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シャンプーの香り

10代の頃、ずっと好きだった人がいる。
バイト先の先輩で、家も近かった。口には出さなかったけど、私は『好き』 を全身で伝えていたし、彼もそうだと思っていた。

なのに、なんでだろう。
私は全然違う人と付き合うことになってしまった。なってしまった?どういうことだ。はじめてされた告白に、気持ちが舞い上がってしまったのだ。
結局、私は 先輩のことを忘れられないまま他の人と付き合い、先輩は別の女性と付き合い始めてしまった。そんな お互い恋人がいる状態で、ふたりで会ったことがある。
「ずっと、ずっと好きだったのに。」 私が言うと
「俺だって好きだったよ。」 と彼が言う。私が口を開く前に彼が続ける。
「だけど、今それを言うのはズルくない?お前が先に恋人つくったから、俺もそうした。好きって言いたいなら、フリーになってからにしろよ。」
私は 「…帰る。」 やっとの思いで それだけ口にした。

数年後、約束通りフリーになってから 改めて彼に思いを告げた。
「ちゃんと言えて偉いね。ありがとう。」
頭をなでてくれて、私は 何年越しかの失恋をした。
別れ際、私の長い髪を 彼が すくって言った。「このシャンプーの匂い、好き。」 そんなのズルい。気安く触らないでほしい。そんな、匂いなんかじゃなくて私を…

ちゃんと言えばよかった。一番最初に、ちゃんと好きだって言えばよかった。言われるのを待つんじゃなく、自分から言えばよかった。
髪を切って、シャンプーを変えたけど
この後悔は 今でも消えない。

無印の はちみつねり梅を買い占めたいです。