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【43/1096】人間もけづくろいが必要

43日目。今日はとても良い天気。気持ちいい日だな。こんな日は、なんにもしないで一日過ごしたい気持ちになるけども、約束の場所へ出かけ、話をしてまた家に戻る。瑠璃という名のお香を炊いたら、とてもよい香りだった。

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昨日、子どもの通う学童から電話があり、お友達と喧嘩して一人で帰れそうにないからお迎えにきてください、という連絡だった。学童でお友達とのトラブルは、たびたびあるのだが、しばらく前から少しずつその兆しはあったので、それが噴火したのかなーと思っていた。

父が迎えに行って帰ってくると、本当にしょんぼりしていて、珍しく私にしがみついて泣いた。

一緒に遊ぶはずだったお友達が裏切って、遊んでくれなかった。
ひとりぼっちでさみしかった。
泣いていたのに、だれも来てくれなくて、絶望した。

と言った。
そうか、そうか、それは本当に悲しかったねえ。
そういうと、また泣いた。
いっぱい泣いていいよ。

子の父も心配して見に来たが、父がいると話したくないそうなので、いったん出てもらった。

そして、じっくり話を聴いてみる。
寝転がって、なでたりさすったり、髪をとかしたり、涙を拭いてあげたりしながらひたすら、そうかそうかと話を聴く。

それはさみしかったねえ。
悲しくて泣いちゃうねえ。
もう誰も友だちなんていない。
ひとりぼっちだと思ったんだねえ。

そうして、ひとしきり泣いて、悲しい気持ちが落ち着いてきたら、自分がしたことを話せるようになる。

ぼくがわるいから、こうなった。
ぼくのせいなんだよ。

とぽつぽつ話してくれた。
お友達に前に意地悪されたことを思い出して、「一緒に遊ぼう」と言われたときに「やだ、遊ばない」と言ったこと。
「えー、遊びたいよ」と言ってくれると思ったのに、「じゃいいよ」と行ってしまったこと。
一人になってどうしたらいいかわからなくなって、泣いていたのに、誰も自分のところに来て慰めてくれるお友達がいなかったこと。
ひとりの子どもが先生に「泣いてるよ」と言いに行ったのに、先生も来てくれなかったこと。
だから、自分はもうひとりぼっちで、誰もやさしくしてくれない存在なんだと思って絶望した、という話だった。

そうかそうか、でも今は、泣いてるあなたにママが優しくしてると思うんだけど、どう?

そう言うと、ちょっと笑った。
「泣いたらやさしくしてくれる人、いたねえ」と笑った。

そして、この子の姉も心配して来て、やさしくしてくれたら、「ママとお姉ちゃんはやさしくしてくれる」「パパはときどき意地悪だけど、泣いたときはやさしい」とやさしくしてくれる人もいることを次々と思い出したらしかった。

そして、泣いたら優しくしてくれる人もいるけど、泣いたから必ず優しくしてもらえるわけでもなのだと学んだらしい。
「じゃあ、優しくしてくれる人のところで泣いたらいいんじゃない?」
と提案すると、
「それは泣いちゃうから無理」
だそうだ。そりゃそうか。

「やだ、遊ばない」と言っちゃったことを、お友達に謝る?と聞くと、明日はいやだ、でも明後日にお話しする、と言う。
そうなんだ、じゃ、そうしたらいいよね。

だんだん、笑顔になって、まだ元気にはなってないけど、ご飯を食べて、お風呂に入って、おやすみなさいと寝た。

朝、起きたら、
「学童にはお友達がいなくなったけど、ほかのお友達もいっぱいいるし、学校は楽しいから大丈夫!いっぱい寝て起きたら、元気になったよ!」
と言って、元気に登校していった。
今日は学童にはいかずに別のところで遊ぶという。
わたしは早めに帰宅するから、終わったら帰ってきていいよと伝える。
なにか困ったら相談してね、というと「わかったー」と言って。

こういう弱った時に、頼って甘えて弱音を吐いて、誰にも責められずにかかわってもらうと、人間は自力で立ち直るんだなあと思う。
そして、どうしたいかも自分で考えて、自分で自分のことをするのだ。

もちろん、学童にはこの喧嘩した子以外の子どもたちもたくさんいるわけだし、友達がいないってことはないんじゃ・・・とか、優しくしてほしくて戦略で泣いたんだ?!とか、いろいろ突っ込みたくなるところはたくさんある。

でも、今、彼から見えた世界の中では、友だちがいなくなり、学童ではいつもイヤなことが起き、裏切られて誰も助けてくれなくて、絶望だという風に見えていたのだなということをいったん誰かに受け止めてもらって、スペースをあけてあげないと、ほかのことはもう入る余地がない。
そして、ただ吐き出して、スペースをあけたら、「そんなに絶望じゃないかも?」と自分で気づける。
これが人間の毛づくろいだなーと思う。
わたしがこの子の親として出来るのは、この毛づくろいくらいだなと思うのだ。

サルの親子が毛づくろいして、健康を保つように。
人間の親子も、毛づくろいして、コミュニケーションをとる。
その体験があれば、きっと、自分には帰れる場所があり、安全基地があると思ってくれるのではないかと思う。

私には子どもの時にそのような体験は記憶にないが、自分が子どもにしてあげられることで、自分にもその体験ができていることが幸せ。

では、また明日。


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