のヒーロー「ハッカー」の、「カッコいいとこ」だけを取り出して、煮詰めたやつ。それがこの映画のあらすじよ。まあ観りゃ分かる。カッコよさに溺れようや。

▼▼▼以下ネタバレ&観た人にしか分からん話をするので注意▼▼▼








まず「なるほどな」と思ったのは、ベンヤミンがわざわざ「フーアムアイ」と名乗ったとこ。
これ最初はマジで意味が分からんかった。「フーアムアイて」と。「その後すぐ『ベンヤミン』て自己紹介しとるやないか」と。「じゃあ『フーアムアイ』て何やってん」と。
けどこれアレなんやな。「どんでん返し①」への伏線やったんやな。観終わってしばらくしてようやく気付いた。自分自身のことを「フーアムアイ」と名乗ることで、自分が誰なのか分からないという意識を捜査官に伝えてたのかと。ちっちゃい積み重ねが積もって、「どんでん返し①」の結論に向かっていくわけだ。最初のシーンから「どんでん返し①」までは全部、観てる人を騙すための伏線やったんやな。その尺の使い方アリなん?

もう一個すげえと思ったのが、「インターネット」という世界の表現の仕方。
インターネットという狭い空間を「電車」という場所に置き換えた上で、分かりやすくアバター化した登場人物が出てきて実際に会話する。
結構長いことインターネットはやってるけど、なんか「ハッキング」とか「プログラミング」とか「言語」とか、そういうの一切分からんのよ、私。何がどうなってそうなってんのか、さっぱり分からん。だから、あの表現の仕方は素直に有難かった。
トロイの木馬やっけ? 何かウイルスを仕掛けるっていうシーンがあったと思うんやけどさ。あれも何言うてるかイマイチ分からんかった。けど、「実物として」どういう仕組みなのかを見せてくれてたやんか。どういう仕組みの物を仕掛けるか、それがどう作用するか、それがどうやってバレるかまでちゃんと説明してくれてた。でも、「説明」の仕方がめちゃくちゃ洒落てたから、映画が「解説動画」にならずに成立する。これはね、めちゃくちゃ画期的なアイデアやと思う。インターネットのことを説明するとき、全部あれに置き換えて説明してほしい。そんくらい分かりやすかった。

さっきも言うたけど、確かにツッコミどころは多かったのよ。
例えば、「CLAYが4人組であることになんか意味があったのか」とか。「マリは結局ベンヤミンのどこに惹かれたのか」とか。あと一番思ったのが、「MRX、あっさり捕まりすぎ問題」ね。これは多分、観た人全員思てる。なんでやねん、MRX。お前めちゃくちゃすげー奴なんとちゃうんか。小者の挑発に乗るな。焦ってガラスを割るな。ハッカーってもっと冷静なんとちゃうんか。

ただね、そういう細かいツッコミどころがあるにも関わらず、なんでこの映画がめちゃくちゃ有名なのかってことを喋りたいわけよ、私は。
これね、「忘れてた厨二病ゴコロを取り戻させてくれる」からなんやないか。
よく考えてみてよ。まず、インターネットヒーローである「ハッカー」が主人公。しかも主人公は「なよなよしてて頼りなさそうに見えてるけど本当はすげー奴」。顔の見えない謎の黒幕、「MRX」。ハッカー集団たちが付けている「不気味なピエロのお面」。「危ない薬」で二転三転する展開。「多重人格」。
厨二病フルセットやないか、こんなもん。ニコニコ動画に、似たような内容のボカロ曲が絶対上がっとるて。ボカロ曲知らんけど。
しかも何てったって、BGMがいい。OPのバチクソかっけぇ曲でテンションブチ上がり。サクサク進む展開にアップテンポな曲がマッチしてさながらダンスフロア。まさにこの映画自体が危ねえお薬説。

この映画観て分かったのは、「かっけえもんは、寄せ集めたらもっとかっけえもんになる」ってこと。ちょっと詰め込みすぎかなって思うくらいが、丁度いい中毒性をもたらす。
ベンヤミン、途中で言うやんか。「ベンヤミンに、透明人間に戻りたい」って。で、最後の最後、「どんでん返し②」で、「僕らは透明だ」って言う。でもその時にはもうベンヤミンは「ベンヤミンじゃない」。戻りたいって言うてたのに、違う形で「透明」になった。
序盤にMRXが言ってた言葉を思い出す。「楽しみを仮想世界だけに頼るな」。ラストシーンで、ベンヤミン達は「仮想世界じゃない楽しみ」を、「自分じゃない姿」で得ることになった。仮想世界なのはどっちなんやろね。

ちょっとしたいたずらも取り返しつかんことに繋がったりするから、気を付けんとな。あー、面白かった。

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