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【367/1096】「真綿の檻」を読んで~母子の話

367日目。さ、さむい。寒いよ!秋はどこへ行った?!と布団と毛布を慌てて準備した。あまりに急激に変動すると、季節の移ろいの情緒がないなと思ったり・・・。


本を読むのが好きだが、マンガを読むのも望外に好きである。
最近読んだマンガに「真綿の檻」がある。
深夜のダメ恋図鑑」の尾崎衣良先生の最新作。

物語は、義理の妹の話→弟の話→母の話と語られていく。
この辺までは、なんかダメ男と結婚しちゃった娘、みたいな感じなのだが、主人公の榛花の話のところで、思わぬ展開になる。
(この辺までは、キンドルの試し読みで読めるYO!)

榛花がキレるシーンは、やっぱり痛快で、さすが尾崎先生!とスカッとするのだが、ほんと、「人間って、自分が見たいようにしか見ないよね」というのがよくわかる。
榛花がキレたあとに義理妹、弟、母の話を見返すと、ああ、そうじゃん、そうじゃん!ってなるので。

そして、前半、モラハラ夫みたいに見えなくもない榛花の夫の一広は、絶対的に榛花の味方であったことがわかる。

手伝いをする私が怒られて、何もしない弟が褒められることは日常だった

「真綿の檻」尾崎衣良・著より

と自分が母の手伝いをしていた頃の回想で語られる。
そして、夫は作ったものを褒めてくれ、感謝を表現し、一緒に家事をして暮らせる人であった。

榛花が、「あたしの城だ」と夫と暮らす家の台所で言う(心の声)のだが、これ、めっちゃわかる、わかりすぎる!と膝を打つ。
私も自分の台所ができたとき、ほんと解放感あったなあと思う。

そして、そのあと、夫の話で、夫のモラハラっぽく見えていた言動の理由が解明される。ラブラブでいいっすね❤みたいな。

物語は、SideBがあって、母の側の話が続く。
娘が苦手で、娘にイライラさせられることが多かったことや、息子が癒しだったことが語られる。
母が榛花にしていることは、完全に八つ当たりなのだが、毎日疲れはてて、その自分を持て余して、娘を嫌うことで均衡を保っていた。

あの子みたいに愚鈍で人の神経を逆撫でするような女の子なんてなんの役にも立たない

「真綿の檻」尾崎衣良・著より

と地方でトップの大学への進学をして家を出ていった榛花に対してひどい言いようである。

娘が結婚して、自分と同じようになって、あれを哀れに思って、助けてやろうとしたら、しっぺ返しを食らう。

ここまでは、なんか毒親に復讐しているかのような流れだが、実際は違うのがこの物語の面白いところだ。

榛花は、言いたいことは言って、でもそれきりではない。
仕事帰りにケガをした母の様子を見に立ち寄る。

「あんたはお母さんのこと嫌いよね」
「それお母さんが言う?私、お母さんのこと、大好きだったよ」
(中略)
「お母さんはその気持ちが一生続くと思ってたんだね。私には何してもゆるされると思ってたんだね。
そんなわけないよ。」

「真綿の檻」尾崎衣良・著より

これ、これなー。これですよ。
そして、この後がまた秀逸なんす。

母は嘆き悲しむのだが、榛花はあっさりしている。
そして、母に感謝もしているのだ。

私はここがものすごく響いた。

そして、好きとか嫌いとかの感情はおいといて、私は母の味方をするんだよなと思う。
父親と母親が喧嘩したら、母の味方をするのである。

榛花は母親に料理を教えてもらったことを感謝していたが、私もこれ、まったく同じような体験をしたことがある。

料理教室に通っていたことがあるのだが、通い始めた頃に野菜を刻んでいると、先生よりも早くできてしまい、
「包丁さばきの音がお母さんみたい」と言われた。
料理教室で教わることは実のところほとんどなかった。
全部すでに母から仕込まれていたので。
しゃれたレシピを手に入れたくらいであった。
榛花と違って、楽しかったので私はマスターを取るまで通ったが。

子どものことをやっていると、時々、母はなんでもできたなーと思う。
「お母さん、これどうやるの?」と聞いてやれなかったことがなかった。
聞くことは、料理や裁縫やそういう家のことばかりだったからかもしれないけども、仕事して帰ってきて、子どもに教えるのはかなり手間だっただろうと思うと、感謝している。

母子は、一筋縄ではいかない。
好きか嫌いかの二者択一では語れないのだ。
「真綿の檻」は母と娘とそれぞれの話が、それぞれリアルで、とても面白く読んだ。

そして、義理の妹よ。
おまえの夫はやばいぞ。
義理の姉を心配している場合ではない。
と漫画にはかかれていないけど、いらぬ心配をするくらいにはリアルにいろいろ感情が動いた作品であった。

では、またね。

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