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なりきりキャプテンの日

某日

朝からなにやら悶絶している妻。

ソファに寝ころびながら足をバタバタと振って「あ~くそ~!」と言っている。好きなもの買ってもらえない子供みたいなことを166センチがやると迫力があるなあと眺めていると、キッと睨まれた。はい、なんでしょうか。

話を聞くと、編み物で妻がやりたかったことをそのままやっている人がいたのだという。今妻は自分でデザインした編み物作品を売っていく構想を練っているところなのだけど、商品のデザインから売り方からサイトの雰囲気から全部理想的な人を見つけて「やられた!」という気持ちになったという。

ああこういう気持ち、わかる気がする。仕事において誰かに嫉妬するなんてことは皆無だけど、本やnoteを読んで良すぎる文章に出会った時、真似したいというより「もうこの文章まるごと自分が書いたことにしてくれねえか」と思うことってある。頭の中にぼんやりとあって形にできなかったものがここにある!ということが。

こういう時ってもはや心穏やかではなく、ファンにすらなれない。もうこれ以降は私が成り代わって続きをやるので申し訳ないがあなたには消えてもらおうか……スチャ(心の銃)、みたいな気持ちになる。

その日の夜。まだ落ち込んでいた妻に7歳長女が「比べるのは昨日の自分でいいんじゃない?」と励ましていた。えええ、すごいな長女。

某日

「あっさり御飯」ってなんだろうなと思って買ったセブンイレブンのおにぎり。よく見ると「あさり御飯」だった。うっかり。

某日

な…なんと 餃子たちが……!?
なんと 餃子たちが がったいして
キング餃子に なってしまった!

某日

仕事で遠方まで向かう予定があり、道中暇だったので「もし自分がラブホテルを作るならどんな名前にするか」というのを運転しながら考えていた。

いろいろ考えたのだけど、私の中の最終候補は「ホテル保健体育」、「欲しいのリゾート」、「ラブラブホテル」、「ホテルグッドラック」あたり。どれも紫のネオンで丸文字にすると映えそうだと思うのだけどどうだろう。そんなホテル名の入ったライターがあったらほしい。

ううむ、どれにしようかな……と真剣に考えていたところ、ちょうど一軒のラブホテルの前を通りかかった。ピンクの大きな看板に「バナナとドーナツ」と書かれていた。脱帽。参りました。

某日

父の日だった。

映画ドラえもん『のび太の宝島』の中に「なりきりキャプテンハット」というひみつ道具がでてくるのだけど、この帽子をかぶった人の目を見るとその人の命令に必ず従わなくてはいけなくなる。

この映画を何度も見ていたからか、「今日は父の日だからパパの命令が絶対ね」と朝から次女が言うと、本当に家族が一日中なんでも(いやほとんどは)言うことを聞いてくれたのでびっくりした。もちろん命令を聞いたときの返事は「アイアイサー!」である。

図書館行ってみようよー「アイアイサー!」、ちょっと帰りにスーパー寄ってもいい?「アイアイサー!」、行きたいラーメン屋さんがあるから行かない?「アイアイサー!」、ビール飲みたいから帰り運転お願いしてもいい?「アイアイサー!」。

こんなに幸せな休日はない。最高な気分でホクホクとしていると、妻がこちらをにた〜っと見て来年の母の日が楽しみね~と言っていた。ア、アイアイサー!

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