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パーソナルコーチが講師をすることになったらめっちゃ悩みの沼だった。

このnoteは講師業をしたことない私(パーソナルコーチ)が、大学での非常勤講師をすることになり、すったもんだしたり、悩んだりしながらどう授業を進めていったのかを記録するものです。

きっかけ

2020年2月。仕事でお世話になっている方から、「大学で授業をしませんか」というメッセージがSNSで来た。内容は、女性・コーチ・学生のモチベーションを上げられる方。というシンプルな要件だった。ちょうどコーチとして目標にしていたライセンスも取得し、何か新しいことを始めたいなと思っていた私は、脊髄反射並みの速さで「やりたい!」と即レスをした。

これをきっかけに私は、人生ではじめての講師業をやることになった。やったことがないことは当然悩みが勃発しまくることになる。何が起こるかわからないけれど、一つの経験の記録としてnoteに残しておこうと思う。

採用面接、そして最初の壁

まず私は、2015年で止まっている職務経歴書を慌てて探し、アップデートして送った。私は今、パーソナルコーチという仕事をしており、まだまだ世間的な認知度が低い。ゆえに誤解も多い。なので一応、経歴やコーチという職業を理解してもらえるような資料もいくつか作ることにした。

面接があったので、年に数回しか着ないスーツを引っ張り出したところ、見事にサイズアウトしていた・・・。子供のサイズアウトは成長が喜ばしいが、大人のサイズアウトは全然喜ばしくない。そんなことを思いながら面接前日にあわててジャケットを買いに行き、その後、無事採用が決まった。ちなみにオフィシャルな面接は6年ぶり・・・?でかなり緊張した。そういった意味でも、資料は作っておいてよかった。


授業開始まで2か月・・・。まず私が悩んだのは、コーチと講師という仕事の性質の違いだった。「コーチ」は「講師」とは対極の性質を持っている。

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表のように、先生は知識や答えを持ち、それを生徒に伝える。という役割を持つ。一方で「コーチ」は(相手の土俵上の)専門的な知識や答えは持たない。その代わりに内在化されたものを発見するためのスキルと問いを持つ。もう少しわかりやすく言うと、営業パーソンの先生は営業パーソンであることが多く、先生が相手の問題を見つけて解決に導く。コーチは営業経験があるかは問わない。むしろその人の持つ性質や価値観に関する問いを持ち、<本人が>課題や意志を自分の中から見つけるサポートをし、本人自身がそれらを解決したり心の成長をさせていくものだ。

なぜ悩んだかというと、今回の依頼が「講師」でありながら「コーチ」の役割を求められる内容なのだ。学生が自分自身を深く内観し、モチベートすることをサポートするというもの。授業を作るには、この使い分けも重要だなと思った。また、私自身のことを考えると、何かものすごくすばらしい功績を出してきたわけでも、アカデミックに研究してきたわけでもない。私が「何かを教えよう!」なんて言うのはおこがましいし、コーチというスタンスからもちょっと違う気がした。それよりも、学生の皆さんが自分の持っているものを恥じたり、卑下したりすることなく、どうやったら自分のことを好きになったり「私が私であることを楽しめる」ようになるのかな?という観点でサポートをしていきたいと強く感じた。そして、「先生でありコーチでもある」私のスタンスと授業の軸が決まった。

次は実際の授業設計にうつった。これまで法人研修や、数回にわたる講座を自分で作ったことはあるものの、15回の授業は作ったことがない。シラバス・・・なんて言葉、大学を卒業して以来、一度たりとも口に出したことはない。私のいいところでもあり困った性質に「できるかできないかは後回しにする」というところがある。この性質のせいで、キャパオーバーで何度地獄を見たことか。今回はそうもいかないので、学校を紹介してくださった株式会社学びの寺裏誠司さんにお力を借りて、まずはシラバス作成のフレームをもらって、自分なりに作ってみることにした。

シラバス作成のための情報収集


まずはの土台となる情報と課題の整理をした。

①なぜ学校はこのような施策を行うのか
②どんな学生がいて、なにを感じているのか
③学校はどんな結果を期待しているのか
④そのうえで私にできることは何か
⑤実施するうえで私に足りないことは何か

アンオフィシャルなこともあるので、noteには書ける部分だけを書いていくことにする。情報を整理するうえで一番困ったのは、
②どんな学生で、なにを感じているのか
ということだった。普段、私が出会っているクライアントは20代後半~40代が多い。つい最近まで高校生だった方がどんな気持ちなのかわからず、唯一の大学生クライアントに話を聴いたり、twitterを検索したり、学校の口コミページを見たりして学生をイメージした。


そして、私自身の(10年以上前の…)経験も含めて、一般的な学生時の悩み?になりそうなものを仮説として出した。


・自分のことをあまり好きになれない。
・やりたいことがわからない(あるいはあっても自己否定してしまいあきらめてしまう、継続するエネルギーがでない)
・他人と自分を数値的な優劣(例えばテストの点数とか、世間が作り出した優秀や美しいのモノサシ)で人間の優劣も比較してしまう。比較を自己成長にするきっかけがない。
・自分の才能や個性について深く考えるきっかけがない。
・家族からの精神的な自立に戸惑いを感じる時期である(親の判断に従うか自分で決めるか)
・進路などの答えのないものに対して、答えの出し方(価値観や信念による選択の仕方)に悩む


・・・と、ここまで書きだしてみて気が付いた。これらは学生特有の悩みというわけではなく、社会人でも似たような悩みを持っている。つまり、人生のどのフェーズでも粒度や大きさの差はあれ、いつもみんな同じようなことで悩むんだな。ということがよく分かった。
上に出した悩みは、コーチングのセッションでは

「自分に自信が持てない」「本当にやりたいことがわからない(本当にやりたいことをやっていきたいという気持ちの裏返し)」「自分の強みがわからない」「人目が気になる」「世間体や利益と自分の本音が乖離している」

と表現されることが多い。(このテーマについてはまた別のnoteに書くことにする。)

期待されること、私ができること

だからこそ気づいた。それこそ20年30年と人生キャリアを積んでいる人でも、粒度は違えど同じ悩みを繰り返しているということは、その起源となるものが若い時の経験にあるんじゃないか。もしもここに対して、自分なりの考えや方程式、考える経験を持つことができたら、その先の人生にも役に立つのかもしれない。

現に、私自身もその体験をしてきた。会社員の時、「私の人間としての存在価値=仕事の成果」と思い込んでいて、必死に成果を出そうとして大失敗した。私が求めていた「成果を出せる価値ある人間」は、いざやってみると自分の心よりも(そうすることを求められてもいないのに)会社や上司の評価を優先するという、最高の他責状態になった。そして心がスッカスカになって最後は過労で倒れ、退職した。これをきっかけに私は、「人生で優先するものは命と心」ということを学んだ。もしも私が学生のときに、リスク管理や課題解決、人をよろこばせる・優しくする・協力し合うことと同じくらい「自分を喜ばせる方法」「自分を大切にすることの意味」「自分自身とのパートナーシップ」について学べたらどんなによかったなぁと思う。でもそういうことは、たまに出会う素敵な先生達の人生小話として聴くことはあっても、授業として教わることはなかった。

そこで、これまでのクライアントからもらった感想やセッションの記録を見返し、以前学んでいた脳科学の視点から

これらの悩みのきっかけは何で 
   ↓
どんなアプローチをすると
   ↓
どんな変化が起きていったのか?

を振り返り、あるパターンがあることに気が付いた。これらの悩みの根本にあるのは「自己受容」「自己肯定+他者理解」のステップによりある程度、自分自身で解決できる土台ができるのではないか。特に「自己受容」は見逃されがちだけれどとても大事な役割がある。2つのステップについては、それぞれのねらいと何を得られるか。を作った。

【自己受容】
徹底的に自分と向き合い「自分は想像以上に自分を知らない」ということに気づく。自分の価値観や観念が親・友人・メディア・社会・文化的背景から構成されており、借り物になっていることが多いということを知る。そのうえで「自分はどの価値観を選択したいのか?」を探ることで自分に興味を持ち、自分の感受性を受け入れ、安心安全な場で表現することを体感してもらう。
【自己肯定+他者理解】
前半で学んだ「私とは?」を活かし、次に自分なりの「〇〇とは何か」「〇〇の何が好きか?」を探求し、表現する。一人一人の「〇〇」の定義や〇〇にひかれた部分が違うことを知ることで、正解は一つではないということを知る。座学だけではなくアウトプットを多くすることで、自分の個性や価値観をさらに探求していく。人との比較によって自己卑下するのではなく、比較によって自分の良さを知り、さらに良いと思ったものを他者からインストールすることを学ぶ。人がいるから自分をより知ることができるし、正解は自分で作ればよい。みんな違ってみんないい、という視点をはぐくむ。

この時点ですでに3月末。まだシラバスの土台しかできておらず気持ちは焦るし、時間も刻々と迫る。が、下ごしらえは何よりも大事だと思うので、できる限りの情報を集めることにした。

授業オンライン化は突然に

何とかシラバスの土台まで作り終えた3月末。コロナウィルスが猛威を振るい、授業の完全オンライン化が決定した。いよいよシラバスをつくろう!と思っていたところに、オンラインでどこまで何ができるのか?どこまでできるのか?メリットデメリットは何か?をまた考えることに・・・。
が、そんなことを言っている暇はない。「できるできないでいったら、やるしかない!(根性論)」という感じだった。どうせオンライン化のことを考えるなら、何か役に立てることはないだろうか?と、寺裏さんにもお声がけいただき、一緒に「教育機関向けオンライン授業に関する動画」を作ってリリースした。(結局これは自分のためにもすごくよかった)

ちなみにリリースした動画はこちら(無料です)

情報収集としてFacebookの「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」という公開グループにも参加させてもらった。18500人以上の先生がものすごい量の情報交換をしているので、これも事前情報としてとても勉強になった。

また、私がお世話になる山野美容芸術短期大学では、先生方が一丸となって、何度も何度も講習会やオンライン授業のための練習会を開いてくださり、急ピッチながら本当に丁寧にツールの説明などをしてくださった。「学生ファースト」を常に考えている先生方の人柄が伝わってきて、なんていい学校なんだ・・・学生さん愛されているなぁ・・・。としみじみ。先生方の愛情を感じられむしろ私の方が学校のファンになったし、面接した後はメールのやり取りだけだったので親近感を感じたりもして俄然やる気があがった。

・・・とここまで書いて4000字を超えていた。

続きはまた次に書くことにしよう。

読んでくださり本当にありがとうございます。サポートしていただけるとその分うれしさの極みで、調子に乗ってどんどん記事を書き始めます。ぜひお願いします。