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【映画鑑賞記録】愛がなんだ

ものすごく居心地の悪い映画だった。なんかもう、分かりみがすぎて。
途中で吐きたいような、泣きたいような、よくわからなくなって、わたしってばなんでここにいるんだろう?みたいな感じになった。
ネタバレして書いています。

これはなんだ

角田光代の原作だっていうのを後から知って、なるほどなと思う。
えぐい。深くてえぐい。深さがもうなんていうか深淵だ。深海魚の気分だ。
底辺を這い蹲っている気がする。
そういう、見て見ぬ振りしているところを、これでもかっていうくらい突き出してくる感じがした。
この映画を、「テルコの純愛」と書いてる人がいてびっくりした。まじか。

公式サイトのイントロダクション&ストーリーに

猫背でひょろひょろのマモちゃんに出会い、恋に落ちた。その時から、テルコの世界はマモちゃん一色に染まり始める。会社の電話はとらないのに、マモちゃんからの着信には秒速で対応、呼び出されると残業もせずにさっさと退社。友達の助言も聞き流し、どこにいようと電話一本で駆け付け(あくまでさりげなく)、平日デートに誘われれば余裕で会社をぶっちぎり、クビ寸前。大好きだし、超幸せ。マモちゃん優しいし。だけど。マモちゃんは、テルコのことが好きじゃない・・・。

角田光代のみずみずしくも濃密な片思い小説を、“正解のない恋の形”を模索し続ける恋愛映画の旗手、今泉力哉監督が見事に映画化。
テルコ、
マモちゃん、
テルコの友達の葉子、
葉子を追いかけるナカハラ、
マモちゃんがあこがれるすみれ…
彼らの関係はあまりにもリアルで、
ヒリヒリして、恥ずかしくて、
でも、どうしようもなく好き…
この映画には、
恋のすべてが詰まっています。

って書いてあった。
「恋のすべてが詰まってる」
なるほど、そうかもしれない。
恋って、偶像。幻。幻影。投影。自分の穴を埋めるためのもの。空(うろ)のような穴が誰にでも空いている。
だから、こんなにも空虚なのか。

混じり合わない二人

動物園の象を見ながら、マモルが「33歳になって会社辞めたら、俺、ぞうの飼育員になるわ」と言うシーンで、順番は忘れたけど、テルコが会社をクビになりそうで、それで、マモルがいいんじゃん、自由でって言って、テルコが思わず泣き出す。
あのとき流れたテルコのナレーションの違和感たるや、凄まじかった。
こんなにズレちゃうのか。と、あまりにも生々しかった。
そして、過去の自分を投影して、あんなにズレてたのか、と愕然とした。目の前に突きつけられてるのは、いつもズレているテルコであり、あの頃のわたしだ。
嫌すぎる。苦しい。もうなんか見たくない。でも見たい。
こんな映画、なんで観ようと思ったのか。でも、この女優さんは可愛い。こんなに可愛いのに、こんなテルコみたいになるかな?みたいな事をぼんやりと考えていた。

テルコとマモルは、ぜんぜん混じり合ってない。なんの交流も起こってない。ただ、表面的に会話して、一緒に寝たりもするけど、ぜんぜん正直に本音を出せてないし、出そうとすると、すれ違う。
テルコの親友の葉子は、自分も仲原くんの事を見下してるくせに、守のことを「テルちゃんを見下してバカにしてる」とテルコを諭す。
だけど、テルコはマモルのことを好きになったから、もうずっと好き、と言うわけのわからない執着で、だけど、マモルに「好き」って言えない。
テルコとマモルは、会ったり触れたり会話したりしてるけど、分断された世界にいるみたい。

好きって言えない人たち

好きな人に、好きって言えない人たちが、自分の好きな人には好きになってもらえないストーリーだ。
一緒に飲んだり、遊んだり、SEXしたりするのに、恋人じゃない。
片方は好きだけど、片方は好きじゃない。
一方通行の片想い、恋愛狂想曲。
テルコは救いようないし、もっと自分大事にすれば?とか言えるし、馬鹿馬鹿しいし、マモルはだらしなさすぎるし、ズルイし、もうほんとサイテー男でうんざりじゃんと思うんだけど、なんかこの人たちを憎めない。
テルコは、ストーカー的片想い女子なのに、ジメッとしてなくて、なんかどっかユーモラス。演じる岸井ゆきのさんの品の良さみたいなのが滲み出てるからかも?
すごく意地悪な人とか、悪人は誰もいなくて、みんなちょっとずつ狂ってる。
そして、やっぱり、恋愛物を観るとつくづく思うんだけど、本音で正直になったら、もう終わり。
「好き」って言わないから紡がれるストーリーなんだなと思う。恋愛って。
だから、これは、恋愛っていうか恋よりの話で、愛の話じゃない。
愛はなんだって、ほんと、なんだよ?って感じです。

観た後に語りたい

この映画はきっと観た後に、同じような経験がある女子と語りたくなる映画なのではないだろうか?と思った。
映画の中では、対等に対話するがまったく成立していないのだが、観終わった後に、友人たちと対等に対話したら自己理解は深まりそう。
恋は対等に対話したら終わるんだな。今までの概念の中の恋。
だからもうそういう恋はいいか、卒業で。じゃあ、愛ってなに?みたいな話をするには、この映画観ると、面白いんじゃないかな。
今泉監督も↓とつぶやいていたし。

この映画、俳優陣がすごくよかった。最近の日本の若い俳優さんをあまりチェックしてなかったので。
成田凌ってなんか、すごくその辺にいそう感がうまい俳優だなと思った。こういう人、見た事ある気にさせられる。実際に会うとかっこよすぎるんだろうけど、映画の中では情けなくて、なんかどこにでもいそうな、かっこ悪い部類の男に見えるから不思議。
岸井ゆきのさんは、かなりいい。笑顔が可愛い。瑞々しい感じがすごくいい。地に足がついてる感がすごくあるのもよかった。このテルコはこの子がやったから、この軽さが出てよかったんだと思う。じゃないとほんと、べっとりヌメーっとしてた気がする。

<あらすじ>
28歳のOL山田テルコ。マモルに一目ぼれした5カ月前から、テルコの生活はマモル中心となってしまった。仕事中、真夜中と、どんな状況でもマモルが最優先。仕事を失いかけても、友だちから冷ややかな目で見られても、とにかくマモル一筋の毎日を送っていた。しかし、そんなテルコの熱い思いとは裏腹に、マモルはテルコにまったく恋愛感情がなく、マモルにとってテルコは単なる都合のいい女でしかなかった。テルコがマモルの部屋に泊まったことをきっかけに、2人は急接近したかに思えたが、ある日を境にマモルからの連絡が突然途絶えてしまう。

2019年製作/123分/G/日本
配給:エレファントハウス

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